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ヨーダの物語 90

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
 ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星へ到着し、フォースとは何かを学んでゆく!


 「今回も特別に手本を一度だけ見せてやろう」
 四つの球のうちの一つが浮いて前に出てきた。そして近くにある、グラドゥの背の高さほどの岩に青いビームが発せられ、岩に穴が空いた。そこからは煙があがり、あたりには焦げた匂いが漂っていた。えっ?とヨーダは言葉を失った。まさかこれで訓練をしろと?グラドゥは自分に死ねと言っているのだろうか?
 「このビームを木の棒での受け止めたらさすがに木と体が吹っ飛んでしまう。だからライトセーバーの使用を許可したのじゃ。まあ見ておれ」
 グラドゥが前に進むと、金属の球四つは前後左右にグラドゥを取り囲んだ。グラドゥは杖を縦にもった。まだライトセーバーを起動していない。
 「グラドゥ、これを使うのは何回目ですか?」
 「ん?いまが初めてじゃよ。試しにやってみようかと思ってな」
 ヨーダの緊張は高まった。いくら伝説のジェダイ・マスターであるグラドゥとはいえ、もうかなりの老人で、体の動きも衰えているだろうし、もし一発でもあのビームを食らったら命は無いだろう。
 「結局、敵の撃ってくる弾の威力は致命傷なのだから、最終的にこれに慣れるしかないんだよ」
 球の一つがビームを発射した。グラドゥは目にも止まらぬ速さでライトセーバーを抜くと、ビームはライトセーバーに跳ね返され、発射した球に当たりそうになったが、球にはシールドがあり、吸収された。 
 「ビームをいくらこいつに跳ね返しても壊れることはない。もし変なところにこのビームを跳ね返したら森を傷つけることになるから、確実にすべてのビームを球に跳ね返すこと。いいね?」
 「・・わかりました」
 ヨーダは唾を飲み込んで応えた。その瞬間、四つの球がランダムに動き回り、一斉にビームの連射が始まった。グラドゥは体を回転させながら光刃を振り回し、そのすべてがビームを跳ね返し、球のシールドに当たっていた。光刃は黄色の残像を残し、美しい曲線を描いていた。グラドゥの動きは全く力むことなく、まるでダンスでも踊っているような優雅さだった。それはいつもの腰を曲げて杖をついているおばあさんとは似ても似つかないものだった。強いということは、美しいことでもあるんだと、ヨーダはグラドゥの動きを見て思った。やがてビームは発せられなくなり、四つの球からはビームによる硝煙があがっていた。グラドゥは動きを止め、ライトセーバーを納めて杖をついて、ふぅ、と息をついた。
 「あんまり使うと機械がショートしてしまうからこのくらいにしておこうかね。さあ、あんたの番だよ。いきなり四つだと可哀想だから、二つにしてあげるよ」
 ヨーダはまた唾を飲み込んだ。(この人は本気か?いまの自分にあんなことができると思っているのか?今までだって少しかするくらいのことはざらにあった。でもチクリと痛いだけでなんとかなったけど、今度のビームはかすっても大ケガ、まともに当たったら本当に死ぬぞ・・。でもやるしかない。この訓練をクリアできなければ到底ギークに対抗できない。できるかどうかをあれこれ考えてもしょうがない、やるんだ。心を宇宙全体に解き放ちながら、すべての意識を四つの球の動きとビームに集中するんだ)
 ヨーダはいつものように頭に布を巻き、ライトセーバーを起動させ、両手で斜めに持った。地面を向く青い光刃は、森の地面をジリジリと焼いた。二つの球はヨーダの周りを時間をかけてゆっくりと旋回した。まるで獣が、獲物をどう捕えようかとその動きを探るように。
 ふいに球からビームが発せられると、ヨーダのライトセーバーは少しだけ角度を変え、最小の動きで跳ね返し、球のシールドに当たった。そこから一気に二つの球からの連射が始まった。ヨーダは青と緑のダブルブレイドを体が全体を使って振り回した。それはデタラメな動きではなく、すべての動きを無駄なくビームに当て、しかもそれらを球へ跳ね返さなければならなかった。
 球の動きは速くなっていき、発せられるとビームの数も少しずつ多くなっていった。球の速さが増せば、ビームを跳ね返す時にはすでに球は移動しているので、その動きを読まなければならない、動きのほんの少し先を。
 時に球はビームを発した直後に木の陰に隠れてしまうこともあり、その時はとっさにもう一つの球に当てるか、それが無理なら真上に跳ね返すしかなかった。上に跳ね返したら木の枝などが落ちてきて、(森とグラドゥ、ごめんなさい)と心の中でつぶやいた。

 ヨーダがだんだんと二つの球に慣れてきたころ、金属の球とは別の、丸い何かの動きをフォースによって感じた。一瞬グラドゥがもう一つの球を増やしたかと思ったが、勘違いだった。それは木から木へと飛び移り、地面を走っていて、フォースによって体温を感じた。ヨーダの頭より少し小さいくらいの丸い動物のようだった。

 (ヨーダの物語 91へつづく)