観測可能な宇宙に銀河は何個ある?最新の推定値がヤバイ
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「観測可能な宇宙内の銀河の総数が上方修正される!?」というテーマで動画をお送りしていきます。
従来の見積もり
今から30年前の1990年、地上約600㎞で地球を周回しながら大気の影響を受けずに遠方の宇宙空間を観測することを目的とした、ハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられました。
ハッブル宇宙望遠鏡は地球から数十億光年、さらには100億光年以上彼方にある超遠方の暗い天体を観測することができます。
Credit:NASA, ESA, G. Illingworth and D. Magee (University of California, Santa Cruz),K. Whitaker (University of Connecticut),R. Bouwens (Leiden University),P. Oesch (University of Geneva),and the Hubble Legacy Field team
そんな偉大なハッブル宇宙望遠鏡の深宇宙探査の結果、夜空の満月程度の大きさの領域に実に数十万個もの銀河が存在していることが明らかになりました。
つまり宇宙には見えないだけで膨大な銀河が存在していたのです!
そういった観測結果から、地球から観測可能な宇宙の中には銀河が実に1000億~2000億個も存在していると考えられるようになったんですね!
ハッブルの深宇宙探査の成果や、実際に公開された画像については先日の動画でまとめてるので、以下の動画からそちらもぜひご覧ください!
そしてさらに2016年にはまだ観測できていない銀河も含めてどれだけ存在しているのかが高い精度で推定され、その結果それまでの推定の10倍もの数に及ぶ、2兆個もの銀河が観測可能な宇宙の中に存在していると推定されました!
ハッブル宇宙望遠鏡をもってしても観測可能な宇宙の中の銀河全体の9割以上が観測できていないというのは、本当に驚くべきことです。
最新の技術でも観測できないほど遠くの初期宇宙では、非常に多くの銀河が存在することが明らかになりました。
それらが合体することで現在の天の川銀河のようなより巨大な銀河が形成されていったと考えられています。
最新の見積もり
そしてつい先日、観測可能な宇宙内に存在する銀河の個数の推定値が上方修正される観測結果が示されたとニュースになっていたので、そちらを紹介したいと思います!
○COBを用いた最新の推定手法
Credit: Lauer, Tod, R. (et al.)
宇宙内にある銀河の個数についてさらに高精度な推定を行うために、「可視光宇宙背景放射(COB)」が用いられました。
地球から観測すると、宇宙のあらゆる方角からほぼ同じ強さの弱い電磁波が届いていて、これはまとめて宇宙背景放射と呼ばれています。
そんな宇宙背景放射は主にマイクロ波、可視光、赤外線の3つの電磁波の成分があるそうです。
Credit:NASA's Goddard Space Flight Center/CI Lab
その中でもマイクロ波から成る宇宙マイクロ波背景放射(CMB)は、宇宙が誕生してから38万年後に宇宙空間を満たした、宇宙最古の光であるとしてよく知られています。
一般的に宇宙背景放射といえばこのマイクロ波を指します。
ですが今回は宇宙背景放射の中でも可視光の成分である可視光宇宙背景放射(COB)が主役となります。
COBは天の川銀河の外にある無数の星や銀河などの天体が放った光が起源であると考えられています。
COBは天の川銀河外からやってくる光の総和なので、宇宙からやってくる可視光全体から、それ以外の光の成分を差し引けば、COBがどれくらい強い光なのかがわかります。
そして宇宙にある銀河の数によってCOBの強さも異なると考えられるので、正確なCOBの強さが判明し、さらにそれが現在推定されている全ての銀河からの光を考慮しても説明できないほど強ければ、銀河の推定値は上方修正されます。
○COB観測の難しさ
先述の通り、これまでに推定されていなかった銀河が実際はどれくらい存在するのかをより正確に推定するため、正確なCOBの強さを知ることが役立つのでした。
ですが地球大気や黄道面にある小惑星による太陽の反射光、更には天の川銀河内にある塵やガスによる反射光からのなどによる可視光成分が非常に強い影響で地球から観測できる可視光全体からそれらの余分な成分を差し引いたCOBの強さを測定するのが非常に難しい、という問題があります。
そこで地球の大気や黄道面にある小惑星による太陽光の反射の影響を受けにくくするために、これまでにパイオニアやボイジャーなど太陽系の外へと向かって行った探査機によってCOBの測定が行われています。
ですが天の川銀河からの光を除去することが難しく、正確なCOBの強さを求めることができませんでした。
○ニューホライズンズの成果
Credits: Johns Hopkins UniversityApplied Physics Laboratory/Southwest Research Institute
そんな中、2006年に打ち上げられ、冥王星やその衛星、さらにはより遠くにある小惑星アロコスの観測に成功し大きな話題を呼んだ探査機ニューホライズンズが、これまでにない精度でCOBを測定することに成功しました!
Credit: Lauer, Tod, R. (et al.)
ニューホライズンズは太陽から42-45au程度の距離にいる時に、自身に搭載されている高性能カメラLORRIを使って、画像に示された7つの方角の可視光での明るさを調べました。
観測を行った地点では地球の周囲を周るハッブル宇宙望遠鏡がある地点の10分の1よりも暗いため、邪魔な光が存在せず、COBの観測に非常に適した環境でした。
そして観測の結果、現在推定されている2兆個の銀河だけでは説明しきれない、原因不明の可視光成分が存在していたことが明らかになったようです!
なんとCOBの半分以上が原因不明の成分だったそうなんですね。
なのでもしも原因不明の成分が全て推定すらされていない銀河によるものだとすると、この観測可能な宇宙にはこれまでの推定値の倍以上、つまり4兆個以上もの銀河が存在しているのかもしれません!
もちろんこの推定値も地球から現在の距離で465億光年までの、地球から観測可能な宇宙の範囲内の数値なので、それ以遠も含んだ宇宙全体にどれほどの銀河があるのか、想像するだけで本当に果てしないですね。
情報参照元:https://www.sciencealert.com/new-horizons-has-seen-the-universe-with-less-light-pollution-than-hubble
http://www.ioa.s.utokyo.ac.jp/kisohp/RESEARCH/symp2011/KisoSymp2011/KisoSymp2011_IenakaP.pdf
https://arxiv.org/pdf/2011.03052.pdf
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