ヨーダの物語 125
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスター数名を殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星で修行し、ついにギークとの死闘の末、決着がつく。その後、少年ヨーダは・・!
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グラドゥの住む星では、グラドゥが家の横にある畑を、背中を丸めて耕していた。そのまわりをQQ11が四つ足で駆け回っている。
「ふう、そろそろ昼ごはんにしようかね。おいあんた、遊んでばかりいないで、ヨーダとゴンを呼んできておくれ」
グラドゥが首にかけたタオルで顔の汗を拭きながら言うと、 QQ11はグラドゥの顔を見上げた。
「なんだい、フォースの声を使えば迎えにいく必要はない?このトンチキっ!昼ごはんに呼ぶくらいでフォースを使うもんじゃないよ!バチが当たるわ!」
四つ足の小さいドロイドは森の方へ駆けて行った。
グラドゥは、森の方を眺めてつぶやいた。
「もう教えることは無いって言ったのに、まったく、どうして戻ってきたのかね・・。ほんとうに修行が好きな子だよ」
ジェダイ・マスター、グラドゥは鍬を置き、杖をついて家の中に入っていった。
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夜、ジャクーでは満天の星空が見えていたが、その中でも一際輝く星がジャクーに近づいてきた。あたりはゴゴゴ・・と音が響き、大地が揺れだした。
ひとつの小さな影が、岩の崖をトコトコと登っていった。横に広がる大きな耳と、黒目がちな大きな瞳を持ったそれは、緑色の赤ん坊だった。
岩のてっぺんまで着くと、赤ん坊はジャクーに近づいてくる巨大な隕石を見上げた。隕石はどんどん迫ってついに大気に触れ、目もくらむほどの明るさになった。地響きは大きくなっていく。
「ヨーダ!ヨーダ!」と必死に叫ぶ声が遠くから聞こえ、その声は少しずつ近づいてきたが、地響きの音にかき消されてしまう。
巨大な隕石がジャクーに衝突するのは避けられないようだ。赤ん坊の大きな瞳に、大気で燃える巨大な隕石が大映しになった。
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QQ11が森の中に入ると、いつもヨーダが修行しているところへ一直線に駆けていった。そして巨大な白いモコモコの毛の中に飛びこんだ。毛むくじゃらの中でひとしきりあばれて遊び、やっと地面に落ちると、QQ11は顔を上げた。
目の前には家ほどの大きさもあるような丸くて白い綿毛の生き物がいた。からだの真ん中の毛の奥に、黒くてつぶらな瞳が二つわずかに見える。それを初めて見た者は、ほんの数ヶ月前まではQQ11と同じような大きさの動物だったとは思いもよらないだろう。大きく成長したミルクボール(ヨーダの父親と同じ、ゴンと名付けられた)に、QQ11は再びダイビングした。これが最近の彼らの遊びらしい。
ゴンはQQ11を毛の中に入れたまま歩いた。QQ11はゴンの鼻先に乗って顔を出し、森の中央の陽のあたる広場を見た。
そこにはあぐらをかき、宙に浮くヨーダの姿があった。グレーの髪は、以前より長く、襟足は後ろで結んでいる。真剣な表情で眼を閉じ、両手を胸の前で固く組んでいる。両手に力が入り、震えるとまわりの小石や落ち葉や昆虫たちが浮きはじめ、しまいにはゴンたちまで浮きだした。ゴンは動揺して四肢をバタバタさせた。
ヨーダの組まれた両拳はなおも震え、力を溜めているようだ。依然眼は固く閉じられている。
その手が解放され、左右に離れた瞬間・・
緑色の赤ん坊の二つの瞳に、真っ二つに割れた隕石が左右に離れていくのが大きく映った。
割れた二つの隕石は、爆風とともに、地面スレスレを通り過ぎ、宇宙空間へ出ていった。
轟音とともに、爆風で砂ぼこりが舞い、赤ん坊は眼を細めた。
「ヨーダ!こんなところにいたのか!」
育ての父親であるトワイレックのゴンが、泣きながらヨーダを抱きかかえた・・
宙に浮くジェダイ・ナイト、ヨーダの両腕は大きく左右にひろげられていた。
パッと目を開け、得意そうにニヤリとした。
(ヨーダの物語 おわり)