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ヨーダの物語 13

「シューマのじいさん、この"ファルコンちゃん"以外に、今までアイデアはあったけど実現できてないものってあるかい?」ギークはテーブルに乗り出して訊ねた。
 ギークは身体能力やフォース、学力などどれもイニシエイトの中でトップクラスだったが、特に電気工学の分野ではずば抜けていて、教授や共和国の技術者を驚かせた。
 将来はジェダイではなく、共和国の研究機関に就くようすすめる教授もいた。
「いい質問じゃ。それこそたくさんあるわい。今パッと浮かんだ中でインパクトのあるものちゅうたら、これかの」
 シューマ博士はデスクのキーボードをちゃちゃっと打つと、ホログラムが出てきた。丸いものがゆっくりと回っている。表面には幾何学模様が無数にあるので一瞬さきほど見た惑星コルサントかと思ったが違った。
 模様はコルサントほど細かくなくシンプルだ。また、北半球には大きなクレーターがあり、ヨーダもギークも見たことのない星だった。
「まあ、あくまでコンセプトじゃな。細かいところまでは設計しとらんが、これを実際に建築するには数百年はかかるじゃろうて。現代の科学技術では到底作れん。これがもし実際に作られる時には、ドロイドのヒュイヤン教授はともかく、わしはこの世にはおらん」
「これは、もしかして人口の星ですか?それも、とてつもなく大きい・・」ギークは目をうつろにさせてつぶやいた。
「ご名答。しかしただの星ではないぞ。人の住める星であり、同時に要塞でもある」
「このクレーターは何です?」ヨーダがホログラムの北半球を指さして訊いた。
「この星最大の兵器じゃ。それから発せられるレーザー砲は、おそらく銀河一・・惑星ごと破壊できるほどじゃ」老博士はうつむき加減で応えた。
 ふたりは驚愕した。星ごと破壊できる兵器が、理論上とはいえ本当にありえるのか?
「そんな、とんでもない量のエネルギーをどうやって出力し、集約させるのですか?」ギークはいつのまにかアカデミーの教授に質問するように真剣に訊いた。
「ジェダイの使うライトセーバーの動力源は当然知っておるな?」
「クリスタルカイザーです。まさか・・」
「その通りじゃ。巨大なクリスタルカイザーを集めてそのエネルギーを一点集中しレーザーに変換することができれば、それは惑星をも破壊しうる。
 自分でもよくわからないことがある。なぜわしは、若い頃のわしは、こんな恐ろしいものを思いついてしまったのか。そして、科学者の性(さが)なのか、いちど思いついてしまったらそのアイデアの実現可能性を行きつくところまで突き詰めてしまう。
 時に科学者は、研究者は、取り返しのつかない罪を気づかぬうちに犯してしまうことがある。今では自分への戒めとしてこのデータを保存している。
 なぜか今日ははじめて他人に見せてしまったよ。反省、反省・・」
 シューマ博士は珍しく長く話し、少し寂しそうにホログラムを閉じた。

 ヨーダとジークは、ホバーボードに乗って家路へ向かった。
 シューマ博士のところで見たものや教わったことの情報量が多すぎて、ふたりは言葉も発さず無表情で風を切って走行した。
 そしていつもの別れるポイントにつくと、お互いアイコンタクトだけしてそれぞれの家へ帰っていった。

(ヨーダの物語 14へ続く)