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ヨーダの物語 3

 体は白い布で覆われて頭らしいものが見えるが、あちら側を向いていて後頭部しか見えない。
 頭の左右に、鳥のように広がる大きな耳(に見える)が特徴的だった。ゴンはおそるおそる緑色の生き物に近づき、回りこんだ。
 それはあぐらをかいて地面に座り、小さな両手に真っ赤なラディッシュをひとつずつ持っていた。黒眼がちというよりほぼ真っ黒い眼でゴンをじっと見あげ、右手のラディッシュをパクリと口に入れてモグモグし、それを飲みこんだかと思うと左手のラディッシュも口に放り込んだ。
 (こいつがおれの野菜を食っていたのか・・)長い咀嚼のあと飲み込むと、緑色の生き物は四つん這いになり地面に転がるほかのラディッシュを目指した。
 ハイハイをする様子をゴンは半ば見とれるように眺めていたが、ハッと我に返り慎重にその生き物を抱きあげた。
 「ふまっ。ふまっ」とその生き物は声を出し、ラディッシュの方へ手を伸ばした。
 「おまえ、これが好きなのか」ゴンはつぶやいた。生き物を抱いたまま地面に転がるラディッシュひとつを拾い、そっと手渡した。生き物は3本の指でそれをつかみ、口に運んだ。
 「おまえどこから来たんだ?母ちゃんは?」
 緑色の小さな生き物はゴンの言っていることがわからないらしく、大きな眼をぱちくりさせながら口をモグモグしていた。
 「とにかくこいつを返さないといかん」
 ゴンは生き物をそっと地面に置き、そこらじゅうに転がった野菜を集めてトラックの荷台に積んだ。
 生き物を抱き上げ、野菜を運んできた貨物船へ向かったがもう遅く、次の星へ発ってしまっていた。
 ゴンは途方にくれた。太陽はほとんど沈みかけている。
 生き物を放置するわけにもいかないので、とりあえず生き物をトラックの助手席に乗せ(うんちとかしないだろうな?)、自分はトラックの外でパイプをふかして考えた。外からそっとトラックの助手席を見ると緑色の生き物は仰向けですやすやと眠っていた。頭の横についた大きな耳は、居心地よさそうに垂れている。ゴンはしばらく考え、意を決した。
 とりあえず今日のところは家に帰ろう。こいつの親さがしは明日やろう。
 ゴンはパイプの吸い殻を地面におとし、運転席に乗りこみ、すやすやと眠る生き物を起こさないようにそっとドアを閉め、エンジンをかけてゆっくりとアクセルを踏んだ。

(ヨーダの物語 4につづく)