私の将来の目標―Ani-Tech構想と自身のキャリアプラン―
こんにちは。しゅーとです。五月雨式の投稿も本稿で最後になります。
前回の中間課題に引き続き、今回は「AI革命後の社会と仕事原理」の最終課題を公開したいと思います。本講義の最終課題は授業全体を通して自身のキャリアプランを提示するというものでした。本講義、実は3年生、4年生の受講者が多く1年生の私からは就職といわれてもまだ具体的にキャリアプランを立てる段階ではなかったのですが、アニメ業界志望ということは暫定的に決定しているので、そちらとテクノロジー活用の問題を『平成 28 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(アニメーション分野におけるデジタル制作環境整備に係る調査研究)報告書 アニメのデジタル制作導入ガイド―日本のアニメーション制作が培ってきた技術を、未来の才能に引き継いでいくために―』という経済産業省作成の資料をベースに考察したレポートになっております。
では、よろしくお願いいたします。
1.概要
私の将来の目標は、アニメプロデューサーになることだ。私は中学生のころからアニメが好きで、作品としてのみならず、声優のイベントに行ったり、アニメビジネスに関する本を読み漁ったりと、次第にアニメ産業自体にも興味を持つようになった。アニメ産業は、これからソフトの時代に日本において、海外に高い優位性を持っている文化財であり、実際に2017年も前年比108%の市場成長率を記録し、8年連続売上増、 5年連続最高値更新も達成した成長産業でもある 。しかし、同時にアニメーターの労働問題や、薄給激務の業界体質、海外海賊版サイトの広がり、そもそも赤字が基本のビジネスモデルなど、多くの問題が山積みされている。
そこで、私が掲げたい構想が『Ani-Tech構想』だ。本授業の中でも幾度かクロステックの話題が取り上げられており、Fin-Techなどもとからテックと相性がいいものから、Agri-Techなど一見かけ離れているようなものまで、幅広い産業において『xTech』を標語にテクノロジー活用による効率化が謳われてきた。アニメ産業においても、昨今のアニメーター低賃金問題や労働の長時間問題など、労働にかかわる諸問題が指摘されている。その現状について、2018年アニメ産業レポートにおいても、「どのスタジオにおいても確実に作業時間を短縮せざるを得ない中において、現在と同様の制作レベルを維持するためには、デジタル技術を活用した制作手法の見直しによる生産性アップしか道は残されていない。 」と語られており、テクノロジー活用への機運が高まっている。しかし、アニメ業界自体クローズドで小さい業界だからであるか、『Ani-Tech』と銘打ち多角統合的なテクノロジー活用を標榜する識者も少なく、いまだデジタル化が行い切れていない作業が多く、テクノロジーの導入も非常にプリミティブな段階にとどまっていると言いざるを得ない。
2.現在のアニメ産業の状況理解
『Ani-Tech構想』の中身に触れる前に、まず日本アニメ産業の基本的な現状について共有したい。
日本のアニメ産業は2017年時点で、市場規模2兆1527億となっている。これは、アニメを中心としたコンテンツビジネス全体の総計であり、商業アニメの制作会社売り上げの総計は2412憶円だ 。いずれの規模も日本のGDPと比較すると実に小規模な産業だといえ、現在アニメ産業を「産業」と呼ぶべきか識者の中でも意見が分かれる。
しかし、世界中で増加傾向にあるオトナアニメ(日本においては深夜帯で放送されている視聴者層を青年以上においているアニメ作品)需要に訴求できるクオリティを担保できるのは、現在日本のアニメ産業しか存在しないといっても過言ではなく、VODサービス等により、海外市場におけるマネタイズも容易になったことも合わさりアニメ産業の将来に対する期待は高まっている。
市場の成長においても、部門別でみると国内アニメ配信の市場は13%Upで540億円、海外市場前年比23%、9948憶で一兆に迫る勢いとなっており、ビデオパッケージを中心としたビジネスモデルが崩壊し、危機に陥っていたアニメ産業にとって吉報となっている 。現に、我が国のコンテンツ産業の市場規模は約12兆円で、米国、中国に次いで世界第3位の規模となっており、平成27年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」においても、こうしたコンテ ンツの海外展開について重要な国家戦略の一つとして位置づけられている 。
このように、成長を続けているアニメ産業だが、現在デジタル化されている工程は主にポストプロダクションと呼ばれる色指定以降の工程であり、作画工程の大部分は紙に書いた作画をカット袋に入れ制作進行が車で演出や作画監督に受け渡しに行くというひどくアナログな方法に頼っている場合が多い。」
ちなみに、制作進行という役職は作品の管理、スケジュールの管理、作業環境の管理など、クリエイターの制作全工程に携わりサポートをする役職で、アニメプロデューサーになるためのキャリアステップにおける最初に行う役職となっている。つまり、私はアニメプロデューサーになるために、まず制作進行に就かなくてはならないということだ。先述した通り、この役職はアニメ制作の全工程に携わりその管理・サポートをする役職だ。つまり、この役職の効率化、デジタル化が行えれば、多くの作業における効率化が図れる。この工程におけるデジタル化の試案はすでに、『平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 《アニメーション分野におけるデジタル制作環境整備に係る調査研究》報告書 アニメのデジタル制作導入ガイド』において提言されているので、今回は割愛させてもらうこととする。
3.テクノロジー活用の提言・考察
私が、この授業全体を通して将来アニメプロデューサーとなるために生かせると考えた、考えやテクノロジーをいくつか提案したい。
まず、DAOの考えは大いに役に立つ。現在アニメ制作においてデジタル化を行う際の最大の障壁は、サーバーエラーなどにより制作がストップしてしまうことへの恐れだ。アニメ制作をテーマとしたアニメ作品『SHIRBAKO』において、非常に興味深い描写があった。それは、本作品の中でFTPサーバーが原因不明のダウンを起こしてしまった際の対応だ。サーバーがダウンしてしまったら、データのやり取りができなくなり、アニメの放映に間に合わない。その際、制作進行で主人公の宮森あおいは、サーバー会社への復旧見込みを聞くやいなや、車で紙のデータを取りに走ったのだ。この描写を、このアニメに取り入れた真意は分からないが、私にはこれが、アニメ業界のテクノロジーへの不信感のようなものに感じられた。しかし、問題は一つのサーバーにデータを集中させてしまっていることであり、クラウドを使うなど非中央的なシステムを導入すれば問題は解消される。
また、コンテンツビジネス自体は、データを中心としたビジネスでありこれはテクノロジーとの相性も良いように思う。例えば、授業内でも幾度か触れられたブロックチェーン技術。この一種であるスマートコントラクトなどを活用すれば、著作権利用のやり取りを円滑化させることができ、二次利用における効率化や、現在グレーゾーンで行われている二次創作などのビジネス化も見込めるだろう。
4.結論
このような、多角的なテクノロジー活用戦略をアニメ産業で謳っている人は実に少数だ。ヤオヨロズ株式会社取締役のアニメプロデューサーである福原慶匡氏は、著書『アニメプロデューサーになろう』において、「業界の大先輩が言っていました「アニメ業界を本気で変えようと思っている人は100人もいない」と。「このままで良いや」という人と「変えられるわけがない」という人がほとんどです。」と述べている 。私は、これからアニメ業界への就職を目指す一若者として、2017年で100周年を迎えた日本アニメが、次の100年へと発展していくために、そしてモノ消費からコト消費の時代に誇れる日本のソフトパワーとして、アニメ産業をよりおおきく発展させられる人材になることを目指している。
その中で、テクノロジーの活用という視点は、今後を考えるうえで欠かせない視点だ。今後も大学や学外含めテクノロジーへの情報感度を高め、その知識・知恵を自身のキャリアプランひいてはアニメ産業のために使える人材となるよう努力を行う。
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