書く理由 3

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次の理由はネタバレを解禁して映画の感想を語ってみたいからです。これまで「声優ラジオ」という枠を考慮して、普段アニメ・ゲームは楽しむけどアニメ映画以外は頻繁に映画館へ通うわけではない方々を意識しながら、映画の感想を語るコーナー「ムビログ」をやってきました。

コーナーが今の名称・形式になる以前から映画について話したことはありました。元々映画を観るのは趣味なので苦にならないのですが、それについて話すというのはこれまた別問題で試行錯誤の連続でした。基本的に自分が面白いと感じた映画について話していますが、ではそれをどう語るのか。スタッフ・キャストの情報、あらすじなどを並べてもそれはオフィシャルサイトを見ればすぐに分かることです。また、「面白い!」とか「感動した!」などは確かに感想ですが、それだけだと「はー、そうですか。でもあなたと私は違う人間だから、同じように感じない可能性も大いにありますよね?」と私がリスナーだったら考えてしまいます。

なので、なぜ自分が面白いと思ったのか、ということに焦点を絞って考えていくようになりました。「○○が良かった」と言った場合、その「○○」には映画のタイトルや俳優の演技、とある場面、あるいはその細部などが入ると思いますが、なぜ良いと思ったのかとか、どこが良かったのかを具体的に説明すれば、聞く人に自分の気持ちがより分かりやすく伝わるでしょう。「映画批評」というレベルにまでは至らないので、せめて「説得力のある感想」になればと考えたのです。「面白い!」という感情を人に伝えるために、「なぜ面白いと思ったのか」を並べていきました。

その結果、質はさておき、ある程度の時間を埋めることが可能になりました。しかしここでまた「チャレンジ」の消失を感じました。やり方がルーティン化してきたように感じたのです。むろん、ある程度の型をもうけて、その細部のクオリティを向上させることは有効な手段ですが、このやり方の限界も見えてきました。ネタバレを避けるため、作品の核となるポイントまでたどり着けないのです。例えば、後半のクライマックスの細部に自分が感動したとしても、それはほのめかす程度にしか説明できない。それが前半部の何かとリンクしている見事さなども説明してしまうと、初見でそれを観客自らが発見する楽しみを奪ってしまうのでは、と立ち止まることが何度もありました。
 
本当に優れた映画はネタバレされても十二分に面白い、という考え方も理解していますが、私自身はあまり情報を入れずに楽しみたいタイプなので、何も知らずに観て驚く、サプライズの楽しさを知っています。だから、新作について紹介するラジオ番組ではそこまで深く情報を出さずに魅力を伝えるべきだと考えているのですが、そうではない新たなやり方を導入することで、映画を観る眼や考え方の質を向上させたいと思うようになりました。話すのではなく、書いた文章で自分の感じたことを表現する。やり方とメディアを変え、新境地を開拓したいと思っています。

そして、上記の事情に加えて、昨今のネットやSNSでの映画の語られ方に対する違和感もあります。物語の内容やテーマに対する言及、議論が多く、映画本来の魅力から少し離れてしまっている、あるいは魅力の全てを掴みきれていない気がするのです。もっと映像演出や音響演出なども含めて注目するべきではないでしょうか。「現代的テーマ」とか「ポリティカル・コレクトネス」とか、確かに近年のアメリカの大作エンターテインメント映画の物語内容は、そういう視点で考えると大変興味深いですが、映画は映像表現であることをもっとみんなが思い出すべきです。言葉で語れないから映画にするのだと思います。あらすじやテーマの紹介で済むなら、そもそも文章表現でやればいいはずです。また、観客・書き手側が社会に対して言いたいことを、映画を利用して語るのも退屈だと思います。


もちろん自分が即座に、内容面だけではなくビジュアルやサウンドにまで目を向けた上で、その思いを文章で完璧に表現できるとは思っていません。しかし、チャレンジすることが重要なのです。この取り組みが狙うことは、映画の魅力は物語やあらすじだけではない、と伝えることです。つまり、極端な例を挙げれば、物語の内容がさっぱり意味不明だとしても、映像や音響のパワーで傑作と思わされることもあるのでは、と言ってみたいのです。または、内容とそれを表現する形式が有機的に絡み合って効果を発揮する素晴らしさを表現してみたいのです。


(続く)

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