書く理由 1
はじめまして、内山昂輝です。
今回、このnoteという場所で物書きを始めることにしました。もしかしたら私のことを全く知らないという方もいらっしゃるかもしれないので、一応簡単に自己紹介をします。
1990年生まれの私は3才で今の事務所に入って子役を始め、小学校高学年から声の仕事もやるようになり、どういうわけか声優になっていました。30歳になった現在、普段は声の仕事をしています。つまり、アニメやゲームのキャラクターの声を出したり、吹替のお仕事などをやったりしています。なぜそういう人が新たに文章を書くのか。理由はいくつかあります。
まず、レギュラーラジオの仕事において、「チャレンジ」の感覚が減ったことです。『内山昂輝の1クール!』(文化放送超!A&G+毎週日曜22時30分〜23時00分/YouTube、Apple Podcast、Spotify、Google Podcast、Amazon music他でも毎週火曜日夕方配信)という約30分のラジオ番組を2015年の1月から始め、今年で7年目に入りました。
最初は1クール(3ヶ月)の期間限定番組として半分冗談半分本気で取り組んでいたので、正直言ってここまで続くとは思っていませんでした。番組が始まった頃は仕事場で業界の知り合い複数人から「1人ラジオやってるってマジですか?!」と驚かれたほどです。嫌になったら3ヶ月でやめられるよう、保険を掛ける意味も込めた番組タイトルはその後思わぬ誤解を生み、文化放送のタイムテーブル(番組表)から3ヶ月で勝手になくなるという事件も起こりました。文化放送の社内では本当に3ヶ月で終わると思われていたらしいのです。我ながら難儀な番組名を付けてしまった、とその時は一瞬後悔しました。
そもそも、1人で話すラジオなど全くやったことがなかったので、手探り状態の中、番組は始まりました。その奇妙さは、やったことがない人には伝わりにくいかもしれません。また、知る必要のないことかもしれません。しかし説明させてください。1人で話すということは、当たり前のことですが何を話しても反応が返ってこないということなのです。初回の収録時は、水中で息ができない苦しさ、あるいはなんの装備もないままに宇宙へ投げ出されたような気分を感じました。
もちろん、目の前には構成作家の矢野さん(初代作家の矢野了平さん。大変お世話になりました)がいて、頷いてほしそうな素振りをこちらが見せれば絶妙な無言の反応をしてくれるし、ガラスの向こうにはディレクター(初代ディレクター若杉晋吾さん。大変お世話になりました)や内田浩之プロデューサーがいて同様の態度をとってくれます。
しかし、基本的には喋ってくれません。冒頭で挨拶をしても無音、最近あったことを話しても無音、ツッコミ待ちのような誰か・何かに対してわざと失礼なことを言っても無音。ラジオの放送で無音がしばらく続けば放送事故になってしまうので、録音番組とはいえ、すぐに次の話題に移らなければなりません。これが最初の壁でした。
どういうリズムで何をどんな風に話せばいいのかがさっぱり分からない。アニメやゲームのプロモーションイベントやファンイベントなどで人前に立つ機会はあったし、二人以上のラジオの経験もあったので、その感覚を応用すればなんとかなると思っていたら大間違いでした。開始当初は全然手応えがなく、本当にタイトル通り1クール(3ヶ月)でやめてしまおうと思っていました。
自分から顔も見えない不特定多数に話しかけ、それを一切途切れさせず、決まった時間までひたすら一人で話し続ける。なおかつ無言は禁止。よくよく考えてみれば、そんなことは通常の会話作法ではルール違反です。自分の話ばかりして相手の話を許さない人なんて、大抵嫌な人です。つまり、1人でラジオ番組をやるということはルール違反をひたすら続ける悪人にならなければならないということだったのです。日常生活では行儀の良い会話作法を心がけ、ラジオ収録ではダメな人にならなければならない……!まずはこの矛盾が苦しかった。
(続く)
(→「書く理由 2」はこちら)
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