ヨーダの物語 35
ジェダイ・アカデミーではイニシエイト達がライトセーバーを振るっていた。さすがにライトセーバー同士での対戦はケガではすまないので、みな、型や素振りをしたり、フォース訓練用の、浮遊するボールから低出力のビームが出てくる『リモート』を相手に目隠しをしてそれを避けたり光刃で受け止めたりしていた。
木刀を使った稽古では、やはりヨーダとギークはほぼ互角だった。だが、一部のジェダイ・マスターや教授は気づいていた。ヨーダはギークを相手に本当の本気を出していない、友人に遠慮している、と。
それはギークも気づいていた。しかしギークは巧妙に「気づいていることをヨーダに気づかせない」ようにふるまっていた。
イニシエイトの卒業は近づいてきていて、いよいよパダワンになり、師となるマスターのもとで修行を始めることになる。
来月には、ふたりのジェダイ・マスターがジェダイ・テンプルからやってきて、ずば抜けた才能のイニシエイトであるヨーダとギークを、パダワンとして迎えにくることになっていた。それはふたりにとって、故郷であるジャクーと家族から離れることを意味する。
ヨーダにとっては、ジェダイへとつながるパダワンになれることが嬉しくもあり、同時に母ロザリータと別れることは悲しいことでもあった。
ロザリータも、息子ヨーダと別れることは堪えがたいことだったが、そのそぶりを決してヨーダには見せなかった。
その頃、ジャクーでは不穏な噂が広がっていた。足を踏み入れたら必ず谷底へ落ちて生きては出られないと言われる巨大な渓谷、『デス・バレイ』に、昔シスだった男が住んでいる、というものだった。
その男は、数十年前に自らのマスターを殺そうとして失敗し、命からがら船でその渓谷へ逃げ、身を隠して自分自身を冷凍保存し眠ったという。そしてこの数ヶ月で冷凍保存から目覚め、月に一度くらい渓谷から出てきて人間をさらって不死の実験に使ったり、喰ってしまうと言われている。
最近だけで数名の人間が行方不明になっており、『元シス』のしわざだろうと噂されていた。
人間であるギークはとても恐れていた。病気がちである姉とふたり暮らしをしていたからだ。
(ヨーダの物語 36 へつづく)