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『クリード 炎の宿敵』 ひたすら面白い映画に会いたくて 〜60本目〜

   「なんということだ。本作は『ロッキー 4 / 炎の友情』の正当な続編ではないか」。これは、本作を観た後の率直な私の感想である。おそらくロッキーシリーズを全作観た人にとって、本作はまるでご褒美のような作品であるはずだ。

   本作は、前作『クリード チャンプを継ぐ男』の続編であり、クリードシリーズの2作目である。
この作品を前作同様ロッキーシリーズに含めるのであれば、通算8作目に当たる。

60本目 : 『クリード 炎の宿敵』(2018)

            『クリード 炎の宿敵』(2018)

        脚本 : チェオ・ホダリ・コーカー /
     監督 : スティーブン・ケープル・ジュニア

               「父の遺した偉業と罪」

物語のあらすじ

   前作でアドニスがスパーリングで大敗を喫した相手ウィーラー。そのウィーラーは現在ヘビー級世界チャンピオンであり、アドニスは彼にリベンジを果たすべく対戦に乗り切る。

   このタイトルマッチでアドニスは、セコンドのロッキーと共にウィーラーを見事打ち負かすことに成功したのだ。こうして彼は、ロッキーや父アポロと同じヘビー級世界チャンピオンに輝いた。

   だが、勝利の余韻に浸っている間も無く、世界チャンピオンとなったばかりのアドニスに早くも新たな挑戦者が現れる。

   なんと、その挑戦者は父アポロを殺したイワン・ドラゴの息子ヴィクター・ドラゴであったのだ。再び、バルボアとクリードの前に最強の敵ドラゴが立ち塞がる。この最強の敵にアドニスは勝利を手にすることができるのか。

ボクシングで語る親子の物語

   本作は2つの物語が複雑に絡み合う。それは、息子たちと父親たちの時代を超えた物語。なんと『ロッキー4 / 炎の友情』のストーリーの続きが本作で展開されるのである。

   アドニスがヴィクター・ドラゴとの戦いを経て、父親の死を乗り越える。そして、同時に本当の自分をも見つけ出し、自分自身が真の「父親」へと成長を遂げていく。これが息子たちの物語だ。

   そしてもう1つは、アポロ・クリード、ロッキー・バルボア、イワン・ドラゴという3人の父親の物語。彼らは、息子に対して次の2つを残すことになる。

   それは、自身の成し遂げた「偉業」。そして、自ら犯した「罪」である。その罪は「アポロの死」、「イワンの敗北」としてそれぞれ息子たちに受け継がれていく。これが父親たちの物語だ。

   このように本作は、アポロとイワンの遺した「罪」に突き動かされた息子たちのアドニスとヴィクターが、世界チャンピオンという「偉業」を求めてぶつかり合う「宿命」の物語であるのだ。

私の好きな場面

   私の好きな場面は、1つに絞り切ることができず今回は2つある。どちらも試合の場面であることは同じだ。

   1つは、世界チャンピオンの座をかけて戦った最初のアドニスとヴィクターの試合。そこでのボクシングシーンである。

   私は、この試合のカメラワークに随分とドキドキさせられた。なんと、アドニスの目線でヴィクターの殺人的なパンチを拝むことができるのである。ヴィクター・ドラゴのとてつもない強さを余すことなく観客に知らしめることに本作は成功している。

   特にヴィクターのパンチを喰らいまくるアドニス視点のカメラワークには、非常にゾクゾクさせられたものだ。このような、本作のリアリティを追求した究極のボクシングシーンには、思わず目を奪われてしまうことであろう。

   そしてもう1つは、ロシアのモスクワで行われたアドニスとヴィクターとの再試合。そこでの試合前のアドニスの入場シーンである。

   その中でも特に、ビアンカがアドニスの入場曲「I Will Go to War」を歌い、その歌と共にアドニスが入場してくるという演出には大いに感動させられた。その曲の歌詞がまた良すぎるのだ。観る者の心に響く素晴らしい歌であった。この曲を聴くだけで私は泣ける自信がある。それぐらい印象に残った場面であり、歌であった。

最後に

   前作よりも格段に対戦相手の境遇を深く掘り下げて見せてくれたので、本作はストーリーだけを切り取っても非常に見応えがあったのではないか。

   ボクシングシーンに関しても、シリーズ最高峰のクオリティをまた一つ更新している。アドニスとヴィクターの試合ほど、迫力のあるボクシング映画での試合を私は観たことがない。観ているだけでアドレナリンが溢れ出てくる。何せヴィクターの繰り出すパンチは、目を背けたくなるほど恐ろしい。記憶に残る名試合であった。

   だが、本作を観終わって、クリードの物語でやりたいことは全てやり切ったようにも感じた。なぜなら、アポロとロッキーが背負ってきた過去の遺産が、ようやく本作をもって清算されたからである。

   クリードの物語は、今まで「継承」、「宿敵」と進んできたので、次があるなら「譲渡」の物語であろうか。何とか上手くこの素晴らしい物語を綺麗に締めくくってもらいたいものである。続編が制作されるのならば、前作と本作の熱量をこのまま引き継いで突き進んでもらいたい。

予告編&特別映像

↓映画『クリード 炎の宿敵』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】ワーナーブラザーズ 公式チャンネル「映画『クリード 炎の宿敵』本予告【HD】2019年1月11日 (金) 公開」)

↓映画『クリード 炎の宿敵』の特別映像です↓

(出典 : 【YouTube】ワーナーブラザーズ 公式チャンネル「映画『クリード 炎の宿敵』特別映像【"ロッキー"から"クリード"へ編】2019年1月11日 (金) 公開」)

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