『ハウルの動く城』 ひたすら面白い映画に会いたくて 〜72本目〜

 宮崎駿監督の作品を全て観ておこうと思い、『パンダ・コパンダ』を観てから『ハウルの動く城』までの道のりは思っていた以上に長かった。びっくりしたのは、この映画の公開が2004年であったことである。もうかれこれ15年も前の作品なのかと思うと時の流れの速さを感じざるを得ない。

72本目:『ハウルの動く城』(2004)

      『ハウルの動く城』(2004)

        脚本・監督:宮崎駿

「僕はもう充分逃げた。守らなければならない者が出来たんだ。君だ」

物語のあらすじ

   原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズの『Howl’s Moving Castle』。日本語版の題名は『魔法使いとハウルと火の悪魔』だ。本作は原題を採用したことがよくわかる。もう本当にそのまんまの訳でインパクトさえある。私は断然本作の題名がお気に入りだ。

   物語としては、帽子屋で働く18歳の少女ソフィー(倍賞千恵子)が荒地の魔女(美輪明宏)に呪いをかけられ、90歳の老婆になってしまう話だ。最初からソフィーにとってはシビアな展開である。

   ソフィーはあるとき動く城の持ち主で魔法使いである美青年ハウル(木村拓哉)と出会う。そして、ソフィーはハウルの城を掃除する者として居候させてもらうこととなり、なんとも不思議な共同生活が始まることに。一緒に生活していく中で2人の関係は少しずつ進展し、お互いのことを考えるようになっていく。果たして2人の結末は。

   90歳の老婆になってしまった悲劇のヒロインソフィーと凄腕の魔法使いで動く城の持ち主であるが弱虫のハウル。本作はこの2人の行動を通して、私たちに生きていることの楽しさや過去のしがらみまで全てを包み込む愛の素晴らしさを描いた意欲作だ。

   一度観ただけでは、全てを理解することは難しい。しかし鑑賞後、不思議な余韻が残る作品であった。

本作の魅力

 映画『ハウルの動く城』は、実に謎多き映画だなと私は思う。おそらくみなさんもそうだと信じたいところだが。どう考えても、一度観ただけではその謎を消化しきれない。つい何度も観たくなってしまう映画の1つかなと思う。金曜ロードショーでやっていると今後絶対観るであろう。

   また色々な解釈を鑑賞者側ができるというのも、この映画の楽しいところである。勝手にこうじゃないか、ああじゃないかとブツブツ1人で考えているだけでも楽しいのだ。

 ソフィーの声に賠償千恵子。ハウルの声に木村拓哉。そして、荒地の魔女の声に美輪明宏さんを起用したこともこの映画の見所だ。賠償千恵子の少女から老婆までの幅広い演技、木村拓哉の相変わらずのカッコよさ。そして、美輪さんの変幻自在の演技力は大いに観客を魅了したことであろう。もちろん私もその観客の1人である。

私の1番好きな場面

 私の好きなシーンを挙げるならば、ソフィーが場面によって途中で若返るシーンの数々であろう。これは見ている側からすれば全くの謎であった。しかし、なんで今一瞬だけ若返ったのであろうか、などと考えることが何より楽しかった。この作品は、ほんとあれこれ考えるのに適している。

 そしてこのシーン、というかこのセリフも好きだ。

   「なぜ?僕はもう充分逃げた。守らなければならない者が出来たんだ。君だ」。

   これは、ソフィーに「逃げましょう。戦ってはダメ」と言われた際に返したハウルのセリフだ。このセリフを聞いた時、木村拓哉がハウルの声で良かった、と素直に感じた。やっぱりキムタクは声優でもカッコいい。

最後に

 原作『魔法使いとハウルと火の悪魔』を読むと、この映画が省略していた部分などを補完でき、映画の内容がよりわかりやすくなると聞く。これはぜひ読んでみたい。これを機会に洋書に挑戦してみるのもいいんじゃないかなとも思ったり。原作を読んでからまた観てみたいな。

   もし『風立ちぬ』以降の宮崎駿監督の最新作が制作されるのならば、私は同じように時の流れの速さに想いを馳せるのだろうか。ひとりの映画好きとして、彼の本当の引退作というものを観てみたいものだ。

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