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放浪No.09 錯覚に陥る

進んでも進んでも、一向に進んだ気のしない山道。
自転車を降りて押してしまおうか…いや、まだギアを軽くすればこげるか…でも、そろそろ限界も近いし…などと頭の中で堂々巡り。
この絶妙な登り坂が、前回の山道の恐ろしさとは違う形で容赦なく襲い掛かってくる。
景色が変わらないので、本当に進んだ気がしないのだ。
ひたすらに自転車をこぎながら、降りるか…こぐか…そもそも俺は何をしているのだろうか…と自問自答しながら、いつまで続くか分からない山道を進む。
やがて目の前の景色が平坦な道に見えてきたので、少しの希望と期待を胸に進む。

後日談になるが、この話を色んな方々に話すと俗に言う"自転車あるある"だと教えてもらったので、併せて書いていきたい。

平坦に見える道ではあるが、こぎ進めるペダルがやけに重たい。
ただただ混乱しながら進むしかなかった。

自転車あるあるとして、今まで進んで見てきた景色への慣れ、木々の生え方、太陽の角度、見通し具合、風の影響などで、道の見え方や感じ方が違ってくるらしい。
今回あてはまるのと思ったのが、長く見てきた緩やかな坂道からの微妙な変化
木々の生え方や太陽の角度を気にする余裕はなかったので不明だが、風の影響は特に感じなかった。

そんな自転車あるあるを知らない俺は、何が何だか分からないまま大量の汗を流しつつ自転車をこいでいった。
すると今度は平坦に見える道でスピードが出始めたので、またもや混乱してしまう。
速度に合わせてギアを変えスイスイ進むと、誰が見ても下り坂と判断できる勾配に入ったが、先ほどの混乱状態もあり、これで山越えを終えてくれと願いながらスピードを付けていく自転車に身を預けた。

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