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ヨーダの物語 39
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通う、ジェダイ・イニシエイト。人間をさらって喰うと言われる『元シス』を倒すため、親友ギークと元シスの住む死の渓谷の奥深くへ降りていったが、先手を取られギークが襲われる・・
「ギーク!!」ヨーダが叫ぶ。
ギークは青い光刃でなんとか相手の攻撃を受け止めたが、相手の、それこそ体重と加速度のついた太刀を受けとめきれず、ホバーボートから転落した。
ヨーダはとっさに手をかざしてフォースを使い、ギークが地面に叩きつけられるのを防いだ。襲われた地点は、想像以上に地面に迫っていた。
ギークのライトセーバーとホバーボートは、地面に叩きつけられ遠くへ飛んでいった。ギークは無傷でなんとか意識はあるようだったが、倒れたまま起き上がれずにいた。そのそばに、『元シス』と思われる男が着地した。
ヨーダもホバーボートから飛び降り、地面に着地した。元シスとは、10メートルほどの間合いがあった。
元シスの男は、赤い光刃をおさめ、つぶやいた。
「大丈夫だよ。ここには毒ガスは無い、ほらね」
男は倒れたギークに近づき、マスクを外した。ギークは気を失っているらしい。微動だにしなかった。
「なにをするっ!」
ヨーダは男に飛びかかり、ダブルブレイドを振るった。
「おほっ」男は声を出し、その攻撃をよけた。ヨーダと男にはふたたび間合いができた。
「ダブルブレイドか・・、体が小さいからいい戦略だね」
元シスは大きな目を見開きながら言った。その男は人間で、肌は灰色と紫色を混ぜたような色。長身で痩せ細り、顔だけ見ると中年に見えるが、肩まである髪は真っ黒で艶があり、おかっぱ頭だった。顔の右側に痛々しい大きな古傷があり、きれいに切りそろえられた前髪の下からのぞく眼光は鋭く瞳は赤かった。くまがひどく、目のくぼみはドス黒かった。
噂通りならシスの修行途中で逃げ出したらしいが、初めてダークサイドのフォースの使い手と対峙し、ヨーダはライトセーバーの切っ先が震えないようにするのに必死だった。
「ガスマスクは外して大丈夫だってば。外して顔見せなさいよ、ほら」
男はいきなりヨーダとの間合いをつめ、赤い光刃で横一文字に切りこんできた。
ヨーダはとっさに体を後ろにのけ反らせ、なんとかそれをよけたが、ガスマスクの上面が斬られ、外れてしまった。
「ほらね」
男はニヤリとして言った。
たしかに吸い込む空気は地上と比べて湿ってひんやりしていたものの、苦しくはならなかった。
ヨーダは両手でライトセーバーを構えた。
「しかしやるねぇ。私の攻撃をよけるなんて。並のジェダイなら今ので首が飛んでいたよ。君たちはジェダイ?・・にしては若すぎるねえ。パダワンかい?マスターはどこにいる?」
「まだマスターはいない。あんたの知ったことではないだろ」
ヨーダは震えそうになる声をぐっとこらえて、強気に相手を睨みつけながら言った。
「君たち!パダワンにもならない、イニシエイトかい?!これは驚いた!私を退治しに来たのが、まさかイニシエイトの坊やたちとはね!私もジェダイに舐められたものだ・・。しかし、ふたりともイイもの持ってるよ。名を聞いておこう、君の名は?」
「ヨーダ」
ヨーダはぶっきらぼうに応えた。名前をききたいならまず自分から名乗るべきだろうと思いながら。
「私はツキシマという。私の名前も覚えておくがいい。近い将来、我が憎っくき師を倒して銀河を支配するつもりだから」
(ヨーダの物語 40につづく)