ヨーダの物語 119

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
 ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星で修行し、ついにギークとの死闘の末、決着がつく・・!

 『・・おれはもうすぐ死ぬ。・・その前にやってもらいたいことがある。もうすぐレイゴウがこの星にやってくる。すでにおれが負けたことを感じてるはずだ。・・その前にあの研究所にある研究データをすべて破壊してほしい』
 ギークはフォースの声を振り絞った。彼の眼からは、それまであった怒りの炎のようなものは消えていた。
 『その前におまえを助ける!医療ドロイドくらいあそこにあるだろう?』
 『いや・・もう間に合わない。そのくらいは自分でもわかる。それにおれは・・取り返しのつかないことをしてしまった。・・なあヨーダ、レイゴウが来る前に、頼む』
 『・・わかった。場所さえ教えてくれたら、おれが今フォースで・・』
 『ダメだ・・レイゴウはあの要塞全体に、フォースを通さないシールドを張っている。直接行かなければ・・』
 レイゴウは研究データを探られたり、機材を破壊されたりなどを防ぐためにフォースを通さないシールドを作ったらしい。
 「QQ11!!」
 ヨーダは空を見上げて叫んだ。すぐにQQ11とミルクボールの乗ったホバーボードがやってきた。ヨーダはそれに飛び乗り、最高スピードで要塞へ向かった。雷は、疾走するヨーダの近くを落ち続けたがそんなものはお構いなしだった。

 ダークサイドから戻ったギークの願いを叶えるために、みんなの命を守るために、研究データを破壊することだけを考えた。
 『ギーク、死ぬなよ・・。データを破壊したら必ずおまえを助けてやる!』
 ヨーダは研究データの破壊後、医療キットか医療ドロイドを見つけてギークのところまで運ぶつもりだった。ギークを運ぶことも考えたが、ギークの傷は深く、下手に運んで容体を悪化させたくなかった。
 『ヨーダ、早く・・!レイゴウが近づいてくるのを感じる。もうすぐでハイパースペースを抜けてくる!』
 フォースの声でギークは必死に叫んだ。自分の命よりも、研究データの破壊のみを考えていた。ヨーダは涙が止まらず、それは風に飛ばされていった。とうとうヨーダは要塞に到着し、ホバーボードに乗ったまま中へ入ると、ギークのフォースの声は途中で消えた。
 研究室の分厚い扉があり、ヨーダはホバーボードを降りて、ギークに教えてもらった暗号キーを入力して扉を開けた。ヨーダが部屋に入ると、自動で灯りがついた。ほとんど白で統一された空間でまぶしく、ヨーダは目を細めた。
 『ギーク、聞こえるか?』
 ヨーダはギークにフォースの声で話しかけたが、返事は無かった。この施設は、フォースを通さないシールドが張られているのでフォースの声が届かないとは聞いていたが、ギークがもう息絶えてしまったのではないかと不安になった。急がねばならない。
 モニターやドロイドの試作品の上半身や、巨大な円柱型の水槽に、ギークとの戦いの前に倒したドロイド兵のリーダー(生き物とドロイドのハイブリッド)のクローンと思われるモノが何体も管に繋がれて浮いていた。
 ギークから聞いていたフォースの声を思い出した。
 『中央に大きなマシンがある。キーボードに暗号キーを入力して、ディスクを取り出してくれ』
 ヨーダはディスクを取り出し、それを宙に投げ、ライトセーバーで一気に切り裂いた。ヨーダはまわりのマシンをダブルブレイドで次々に破壊したあと、研究室に置いてあった医療キットを背負い、扉を出た。
 ヨーダは要塞の出口に走り、待機していたホバーボードに飛び乗って要塞を一気に出た。
 『ギーク!やったぞ!ギーク!聞こえるか?』
 フォースのシールドの影響が無いところまで来てヨーダはフォースの声で叫んだが、ギークの返事は無かった。
 (くそっ・・もうギークは・・!)
 もっとスピードを上げようとした瞬間、何かに首を掴まれ、体がホバーボードから離れてしまった。
 あまりに突然だったので、身体に心がついていかず目がくらんだ。何が起きたかわからなかったが、冷たい手のようなモノで首根っこを掴まれていた。直感的にレイゴウのフォースだと思った。フォースに温度があることを知りゾッとした。

 (ヨーダの物語 120へつづく)