![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113338977/rectangle_large_type_2_1b42427fe8e739c7080776ccea3fd8e7.png?width=1200)
都合のいい女。
婚期を逃した。
ずっと好きな人がいた。
Tくん。高校時代の後輩。
長いこと、付き合っていた。
初体験の人だったし、Tくんが上京して遠距離になっても、
私が東京に行ったり、Tくんが里帰りしたときは、
間違いなく独り占めしていた。
でもね、いや、確かに、交際を申し込まれてはいないし、
私から「付き合ってください」とも言ってなかった。
ある日、Tくんがぽつんと呟いた。
「こんなの付き合ってるとは言えないでしょ」
その前後の会話は思い出せない。
「こんなの」ってなんだ。
年に数回しか会えないことか?
ちゃんとお付き合いしましょう宣言してなかったことか。
その答えは聞けてない。
その後、何人かの男性と恋愛はした。
結婚を意識した男性とは向こうの親の反対があり別れた。
そんなこんなでアラサー時代は、
オトコより親友のKちゃんと過ごすことが多くて、
Kちゃんにオトコができるとひとりで過ごした。
ただ、そんなときに限って、Tくんから連絡が来て、
私はいそいそと誘われるままにデートを重ねていた。
「それ、都合のいい女やん」とは、後にお付き合いした人の言葉。
いまでも都合のいい女扱いされていたとは信じられないけれど、
客観的に見れば確かにそうとしか考えられないことくらいは理解している。
Tくんの結婚を知ったのは、
都会の旅行代理店の店頭にあった新婚旅行ツアーを宣伝する広告写真。
Kちゃんが偶然見つけてくれてすぐに連絡、
急遽、待ち合わせしていっしょに見に行った。
共通の友人に確かめたところ、
Tくんが結婚したことを誰も知らされてなかった。
ショックというより、
「そういえばここ半年、連絡は来てなかったな」
なんてことをぼんやりと考えていたのを覚えている。
都合のいい女。
たまに彼女のように振る舞い、たまにセックスをして、
お返しはないけれど誕生日にはプレゼントを贈った。
連絡がないときはKちゃんや増えていく姪っ子たちと遊んだり。
いや、そもそも、群れるのは好きじゃないし、
自分にはひとりの時間も必要だ。
束縛はするのもされるのも好まない。
だからそれでよかった。
ふと、都合のいい女って、自分にとっても都合がいいんだなと思った。
いや、負けん気は強くないはずだけど。