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妥協するのも悪くない。

夫は結婚する前は自炊をしていたけれど、私と生活を始めるようになって料理はほとんど作らなくなってしまった。
私は料理をするのが好きだし、夫が料理をするとみるみるうちにシンクにはお皿や鍋が積み重なり、スパイスの瓶の蓋は開けっ放しで放置され、カットされた使用済みの野菜もそのままゴロンと転がったままなので夫にはなるべく料理をして欲しくない。
夫がキッチンを使った後のボーデル(フランス語でひどい有様)な状態を見ると、私のコブシはワナワナと震えてちょっと夫にパンチかキックを入れたくなる。(ていうか入れている。)

たまーに、夫と一緒に料理をする時は、私は片付けという名の後処理班に徹する。夫には食材のカットやソテーを任せて、私はひたすら使ったまな板や鍋を洗い、使い終わった調味料や食材を片付ける。
こないだはクネルというフランス料理を一緒に作ったが、
楽しかったけど、すごくこう、ワチャワチャした。まるでイベントだった。
夫に言わせれば、今のキッチンには自分の知らない材料ばかりで料理しにくいし、料理をしたらしたで、私がコワイらしい。

こうして、料理は私の担当になった。
お互いに納得してその生活スタイルになっているから良いのだけれど、
私も疲れていたりすると、夫が食事をするときや食事をした後にありがとうの一言でもなかったりするとイラッとすることがある。
特にお弁当を作ってあげたのに、美味しかったとか、ありがとうの一言もないとモヤモヤ〜っとする。

ありがとうくらい言ってよー!と不機嫌になって夫に言い放つと、
夫は慌てて、ありがとーマシェリー!!!と条件反射で言う。
ごちそうさまでした。と言う習慣がないフランスのカルチャーに育った夫は時々言うのを忘れてしまう。
基本的に、一緒にご飯を食べるときは、いただきます。とごちそうさま。を言うのだけど、お弁当のときなどはわざわざ私にありがとうって言ってこない。
ほんの時々思い出したように言ってくれるけど、
作っている側としては、毎回言われたいものだ。


そんなある日、私がクタクタで帰ってくると夫が超満面の笑みで変な歌を歌いながら出迎えてくれた。
超ウルトラスーパーハッピーな夫を見て私もつられて笑ってしまう。
ふと見たら、夫は私の用意していたお弁当を食べ終わってお茶を飲んでいたみたいだ。
お弁当ありがとうー!美味しかったー!と言うのを身体全体で表しているみたいで、ありがとう。なんて直接言われなくても、彼が感謝をしていることは十分伝わった。

うん、もうそれで良いじゃん。
言わなくてもわかるってのはこのことだ。

こんな妥協も悪くない。


でも、夫が言う美味しかった。ありがとう。が聞きたくて、
これ美味しかった?って聞くのは止められないんだけどね。


そういえば、いつの間にか夫が、なんかさーと言う日本語を使うようになっていた。
nanka saaaa、J'ai envie de manger des fruits de mer!
(なんかさー、魚貝類が食べたい!)

こんな風にフランス語と日本語を混ぜて使うのは私の悪い影響だ。
そっか、とか、思った。とか、みたいなー。っと言う日本語の端々をフランス語にくっつけて私たちは会話している。

私が無意識に使ってしまっている言葉を相手にリピートされて初めて気づくのはちょっと面白い。
でも、もう少し使う言葉に意識向けなくては行けないかな・・。


つづく


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