うちの場合は。 ⑤3代つづく女の魂
昔はこう思っていた。母と私は文化系と体育会系ぐらい違うと。
30代に突入してから嫌というほど感じることがある。母と私は似過ぎている。あまのじゃくで時に感情的、の割に落ち着いた大人の女性のつもりで恐れずにズケズケと偉そうに意見を言う。きれい好きで炊事掃除洗濯は問題なくこなし生活力はあるが、恋愛能力がないに等しい。
服装は私のほうがセンスがあると思っていたが、私が芸大に通い出したあたりから母の意識が変わって身なりが追いついてきて、シンプル系の服を好むところまで似てきた。家族全員、顔が薄いところが一致しているから今現在、淡白な一族である。
思うに30代に入ってから、”一人の大人の女性”というくくりで、60年以上この世を生きてきた家庭にいる”母”とは違った一人の女性として見る側面が表れたから。もちろん家族をつくってきた母としてずっと尊敬して見ているところもある。不思議なことに、母も兄より私についてのほうが感情的になることが多く、これは近くの友達に聞いてみてもそうだから、同性は家族内でもライバルなんだかマブダチなんだか、複雑な面があるんだなと感じる。
母には性格的に似過ぎているところを感じていたが、父方の祖母については体のつくりが自分とそっくり過ぎてたまげたことがあった。
もう今は祖母はいないが、お気に入りの洋服やアクセサリーなど、おしゃれな祖母は小物をいろいろと残してくれていた。叔母たちがその中から選んだのち残してくれた指輪数点をもらったのだが、私のどの指にはめてもばっちりサイズが合うのだ。節がしっかりしていて、わりと男性並みに大きい手の私と全く同じ指輪のサイズ。遺伝子すごい。祖母が何十年も前に洋服屋さんに仕立ててもらったスカートを、レトロなデザインが可愛かったので自分でリメイクして着ようと思い試しに履いてみたら、これもウエストが寸分違わずのジャストフィットであった。遺伝子こわい。
今最も恐れているのは、祖母とは顔のつくりも同じなので、ほうれい線が将来ブルドッグ的な線を描き始めるのではないのかということ。そこまでは似たくないのよおばあちゃん。