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ヨーダの物語 15

 ジェダイ・アカデミーでは、剣術の稽古がおこなわれていた。イニシエイトに本物のライトセーバーを持たせての対戦は危険であるため、赤樫の木の棒を使っての稽古だった。
 剣術の訓練においては、ヨーダとギークはイニシエイトの中ではほとんど敵なしと言っていい状態だった。
 少年ヨーダは、低身長のハンデを埋めるためにも、身長の倍近くある長めの棒を使っていた。先輩のパダワンがダブルブレイドのライトセーバーを使っているのを見て、これだ!と思ったのだった。全身をつかって縦横無尽に棒を振りまわし、目まぐるしく跳躍し、相手に攻撃させる間もなく倒すのが戦法だった。
 一方ギークは、身長に相応した長さの棒を使っていたが、ヨーダとは対照的に動きに無駄がなく、精確に相手の弱点を見抜き、一分の隙もなく防御し打ちこむことができた。
 ふたりの剣術は、年長のイニシエイトやパダワンまでも凌ぐほどだったため、見かねた剣術専門の教授でありジェダイ・マスターであるライトニング教授が皆を呼び集めた。
「見てのとおり、ギークとヨーダは、剣術においては特にずば抜けている。これに異論のある者はいるか?いないな。どうだみんな、現段階でふたりのどちらが強いか、見てみたいと思わないか?」イニシエイトたちはざわついた。
 ヨーダとギークは、まいったな、という顔をして地面を見つめた。イニシエイトの生徒会長であるウーキー族のリャンガムが、うなり声をあげてみんなの同意を教授に伝えた。
 思いも寄らないいきなりの展開に、ヨーダは緊張した。ギークとは稽古で剣を交えたことは何度もある。しかし、お互い本気にはならなかった。ふたりとも、本気をだせばどちらか、もしくは双方がケガをすることがわかっていたからだ。
 これからイニシエイトを卒業し、ジェダイ・マスターの弟子となる“パダワン”への道がそろそろ見えてきているふたりには、どちらが強いかはっきりさせる時期が来たのかもしれない。
 ヨーダは覚悟を決めた。ギークの顔を見ると、だらりと軽く棒を持っているものの、ヨーダの眼を真正面から見据えていた。お互い、本気を出す覚悟ができたようだった。
「ふたりともいい面構えだ。そろそろ本気を出すところをみせてほしい」ライトニング教授はふたりの表情をみて微笑んだ。教授は、ふたりが今までイニシエイト相手に本気を出していないことを見抜いているようだった。
 ギークは、ヨーダの後方に目を向けた。ヨーダが気づき振り返ると、道場の2階部分のガラス越しにジェダイ・マスターがこちらを見ていた。もしかしたら自分たちの試合を見に来たのかもしれない。もしかしたら近い将来のパダワンを選びに来ているのかもしれない。そう考えると、ヨーダの緊張は一気に高まった。それはギークも同じようだった。
「どうやら心の準備はできたようだな」教授は皆にきこえるような大きな声で言った。
 ヨーダとギークを中心にして輪になったイニシエイトたちのざわつきはピタッと止み、道場は静まりかえった。それがふたりの緊張をさらに高めた。
ふたりは、赤樫の棒をそれぞれに構えた。

(ヨーダの物語 16につづく)