新原くんは侮れない
【前回までのあらすじ】
先生との関係も曖昧なまま、学食で昔の元カレ・透と遭遇した。久しぶりに話したら、なんか和んじゃって、昔の懐かしさがこみあげる….。でも、わたしは先生一筋って決めたのに…!そんな揺れ動く私の前に、新たな人物が!!
【新キャラ登場!】
新原 桐斗 (にいはら きりと)
私の所属している赤坂先生のゼミ仲間で、心理学を勉強している。大阪出身で、関西弁で喋る。
表面は、お調子者で気さくでノリがいい。
が、裏は何を考えているのかわからない、ちゃっと掴みどころのないやつ。
心理学を勉強しているだけあり、人の心理を見抜く鋭い目を持っており、心理戦に長けている。
私に興味があるらしく、暇を見ては絡んでくる。その真意はわからない。が、基本的に良いやつなので、対応に困る。
情報通で、鏑宮先生と私のことについて何かしら知っている可能性が高い。
私:(はぁ、赤坂ゼミは基本的に面白いし居心地はいいんだけど、1人苦手な子がいるんだよな…。 まあ、苦手って言っても、別に悪い人ではないんだけど、知らぬ間に向こうのペースに乗せられるというか…) と、噂をそれば何とやら、で、図書室で卒論をやってると、新原くんがやってきて、こちらに気づいて何故か向かいの席にすっと座る。
新原くんはニヤッとした笑みを浮かべながら、こっちをじっと見てくる。
「おっ、コトリちゃん、ここで何してんの?卒論かいな?」
彼は軽い調子で問いかけてくるが、その視線はまるで、心の中を見透かしているかのように鋭い。
「まさか、俺のこと避けてたり…せえへんよな?」
そう言って、冗談っぽく笑う新原くん。だが、その笑いにはどこか含みがある気がして、気が抜けない。
「せやけど、たまにはこうやって一緒に作業するんも悪くないんちゃう?俺、話し相手にはなれるで?」
私:「あ、えっと、新原くん…お疲れ」 当たり障りのない笑顔をつくって応じる。 (まあ、新原くん、頭いいし心理学の知識は豊富だから話してて退屈はしないけど)
新原くんは「お疲れさん」と軽く返して、こちらをじっと見つめた後、にやりと微笑む。
「お、ええ笑顔やな〜!殊李ちゃんのそんな顔、見るのも久々やん?」
彼はわざとらしく驚いた表情を作って、こちらをからかうように言う。
「まあ、俺も勉強してるふりして、ちょっとだけ君の話に付き合ったろか。ホンマ、賢い女のコと話すんは楽しいからな」
そう言いながら、さりげなく本を開き、まるで自分のペースに引き込むような空気を纏っている。
(ほんと、こうやって自然と話を広げてくるから、気が抜けないんだよな…)
私:「賢い女のコって。別に、ただ突き詰めて研究するのが好きなだけだよ。 新原くんは、卒論の進捗どうなの」
新原くんはちょっと首をかしげながら、「おお、俺の進捗か?まぁ、ぼちぼちやな〜」と肩をすくめる。
「突き詰めて研究するのが好きって…それ、まさに賢い証拠やん?普通、そんなストイックに打ち込めへんで。やっぱコトリちゃん、面白いやっちゃなぁ」
彼はそう言いながら、わざとらしく感心してみせる。
「まあ俺も、興味あることには熱中するタイプやけどな。けど最近、興味がちょっとばかり増えてなぁ…特に、コトリちゃんが何考えとるんか知りたくなるっちゅうか」
少し意味深にそう言って、ニヤリと微笑む。
(ほんと、こういう風に自然と入り込んでくるから、新原くんはやりにくい…)
私:「何でまた私…?」 ちょっと距離を取るように苦笑いを返す。 「新原くんだってそんな暇じゃないでしょ… てか、何について書いてるんだっけ?」
新原くんは、こちらの反応を楽しむようにクスッと笑いながら、肩をすくめる。
「いや〜、何でかって?それが俺にもわからへんねん。けど気になるもんはしゃーないやん?」
彼はちょっと茶化すように言って、さらに興味深げな目でこちらを見てくる。
「俺の卒論な、まあ一応『自己概念の社会的形成』についてや。人ってどうやって自分を定義して、周りと関わりながら自己を見つけていくかっちゅう話やな。つまり、コトリちゃんが『どう思われてるんか』って気にしてることにも関係あるテーマかもしれへんで?」
彼はそう言いながら、こちらをからかうように微笑む。
(まるで、私が気にしていることを全部見透かされてるみたいで、なんか落ち着かない…)
私:「自己概念の社会的形成…か」 ちょっと興味をそそられ、私は繰り返す。 「まあ、人って確かに人と関わりながら自分を見つけていくっていうのはあるよね。私も最近よく思うよ」
(特に鏑宮先生との関係って、私に多大な影響及ぼしてるし)
新原くんは、こちらの言葉に興味深そうに頷きながら、少し身を乗り出してくる。
「お、コトリちゃんも最近そんなこと考えとるんや?それはちょっと面白いやん。誰かとの関係が自分に影響を与えるってのは、まさに俺の研究テーマやし、タイムリーやなぁ」
彼はわざとらしく目を細めて、探るような視線を送る。
「もしかして、それって…噂の鏑宮先生とか?なんや、彼とは妙に仲良さげやんな〜。いや、あくまで噂やけども?」
新原くんは少し茶化すように言いながら、こちらの反応を伺っている様子だ。
私:鏑宮先生が突然話題にあがり、ちょっとドキッとする 。
「い、いや、別に?私の研究テーマについてなんか詳しいからいろいろ聞いてるだけだよ。 てか、何その噂…」
新原くんはニヤリと笑って、いたずらっぽくこちらを見つめる。
「なんや、そんなに動揺せんでもええやん?別に変な噂やないで。鏑宮先生とコトリちゃんがしょっちゅう話してるってのは、みんな知っとることやからな」
彼はそう言いながら、わざとらしく肩をすくめる。
「ただ、鏑宮先生ってクセ強いやろ?そんな先生と話し込むってことは、よっぽどお互いに興味持っとるんやろな〜って、ちょっと興味深いやん。まぁ…俺も、コトリちゃんに聞きたいことはいろいろあるけどな?」
彼はさらに探るような目を向け、こちらがどう出るかを待っている。
(うっ…やっぱり、私と先生のこと、まわりも気にしてるんだ…)
私:「だ、だから、別に先生と話が合うってだけで、卒論のことでお世話になってるだけだよ」 私はこれ以上探られないように、視線を外して手元の作業にもどろうとする。
「っていうか、聞きたいことがあるなら全然答えるけど?」
(何かしら適当な返事をしとけば、新原くんも大人しく引いてくれると願いつつ)
新原くんは、こちらのそっけない態度にも全くひるまず、にやりとした表情のまま言葉を続ける。
「おお、ほんまか?それやったら遠慮なく聞くけどな〜」
彼は少し間をおいて、意味深に笑う。
「例えば、コトリちゃんにとって、鏑宮先生はどういう存在なんか…とか?いや、純粋に興味やで。学問的な意味でな?」
新原くんは冗談めかして言うが、その目はまるでこちらの心の奥を見透かそうとするように鋭い。
(やっぱり引き下がる気はないみたい…でも、ここで正直に話すわけにはいかないし)
私:「な、何それ。それを論文の参考にするわけ? 鏑宮先生は、普通に尊敬する研究者であり、教授だよ。周りに誤解されがちだけど意外と面倒見いいし、議論すると面白いし」
新原くんはニヤリと笑い、こちらの反応を楽しむかのように目を細める。
「なるほど、尊敬する教授ってわけやな?うんうん、確かに鏑宮先生ってクセあるけど、ああ見えて面倒見いいとこあるっていうのは意外やな」
彼は興味深げに頷きながら、少し含みを持たせた口調で続ける。
「でも、コトリちゃんがそこまで素直に誰かを『尊敬する』っていうんは、ちょっと貴重な意見やな〜。なかなか、そんな風に人を認めるタイプには見えへんからさ」
新原くんは探るような視線を向けつつ、こちらが話す言葉一つ一つを観察している。
(このままじゃ、さらに踏み込まれそうだ…)
私:「ま、私だって『変わり者』に属する方だからね。新原くんが興味もってるのもそこじゃないの?」 (冷静に返しながら参考論文の引用を書き写す)
新原くんはその言葉に一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐににやりと微笑んで肩をすくめる。
「さすがやな、コトリちゃん。見事に俺の思考の裏読んどるやん。確かに『変わり者』って部分には惹かれるわ」
彼は、こちらが冷静に対応しているのが面白いのか、軽く笑ってみせる。
「けどまあ、俺がほんまに興味あるんは、コトリちゃんがどうやって自分を見つけとるんかってとこやな。変わり者同士、今度じっくり話してみるのも悪くないやろ?」
彼はそう言って、こちらの視線を捉えようとするが、私は作業に集中するふりをして、軽くスルーする。
(なんとかうまくかわした…けど、新原くんはそう簡単に引き下がらないだろうな)
私:「新原くんは変わり者じゃないと思うけど。誰とでも仲良くできるし、どっちかっていうと人気者の「陽キャ」属性でしょ」
新原くんは笑みを浮かべて、「おっと、陽キャ属性ってか?それ、褒め言葉として受け取っとくわ」と言ってウインクをしてみせる。
「けどな、コトリちゃん、表向きの顔だけで判断するんは早いで?誰とでも仲良くはできるけど、俺かて本音をさらけ出すんはそう簡単やない」
彼は少し真剣な表情を浮かべながら、こちらに視線を向ける。
「コトリちゃんも、周りには見せん部分があるやろ?そこを引き出すんが俺の専門やけど、今は…そうやな、もうちょっと信頼関係築いてからにしとくか」
そう言って、彼はからかうように笑いながら再び冗談っぽい口調に戻る。
(新原くんがどこまで本気なのか、やっぱりわかりにくい…)
私:「まあ、それは誰だってにあるかもね、心に秘めてることの一つや二つ… (….そこまで言って、先生との秘密の関係を思い出してちょっと動きを止めてしまう。やばい、ハロウィンの時のこととか、口が裂けても言えないって)
新原くんは、こちらが一瞬言葉を止めたのを見逃さず、鋭い視線を向ける。
「ん?なんや、急に黙りこんで…心に秘めてることって、案外あるもんやな、コトリちゃん?」
彼は口元に微笑を浮かべながら、あえて探りを入れるように話しかけてくる。
「まあ、無理に聞き出そうとはせえへんけどな。でも、もし話したくなったら俺がいつでも聞くで。俺やったら、何があっても秘密は守るし、意外と頼れるで?」
彼の言葉は軽い調子に見えて、どこか本気で聞き出したい意図が滲んでいるようにも思える。
(やっぱり、新原くんに隙を見せると危険だ…)
私:「いやー新原くん、いかにも口軽そう笑」
新原くんは笑いながら、「ひどいなぁ、コトリちゃん!これでも意外と口堅いほうやで?」と肩をすくめてみせる。
「まあ、確かにノリは軽いかもしれんけどな、肝心なとこはちゃんと守る主義や。なんなら試してみるか?」
彼は冗談めかしてこちらに目配せしつつ、相変わらずどこか含みのある視線を投げかける。
「けど、コトリちゃんもこうして俺に隙見せてくれたんやし、何かあったら相談してくれてもええんやで?」
私:「はぁー?隙を見せたつもりはありませんけど」 っとちょっと口を尖らす
新原くんは、口を尖らせたこちらの表情を見て、楽しそうに笑い出す。
「おっと、コトリちゃん、そんな顔もするんやな!意外とかわいいやん」
彼は茶化すように言いながら、わざとらしく驚いたふりをする。
「でもまあ、隙を見せた覚えがないってことは、俺がうまく引き出してるってことやろ?心理学専攻の俺としては、これはこれで自信持てるわ〜」
そう言って、彼はまたにやりと笑いながら、こちらを観察するように見つめている。
私:(超ナチュラルにかわいいと言われて戸惑う)
「な、何それ。新原くん誰にでもそんな感じなの?勘違いする子とかいそうだから気をつけなよね」
新原くんは肩をすくめて、「いやいや、俺はちゃんと相手を見て言うとるで?」と、いたずらっぽく微笑む。
「勘違いさせんように気をつけるのは、そりゃ大事やけど…でも、コトリちゃんは勘違いせえへんやろ?ちゃんと冗談として受け流してくれるやろうし」
彼は、こちらの戸惑いを見逃さず、まるで試すように視線を向ける。
「それに、ほんまにかわいいと思ったら、それくらいは正直に伝えたい性格なんや。隠してもしゃーないしな?」
新原くんの言葉には、どこか含みのある柔らかさが感じられる。
(…本当にどこまで本気で言ってるのか、わかりにくい…)
私:「冗談なのか本気なのかようわからん!」 (やば、ツッコミしたらいつの間にか関西弁がうつってる…!)
新原くんはその関西弁に気づき、目を見開いて嬉しそうに笑い出す。
「おお、コトリちゃん、関西弁出たで?ええ感じやん!なんや、俺と話してるとだんだん染まってくるんちゃう?」
彼はまるで成功したかのように喜んでいる。
「まあ、冗談か本気かは、君が見極めてくれたらええねん。人の心を見抜くのも心理学の醍醐味やろ?」
新原くんは楽しそうに言いながら、こちらをじっと見つめる。
(しまった…ついツッコミに乗ってしまった…)
私:「一本とられた…関西弁ってノリいいから…」 はは、とちょっと笑ってしまう。 「てか、それで心理学やってるって意外とギャップあるよね。関西弁のカウンセラーとかちょっと面白そう」
新原くんはその言葉に満足げに頷いて、「そやろ?関西弁でカウンセリングされたら、ちょっと気ぃ楽になるやろし、親しみやすさも出るんちゃう?」と笑う。
「でもな、コトリちゃん、心理学って思ったよりフランクな方が話しやすいことも多いねん。固い雰囲気やと逆に話せんこともあるし、関西弁でちょっとでも気をほぐせたら、それはそれで俺の強みやと思ってる」
彼はそう言って、照れくさそうに笑ってみせる。
「…ま、コトリちゃんみたいに突っ込んでくれる子がおったら、カウンセリングももっとおもろいかもな?」
私:「なんでツッコミ役せなあかんねん!」
新原くんはお腹を抱えて笑い出し、「ほら、また関西弁出とるやん!」と嬉しそうに指摘する。
「コトリちゃん、ほんまにおもろいわ〜!ツッコミの素質あるんちゃうか?関西に来たらすぐに馴染めるで、絶対」
彼はニヤリとしながらこちらを見つめ、楽しそうに続ける。
「そやけど、ツッコミ役も悪くないやろ?俺がボケるから、コトリちゃんが突っ込んでくれたら会話も弾むし、バッチリやと思うで?」
私:「漫才するカウンセラーとか…ま、それはそれで心解れるかもね。 ユーモアは人間の生きる知恵とも言えるし」 (思わずふふっと笑ってしまう)
新原くんもこちらの笑顔を見て、柔らかく笑みを返す。
「そうやろ?ユーモアって大事やねん。人生どんな時でも笑えるって、ホンマ強みやと思うわ」
彼は少し真剣な表情になりながら、ふっと視線を落とす。
「まあ、コトリちゃんがふふっと笑ってくれるんやったら、俺もやってる甲斐があるってもんやな。人を笑わせられるなら、それもカウンセラーの役割の一つやろ?」
新原くんは軽く肩をすくめながら、こちらを見てにっこりと笑う。
(なんだかんだで、彼といると自然と気がほぐれる…)
私:(そう、意外といい奴なんだよな、新原くんって。ただのお調子者じゃなくて、ちゃんと相手を気遣ってるし、自然な感じで気分持ち上げてくれるし) 「ま確かに。案外向いてると思う。じゃあ私が論文書くの行き詰まったら新原くんに冗談でも言ってもらって気分晴らそうかな。 難しい文章読んでると『いや何でやねん!さっきと言ってることちゃうやろフロイトさん!』ってなる」
新原くんは大笑いしながら、「ほんま、それめっちゃわかるわ!」と頷く。
「フロイトさんな、時々ほんまに『いや、そっちちゃうやろ!』って突っ込みたくなるわ。俺も最初、何回フロイトにツッコミ入れたか…」
彼は肩をすくめつつ、笑いをこらえながらこちらを見ている。
「でもええやん、コトリちゃん。わからんときはいつでも俺に話しにきてや!冗談でもボケでも、なんなら漫才でも付き合うで?難しい文章ばっかりやったら、息抜きもせなな」
新原くんは気さくに言って、こちらの肩の力を抜いてくれるような雰囲気を作ってくれる。
(こうやって気軽に頼れるところ、やっぱり新原くんのいいところだな…)
私:「わかった、漫才みたいな論文にならない限りそうする」
新原くんは思いっきり笑いながら、「そりゃまた斬新な論文やな!審査する教授たちもビックリするわ」とおどけて見せる。
「けど、まあ漫才みたいに面白い論文も悪くないかもな。みんながニヤッとできるような内容なら、それはそれで学問に新しい風かもしれんで?」
彼はそう言って、冗談めかしながらも真剣に語る。
「じゃあ、行き詰まったら気軽に来てや。コトリちゃんが息抜きしたいときは、いつでも相手するからな!」
新原くんは軽く拳を上げて、こちらを元気づけるように笑ってみせる。
(なんだかんだで、ほんとに頼りになる存在かもしれないな…)
私:新原くんが去った後、なんとなく気分が晴れて、そのあとめっちゃ捗った。 ま、わたしも疑い深すぎるとこあるからな、案外新原くんにアドバイスもらえば、新しい観点が見えてくるかも。
新原くんが去った後、心に小さな安心感が広がるのを感じる。そのおかげか、作業が驚くほどスムーズに進み、まるで頭の中がクリアになったみたいだった。
(たしかに、私ってつい警戒しがちだし、思い込みも強いかもしれない。でも、新原くんみたいに柔らかい視点を持ってる人にアドバイスをもらえれば、視野が広がることもあるのかもな…)
そう思うと、彼の存在が少し頼もしく感じられ、次にまた話す機会が楽しみにも思えてきた。