ヨーダの物語 110
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。その後ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
ヨーダは、師匠となるグラドゥの住む星でフォースとは何かを学び、ついにギークのいる稲妻の星、ザンダーへ到着し、ギークとの戦いが始まった!
ヨーダは黙ってギークの話を聞いていた。(まさかあのギャザリングの時に赤い石を手に入れていたなんて・・信じられない。あの時からすでにギークはダークサイドに片足を突っ込んでいたということか・・。そしてこの長い話も、ダークサイドへ誘う過程の一部なのか・・?)
「ドロイド兵との戦いは見事だった。おまえを殺したあとコルサントへドロイド兵を送るつもりだが、やはりドロイド兵一体一体にシールドを装備することにしたよ。ジェダイには飛び道具を使っても跳ね返されてしまうからな。シールドの改良が終わりしだい、コルサントとジャクーを攻めることになっている。ジャクーにはジェダイアカデミーもあるからな」
ギークはヨーダを見据えて言い放った。
「ジャクーだと?自分の故郷まで攻撃するのか?」
「ジェダイの芽は最後のひとつまで摘む必要がある。たったひとりの家族である姉も死んだ・・。もはやジャクーに思い入れはない。レイゴウと達成する、全宇宙の支配という目的達成のためにはな」
「宇宙の支配はレイゴウのやりたいことだろ?おまえのやりたいことは、自分がこの世で最も強い者だと証明することだって言ってたよな?ギーク、おまえはたぶんもう誰よりも強いよ。ジェダイ・マスターをあれだけ倒したんだ。もうそれで充分だろ?」
「強さというものは不思議なものだよ。強くなればなるほど満足できなくなり、さらなる強さを求めてそれを証明したくなるんだ」
「ギーク・・それこそがダークサイドそのものなんだ」
ふたりは十メートルほどの距離を保ったまま立ち、睨み合うかたちで沈黙した。
(ギークは本気でジャクーまで攻撃するつもりか?アカデミーの仲間ーーコウズやチャオや、アマネなどーーもいま住んでいるんだぞ。ほかにも幼馴染やアカデミーの先生もいる。それなのに・・)
ヨーダはギークから出る『意志の糸』に集中した。コルサントへ伸びる糸が最も太く、そればかりに囚われていたが、もう一本糸はでていて、その糸の先に意識を集中すると、それはジャクーへと伸びていた。なぜ今まで気がつかなかったのだろう。ギークは銀河中のジェダイ、パダワン、未来のジェダイになりえるイニシエイトの子供たちまで全員殺すつもりだ。なんとしてもギークをここで食い止めなければ・・。母さんを、みんなの未来を守らなければならない)
ギークは再びゆっくりとヨーダに向かって歩き出した。と思った瞬間、間合いはつまっていてヨーダはハッとした。
(いま跳んできたか?いや、一瞬姿が消えてまた現れたように見え)ヨーダの目の前に赤く太い光刃が横一文字に迫ってきて反射的に後ろにのけぞり、ギリギリでよけることができた。光刃は顔のすれすれをかすり、鼻に熱を感じるほどだった。数ミリ先に、間違いなく死が見えた気がした。ヨーダはのけぞった勢いを活かして片手でバック転し、着地と同時にダブルブレイドを起動し、ギークへ跳んで反撃を開始した。
(ヨーダの物語 111へつづく)