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政府によるコンビニ決済手数料の値上げについて疑問に思うこと(官製値上げ?)

こんにちは。ようた@英語コーチ&フィンテック(Fintech)アドバイザー& FP (Financial Planner)です。
オンライン商取引(Eコマース)において、特定のセグメントにおいて人気の決済手段にコンビニ決済があります。具体的な利用者セグメントは、(男性か女性かで言えば)女性、10代、20代などの若い層、都会よりも地方などの居住者です。(一般的にはクレジットカードを持っていない層と呼ばれますが、実際は「クレジットカードは持っているが特定の買物では使いたくない層」というのが正しいかと考えています)利用される商取引の業種でいうと、アパレル、チケット、保険(保険料の支払い)、交通機関(高速バスチケット)などでよく使われます。最近注目されている支払手段である後払い(BNPL - Buy Now Pay Laterとも言われます)の最終的な精算方法でもコンビニ決済が利用されています。(毎月の支払い分をまとめて翌月などにコンビニで払うというような支払い方法が一般的です)

国内のオンラン商取引では減少傾向にあるとは言え、引き続き10%程度(特定の業種ではそれ以上)のシェアを有するコンビニ決済ですが、2022年の後半以降、加盟店が支払う決済手数料において(もしくは消費者負担の増加)「官製値上げ?」(もしくは消費者負担の増加)とも呼べる政府主導の値上げが行われることが想定されています。

この記事では何が起きているのか?についての紹介と疑問に思うことをまとめておきたいと思います。

コンビニ決済とは

コンビニ決済とは、コンビニで(コンビニ以外の買物代金や公共料金などの)支払いができるサービスです。多くの方に馴染みがあるのは、バーコード付きの伝票が送られてきてコンビニのレジで読み取りその代金を支払うものです。税金の支払い、公共料金の支払い、通販での支払いなどで利用された経験のある方も多いと思います。

一方、オンライン取引では、注文番号を発行してもらい、コンビニのマルチメディア端末(ロッピーやFamiPort)で番号を入力し、機械から発行されたバーコードをレジに持っていって支払うと言う方法があります。最近では注文番号の代わりにQRコードを表示する形式のサービスもあります。(セブンイレブンでは店頭レジで伝えるという形式です)

前者は一般的には紙の請求書の発行と送付までも担当する決済代行業者が多く、後者はAPIでの接続などで基本ペーパーレスでサービスが提供されます。

コンビニ決済の加盟店手数料体系

コンビニ決済(ペーパーレス)の場合、(多くの場合)消費者は実質負担はありませんが、加盟店は手数料をコンビニ(+決済代行会社)に支払う必要があります。(一部、手数料を消費者に転嫁している場合もあります)この加盟店手数料はクレジットカードのように利用額の3%という感じで決まっているわけではなく、利用額に応じて以下のように決まってきます。またクレジットカードへの手数料と異なり、一般的に消費税がかかります。取扱いの上限額1回あたり30万円までとなります。

https://ms-manual.makeshop.jp/kuroneko_convenience/から引用

上の画像は加盟店側が利用者に請求している金額なので少し高めなのですが定価ベースと考えれば概ねこのような水準が決済手数料として加盟店負担となっているイメージです。

決済代行会社は限られている

(超大手以外の)コンビニ決済を利用したいと考える加盟店は、決済代行会社を利用することになるかと思います。これは、大手3社を含む各コンビニ会社と個別にシステム接続や契約を行なっていくのはハードルが高いためです。さらに言うと、決済代行であっても、直接接続している決済代行会社はかなり限られています。主要決済代行でいうと、SBペイメントサービス、GMOペイメントゲートウェイ、イーコンテクスト、電算システム、ウェルネット、SMBCファイナンスサービスといったところでしょうか。この中でもセブンイレブンとファミリマートは直接接続、ローソンは電算システム経由といった使い方をしている決済代行もあります。これら以外の決済代行や後払い事業者も上述の決済代行会社を利用している(あいのりしている)ケースがほとんどです。

手数料について何が起きているのか?

2020年2月に経済産業省主導で「新たなコンビニのあり方検討会 報告書」と言うものが発表されました。いろいろな議論がなされているのですが、そのなかで以下のような提言がなされています。

コンビニにおける住民票発行等の公共サービス提供、公共料金の収納代行 等の様々なサービス提供については、サービス提供に伴うコストに比べて手数料が 低く負担感が強いとの声がオーナーヒアリングでも見られた。本部として、店舗の 負担感を踏まえつつ、こうしたサービスを提供することによる集客効果や利益をど のように見積もるのか、それを加盟店にどのように伝えるのかコストと利益の配分 をどう考えるか、そもそも手数料の水準が適正であるのか、といった観点からの取 組が期待される。

新たなコンビニのあり方検討会 報告書

要約すると「コンビニ決済の取り扱いについては手間がかかる割に利益が少ないと考えるオーナーが多いので、コンビニ各社はコストと利益の配分やそもそもの手数料率について再考しなさい」と言うメッセージのように見えます。

これをうけて、2020年10月にコンビニ各社が加入する一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会は以下のようなコメントを発表してました。(リリース全文はこちら

日本フランチャイズチェーン協会リリースより引用

結果として多くの決済代行事業者や加盟店によって今後コンビニ決済手数料の値上げが発表されることになるかと思います。以下の記事では、40円程度の値上げと報道されています。

なお、紙の支払い込み伝票による(消費者負担分の)手数料については既に2021年9月に値上げが行われているようです。(こちらは加盟店負担分ではなく、消費者が店頭で負担する手数料です)

https://www.nissenren-nicc.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/08/transfer-fee-revision_convenience-store1.pdfから引用

ボリュームゾーンと考えられる1万円以上5万未満の金額帯ではは倍増となる値上げです。(繰り返しになりますが、バーコード付き紙の請求書の料金体系はこの記事で主に取り上げているオンライン決済(ペーパーレスのもの)と別の体系になっています)

疑問に思うこと

政府が民間事業者が(競争の結果)決定する価格を下げる例では、菅首相時代(2021年)の携帯料金の値下げが記憶に新しいかと思います。政府主導による値下げ方向への価格の誘導と楽天モバイルの新規参入促進などによる競争の激化の結果、標準的な携帯料金はかなり下がったと言えると思います。

値下げは携帯事業者にとっては収益の減となる可能性が高いのですが、消費者にとっては家計負担が軽減されるので歓迎されることです。特に国内の携帯電話事業は大手3社の寡占状態で収益が適切に消費者への価格に反映されていないという批判が多いものでした。また、携帯電話事業は国民の財産である「電波」を利用して成り立っているので、この視点では政府主導の「官製値下げ」があったとしてもそれなりに筋論としては成り立つものかと考えられます。

一方、今回の経済産業省の検討会に端を発する「官製値上げ」についてはどうでしょうか?既に値上げが発表されたSMBCファイナンスサービスのリリースには値上げ理由は以下のように記載されています。

収納手数料改定の理由としては、コンビニエンスストアにおける人手不足や人件費の高騰、現金や個人情報 の管理負担増加などを挙げております。今般、その一環として、コンビニエンスストアの店頭における顧客負担手数料改定の連絡がございました。

SMBCファイナンスサービスリリース

収納代行サービスが、コンビニサービスとして値上げをしないと続けられないサービスでのであれば、値上げをすることは筋が通っていると思うのですが、それは事業者であるコンビニ事業者が決めることであって、政府が決めることや誘導することではないと考えます。

確かに、社会インフラとしてのコンビニの重要性、実際にコンビニを運営する店舗オーナーの方々の負担の増加、人手不足、コンビニオペレーションの複雑化など解決しないといけない問題は多くあるかと思うのですが、これらはコンビニ事業者が「コンビニ事業(コンビニのビジネスモデル)全体」を考えて解決すべきことです。「収納代行サービス」の負担感が強いので、「収納代行サービス」を値上げして解決では、片手落ちの解決策、短期的な解決策ではないでしょうか。

オンラインのコンビニ決済は加盟店の負担という話をしてきましたが、ここの価格決定も民間事業者同士の折衝や競争の結果決まるべきもので、政府から言われたから決まるものであってはいけないと思います。取引量や単価、戦略的な交渉など様々な要素があるもので、一律に価格を上げるというのが正しいアプローチかは微妙です。仮に加盟店が不当に安い決済手数料を要求してきたのであれば、コンビニ事業者側としては、「決済代行サービスの契約をしない」という選択肢もあるはずです。

加盟店側で決済手数料の値上げあった場合、その値上げ分は結果として、消費者が負担する商品価格などに最終的には反映されることになる可能性が高いと考えられます。つまり、加盟店向け手数料の値上げは、実質、消費者負担となるのです。繰り返しになりますが、サービスとして継続できないのであれば、コンビニ事業者がコンビニビジネス全体を考慮して値上げするのは問題ないでしょう。他でコスト削減できることはないか、業務の効率化をできることはないかなど考えた結果としての値上げであればいいと思うのですですが、本件に関しては、とても短期的な解決策のようにみえて、コンビニ事業者が「政府がこう言うコメント出しているから」という事実を「渡りに船」的に利用して値上げしているように穿って見えていまいます。

まとめ


疑問に思うポイントを改めてまとめておきます。

  1. 民間事業者の特定サービスの値上げなどの要請や誘導は政府がすべきではない

  2. コンビニ収納代行サービス個別の問題にすべきではなく、コンビニ事業者がコンビニのビジネスモデル全体を考慮して解決策を考えるべき

  3. コンビニはインフラサービスといえ、民間事業者が提供するサービスであり、民間主導の価格決定を尊重すべき

  4. 仮にコンビニ事業者が政府にこのようなコメントを出させるように誘導していたのであればとても残念

こんな政策を進めているのではとても明るい日本の成長戦略なんて考えられないと思います。もちろん私の理解が間違っている点も多々あるかと思いますのでもろもろご指摘いただけますと助かります。


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ようた@フィンテック専門家
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