
ヨーダの物語 28
「どうやら五人いっしょに石を探すことはできないみたいだな」
ギークは立ち止まって言った。洞窟はニつの道に分かれていた。
「みんな仲良く同じ方向に行って怪物がいたら、五人とも食われて終わるかもしれない。ここからは自分のフォースを信じて決めよう」
ギークは右の方へ進むと、ほかの四人ともあとに続いた。すぐ先に今度は三つの分かれ道があって、ギークは真ん中を選ぶと四人もついて行った。すぐにギークは引き返し、左の穴へ入った。また四人ともついて行った。
「おいおい頼むぜ!おまえら自分の意思ってものがないのか!?自分のフォースを信じて進んで行けよ!ついて来るな!」
ギークは、らしくなく怒鳴った。声が洞窟の中で大きく反響した。
「だって怪物がどこかにいるかもって考えるだけで怖いんだもん。食われた人もいるんだろう?」
コウズが大きな体に似合わず小声で言った。
「怪物が怖くてジェダイになんてなれるか!シスはもっと怖いぞ!おれはここにいるからお前らは先に行け!おれはあとから自分で道を選ぶ!」
そこで遠くの方から『ウオーン・・』という獣の遠吠えのような声が聴こえてきた。
「まさか今のって・・!?」
いつもはすまし顔をしているムウンのアマネも、さすがに震えながらつぶやいた。
「ギークが叫ぶからだぞ・・」
コウズが小声で恨み言をいった。
皆しばらく沈黙していると、遠吠えは一度きりでもう聴こえなかった。
やっと四人は覚悟を決め、進むほどに枝分かれしていく洞窟を、自らのフォースを信じて自分だけのカイバー・クリスタルと出会うために進んでいった。
そしてとうとう五人はバラバラになって、ヨーダはひとりになった。
カイバー・クリスタルとヨーダの間にあるフォースに意識を集中し、石へ向かって自分は進んでいるのだと信じるしかなかった。
枝分かれはどんどん続き、果たしてこれから石を見つけられても、自分は無事に帰ることができるだろうかと、不安になってきた。
石から遠ざかったという感覚は無かったから、まちがった道を進んでいるわけじゃあないと思ったが、かと言って近づいているという感覚もなかった。
ガンヌ教授は、いつまでに帰って来い、という指示はださなかった。もし石が見つかる前に怖くなって心が折れたり、時間がたって飢えたりして戻ってしまった場合には、再チャンスはあるのだろうか?答えはノーである気がした。
ただでさえライトセーバーを作るためのカイバー・クリスタルを探すこの合宿に参加できることさえ、ほんのひと握りのイニシエイトに限られている。
もし探すことができなかったら、その場でアカデミーを退学しなければならないかもしれない。とすればジェダイになる道は絶たれることになる。
ヨーダの心は不安で押しつぶされつつあった。早く石を見つけて家に帰って母さんに会いたい。自分だけのカイバー・クリスタルを見つけたよ、と父さんに墓の前で報告したい。
(ヨーダの物語 29へつづく)