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ヨーダの物語 12
ふたりは、ワープの存在自体は知っていたが、映像とはいえそれを見るのは初めてで、まるで操縦席に乗っているような気分だった。
「これがハイパースペースじゃ」シューマ博士は得意げに言った。
ヨーダは、モックが立体映写した空間に近づき、ハイパースペースの鮮やかな青と白と黒のコントラストに見入っていた。映像がヨーダの大きな瞳に弧を描いて反射していた。
突然、映像は黒い宇宙空間と無数の星々の線となり、リアルスペースに移行した。目の前には巨大な星。円や直線など幾何学的な模様が星全体にちりばめられている。どう見ても自然にできた模様ではない。
「惑星コルサントに到着したぞ」
「これがコルサント!!」ヨーダとギークは顔を見合わせた。これが教科書でしか見たことのない銀河の中心であり最も繫栄した都市、ギャラクティック・シティが地表全体を覆う、人口100兆人ともいわれる惑星!ヨーダは教科書で得た知識を心のなかで叫んだ。
コルサントには、ヨーダが今まで見たことのあるすべての船を足してもたりないくらいの数の船が行き交っていた。これだけの数が飛んでいてよくぶつからないものだと感心した。
ふたりとも地の果てまでつづく巨大都市に興奮していた。
「おぬしらはジェダイ・イニシエイトじゃったな?」
ヨーダとギークは映像に釘づけになりながらうなずいた。カメラはどんどん進んでいき、やがて特徴的な5つの塔が見えた。ヨーダは目を大きく開いた。
「ジェダイ・テンプル・・」
そこは、銀河全体に点在するジェダイ・テンプルの総本山で、数多くのジェダイ・イニシエイトが、ジェダイの騎士となるためのアカデミーがあり、さらにジェダイ・マスターの集まるジェダイ最高評議会があった。
ジャクーのジェダイ・アカデミーの授業で、教科書で見たり教授の話を聞いたりしかしたことのない、ジェダイ・テンプルが、映像ではあるが目の前にあった。自分もいつかあそこへ行きたい。ヨーダとギークにとってずっと憧れの地だった。
「さすがに中に入るわけにはいかんから、これくらいの遠さで勘弁してくれい」
シューマが言って、円盤がジェダイ・テンプルのまわりを一周すると、再び上昇を始めた。大気圏を抜け、宇宙空間へ。そしてワープし、あっという間にシューマの工房に戻ってきた。
出発したテーブルに戻ってきたころには、機体からシューシューと音がし、煙が上がっていた。ふたりは今もなお夢見心地だった。
「おつかれさん、ファルコンちゃん」シューマ博士は円盤を軽くなでた。「熱っつー!」シューマは手をビクッと引っ込めてとびあがった。円盤はハイパースペースや大気圏を経た長旅で熱々になっていた。それを見たヨーダとギークは転げまわって笑った。
「ハイパードライブをここまで小型化できるのは、この広い銀河の中でもわしくらいなものじゃろう」老博士は気を取りなおしてつぶやいた。
「昔は共和国の研究リーダーもやっていたんですよね?」ギークが問うた。
「遠い昔の話じゃな。その頃はヒュイヤン教授と切磋琢磨してやっとったわ」老博士は遠い目をしてつぶやいた。
「ヒュイヤン教授!」今日は驚くことばかり起こる。「あの、ライトセーバーのアーキテクト・ドロイドですよね?ジェダイを目指す者で知らないひとはいませんよ!」ギークは青い目を輝かせてしゃべった。
「本人の前でドロイド、って言ったら怒られるぞぃ。かなりな長生きで、プライドも高い。わしの生まれるだいぶ前からライトセーバーを作っとるからの、ほとんど動く化石じゃよ。まあ、おぬしらも自分のライトセーバーを作るようになったら会えるわい」
「ライトセーバー、早く作りたいなあ。どんなものができるかなあ」
ヨーダは想像しただけで嬉しくなって、ライトセーバーを持ったつもりで跳びながら素振りを縦横無尽におこなった。
(ヨーダの物語 13につづく)