退職交渉の悪夢
転職先から内定承諾書のほか、採用関係の書類が郵送で次々と届き始める頃、私は現職への退職交渉を進めていました。
このあたりのいわゆる「お作法」は、他の転職ご経験者の方々も役立つ記事を掲載している事と思いますので、今更あえて私が言及する事もないとは思うのですが、私の場合は下記のような形で準備を進めました。
① 課長(と自分自身)の予定を確認、複数の候補日をリストアップ。
② 会議室の予約。
→長時間だと話がこじれてしまう可能性がある事+相手の貴重な時間を奪うのは良くないため予約時間は30分程度にしました。
急遽都合の悪くなってしまった場合を想定し、退職交渉が無事に終わるまでは複数日程でおさえておく。
③ 上記を踏まえて、課長に日程調整のお願い(複数の候補日から選択できる形で。)
・・・所属している組織のお作法や課長との関係によるとは思いますが、私の場合はこのような形で進めました。
ちなみに、数年前に転職した私の元同僚は、転職するために退職する旨を伝えた際に、それはもう想像を絶するほどのお叱りを受けたとの事で、私自身も叱られる事はそれなりに覚悟はしていました。
面接の場では比較的堂々と話す事のできていた私でも、課長に退職の意向を打診する時には、緊張のあまり声も震え、若干過呼吸になってしまいました。
会議室の空気が暑いのかも寒いのかも全く感じられませんでしたが、精一杯の勇気を振り絞って伝えました。
結果的に、その話し合いの場では、退職について承諾していただける事になりました。幸い、怒鳴られる事もありませんでした。
(恐らく、次の職場が決まっている事を告げたのでこれ以上の慰留は困難であると判断されたのでしょうか。)
ただし、
・辞職願の提出については指定の様式があるため、そのとおりに記載してほしい。追って、人事課から指示があるのでそれまで待っておくこと
(※今でも後悔しているのがこの「追って」が何日程度なのか確認しておけば良かったですね)
・今後の流れとして人事課もしくは部長クラスからも(形式的ではあるが)慰留面談があると思う。色々な事を聞かれると思うので心の準備をしておくこと
・辞職願が受理されるまでは周りには一切退職の件について話さない事
この3点を遵守する事、と念押しがありました。
その日はひとまず心を撫で下ろしつつも、今後私を待ち受けている慰留面談に戦々恐々としながら帰路についた事を覚えています。
しかし、結局のところ、人事課からも部長からも、慰留面談が行われる事はありませんでした。
慰留面談はおろか、課長への退職意向の打診から、3日、5日、1週間・・・そしてついには2週間・・・
本当に「何もなかった」のです。
当然、「退職の件の進捗状況はその後いかがですか」と確認すれば良かったと思います。そこは私にも落ち度があります。
・・・何がどこまで進んでいるのか?そもそも何も進んでいないのか?暗闇のトンネルの中に放置されているような時間だけが過ぎていました。
一方、何も知らない別の上司からは次々と新たな仕事が振られ、
「次からはこの案件はあなたが担当で」「この案件はもう任せるから」「俺はもう次は確実に異動だから後はまかせた」
・・・と、通常業務に加え、新規案件を処理する日々が続きました。
もちろん、どんな仕事でも、在籍している以上は遂行するのは当然の事ですが、頭の片隅では(本当にこの継続的な案件を私が担当しても大丈夫かな)とほの暗い不安と、(どうしてこの人は確実に次は異動だから、と言い切れるのだろう)と、上司に対するぬぐい切れない不快感がありました。
そうこうしている間に、課長が長期の出張へと旅立ってしまったのです。
本来であれば必ず課長を通して人事課とやりとりするのが原則ですが、こういった事情もあるため、進捗状況を人事課に直接確認しに行く事に決めました。
グループウェアの予定表を確認し、在籍している時間を見計らって担当に声をかけたところ、
「その件は◎◎さんしか知らないから私は分からない」「これから中途採用の面接があるからまた後日で良いですか」・・・と追い返されてしまったのです。
担当が対応してくれるまで何度でもアタックすれば良かったと思うのですが、この瞬間に、すっかり疲弊していた心がぽっきりと折れてしまったのです。
・・・もう戦いたくない。
もう時間がないし、誰にも相談できない。
今の仕事もやり遂げなければいけない。
転職先から課されている事前課題や採用関係書類も仕上げなければいけない。
こうやって足踏みしている間にもこの組織の次年度人事の骨組みが進んでいく。
・・・本当に私は退職できるの?
色んなプレッシャーに押しつぶされて、睡眠導入剤を服用しても眠れない日々が続きました。
ここで私が相談したのは、冒頭でも軽く触れた、数年前に退職した元同僚でした。
電話口で軽く相談するつもりが、久しぶりに会いたいね!・・・という流れになり、あれよあれよと一緒にお茶に行く事になりました。
私の退職についてはとても驚かれましたが、一連の経緯について相談したところ、彼女の口から飛び出したのは、
「(転職を決めたことについて)よく決意したね、頑張ったね」
という、涙を誘う言葉でした。
また、私の退職意向が2週間放置されている事に対しては、それはありえない!・・・と、在職中にも滅多に怒りを見せなかった彼女の怒った顔をその時初めて目にした気がします。
作戦会議は3時間半にもおよびました。
そこで私は「星乃大作戦」(作戦の名前に深い意味はありません、お茶をした場所が星乃珈琲店だったというだけ)を決行する事となったのです。
・・・と、次回は「星乃大作戦」から、無事に迎えた最終出勤日までを綴りたいところなのですが、あまりにもタイムリーすぎる事と、自分自身の中でまだこの事は思い出として消化しきれていない事から、しばらくこの事についてはnoteに綴る事が叶いません。
少し時間が経った際には改めて言葉に変えてnoteに綴る事ができれば、と思います。
ただ、今思うのは、もっと私と話をしてほしかった。
私の思いから逃げずに向き合ってほしかった。
それだけです。
・・・そして無事に最終出勤日を迎え、自由の身となった私は、水面下で進めていたあるひとつの挑戦を行う事に決めたのです。
次回からは、怒涛のニュージーランド留学編について綴ります。
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