「ひたすら面白い映画に会いたくて」5本目『阪急電車-片道15分の奇跡-』
5本目:『阪急電車-片道15分の奇跡-』
『阪急電車-片道15分の奇跡-』(2011)
原作:有川浩 / 脚本:岡田惠和 / 監督:三宅喜重
「電車は今日も乗客たちの人生を運ぶ」
宝塚駅から西宮北口駅までのたった8つの区間である阪急今津線。「宝塚駅」を出発した阪急電車は、「宝塚南口駅」「逆瀬川駅」「小林駅」「仁川駅」「甲東園駅」「門戸厄神駅」の各駅に停車し、終点の「西宮北口駅」まで走り切る。そして折り返し。阪急電車は、再び「宝塚駅」まで戻っていく。この片道わずか15分そこそこの旅は、今日も乗客たちの小さな物語を乗せて走っている。このように本作は、阪急今津線に偶然乗り合わせた人々が紡ぎ出す物語である。
原作と多少の違いはあるが、本作は原作の良さを失わずに映画ならではの描写を巧みに用いながら、心温まる素敵なお話を観客たちに運んでくれる。2時間ぐらいの尺にあの素晴らしい小説の内容をよくぞあれだけギュッと凝縮出来たものだ。原作ファンも納得できる上手い脚本であったと思う。物語の冒頭で登場人物の紹介をしていくアレンジは良かった。これにより、観ているものは混乱することなく物語に集中できるようになるのである。
出演している俳優陣たちも、今から思えばかなり豪華であるなあと感じた。1人1人が原作の登場人物のイメージとほぼぴったりと重なり、違和感のあった役者さんはいなかったと言い切れる最高のキャスティングであった。
特に私が原作のイメージとぴったりだと思った人物は、翔子役を演じた中谷美紀と時江役を演じた宮本信子の2人であった。あの難しい役をここまで堂々と演じきることができるのは、おそらくこの2人しかいないであろう。納得の演技力であった。まだ本作を観たことがない人は、この2人のシーンをたっぷりと堪能してほしい。
戸田恵梨香や有村架純の関西弁が心地良かったのもいいところだ。さすが2人とも兵庫県出身だけある。やっぱり関西弁は関西の人が喋らないと少し違和感があるよね。2人とも可愛いし、ずっと観ていられるぐらい素晴らしかった。この頃の戸田恵梨香は本当に可愛いよ。
また宝塚ホテルの従業員役として大杉漣が特別出演している。この大杉漣が出てきた場面には、思わずテンションが上がって嬉しくなった。本当にわずかな時間の出演ではあったが、やはりいい味を出していた。この辺りは、さすが名バイプレイヤーであるなあ。
新しい作品でもう彼と出会うことができないと思うと悲しい。だが、過去の作品でいつでも元気な蓮さんを観ることができると思うと、悲しんでばかりもいられない。まだまだ観ていない作品が山のようにあるのだから。これからも映画の中で会いましょうね、蓮さん。
私の1番好きな場面
私の1番好きな場面は、とあるカフェでミサ(戸田恵梨香)の親友のマユミ(相武紗季)が、ミサの彼氏であるカツヤ(小柳友)の携帯電話を真っ二つにへし折り、お冷の中へと放り込む場面である。
この場面は、原作にはなく映画オリジナルの場面だ。原作を読んでいた私は、マユミは淡々とカツヤの携帯からミサのメールアドレスと携帯番号を消去するんだろうなあと思っていたのだが、まさかのマユミの行動に思っ切り吹き出してしまった。面白すぎるだろう。
マユミ役が相武紗季だったからこそのアレンジだと思うのは私だけか。相武紗季はああいう役が本当によく似合う。いやあ、相武紗季はやっぱりこうじゃなくっちゃ。彼女は友情出演にも関わらず、私にとって1番印象に残る演技をしてくれた。素晴らしい女優さんである。
最後に
本作は実際の阪急電車や駅で撮影を行っているので、小説とはまた少し違った楽しみ方ができるのが非常に良かった。阪急電車はびっくりするぐらい画になるなあと改めて思った。本作を観てすっかり私は阪急電車のファンになった。
小説を読んでも映画を観ても阪急電車に乗りたくなるのはもちろんのこと、特に阪急今津線に乗りたくなること間違いない。また、「宝塚駅」〜「西宮北口駅」間のどの駅に降りてみようかな?という楽しみ方もできる。私は「小林」で一度降りて散歩してみたい。そして本作の翔子のように「豚まん」を食べてみたいな。この映画は定期的に見返してもいい。純粋にそう思える素敵な作品であった。
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