ハゼノキが創り出す灯り④ 演出照明としての和蝋燭
みなさんこんにちは。4回目になる「ハゼノキが創り出す灯り」シリーズ。前回、前々回が今回のテーマのメインですが、今回はその反省回です。
そんな前回は、江戸落語の再現寄席の舞台設計と照明演出の面から振り返ってみました。山中醤油さんによる素晴らしい舞台装置と桂伸衛門さんの落語をがより映えていたのであればとてもうれしい限りです。江戸落語の再現を重視しつつ、心ばかりの演出を付け加えてみました舞台裏を紹介した前回の記事はこちら!
今週はそんな江戸落語の再現が終わってからの反省点や、和蝋燭の特性そのものを考えた演出の仕方や向き、不向きに関していろいろと書いていこうと思います。個人的な反省点も結構多かったのですが、やってみるともっとチャレンジできることや、面白い演出などアイデアがたくさん浮かんできます。文化的な再現のその先へ、「灯り」として和蝋燭を魅力的に演出するにはどうすれば良いのか?この先も考えていきたいと思います。
■和蝋燭の「灯り方」を紹介します
最初に和蝋燭の灯りとしての特性を考えてみます。今回の特性は色温度や演色性、輝度や照度といった特性ではなく和蝋燭の「灯り方」の特徴をいったん整理していきます。各行の名称は私の思い付きです。よさげな名前がありましたら是非ご意見ください!
1,通常の状態
和蝋燭の通常状態です。炎が大きさと1/fといわれる独特の揺らぎが特徴。
2,糸引き
糸を引いたように炎が長細くなる状態。空気の流れが安定していると定期的に現れくれます。揺らぎの幅が極めて小さく、炎全体でゆったりと揺れます
3,残り火
糸引きの状態から先端の炎を残して元に戻る状態です。炎を飛んでいるように見えますが、連続して見てみると実際には糸引きからの残り火です。
4,舞い(うまく再現できなかったので別の蝋燭です)
揺らぎの一種ではありますが、先端の方が炎が大きくなったり、独特の形状と独特の炎の軌道が特徴です。大きなサイズの和蝋燭だと観測しやすいです。
5,瞬き
1~3の状態が短時間で連続する状態です。サイズの小さい和蝋燭でよくみられる通常の瞬きです。チカチカする状態です。(添付の動画は画面がちらつくので視聴の際はご注意ください)
6,狐火
炎の塊が打ち上げられるように瞬く状態で、見た目は炎が2つに見えます。5の瞬きと比較しても大きな瞬きを生み出します。こちらもサイズの大きな和蝋燭で観測しやすく、4の状態からこちらに変化することが多いです。実はこちらの動画は後程説明します。
和蝋燭の灯りは、おおよそこの6つの形状をランダムに繰り返すことになります。この不規則さこそが和蝋燭最大の魅力であり、面白さでもあります。
■コントロールできない灯り
和蝋燭単体の灯りを見た場合はこれで全然良いのですが、演出として使う場合はどうするのか?という点です。前段で不規則さの話をしましたが、和蝋燭を魅せる場合はこの不規則さこそが最大の魅力になるのですが、例えば舞台照明のように他に魅せるものがあった場合どうするのか?という点です。
問題点が混同するとややこしいので、切り分けます。現代の感覚でいうと、舞台演出であったとしてもこの不規則さが魅力だよね。となるのですが、江戸時代は和蝋燭が魅力的だから使っていたわけではなく、「灯り」として使っています。ならば、舞台や芸能を見やすくする工夫はされていたはずです!
前回江戸落語の再現の動画を紹介していたのですが、実はこの動画中のほぼすべての時間帯で6の狐火の状態になっていました。映像は設定も位置も固定された状態で撮影されているので、照明プラン通り日没後に徐々に暗さを作っていく。という事は実行できているのですが、、、
今回魅せたかったのは和蝋燭ではなく落語であり、桂伸衛門さんでした。そういった意味では、主役を完全に引き立てることができなかったと言うのは個人的には大きな反省点でした。ただ、実際に参加してくださった方や撮影を担当した方からは非常に良い評価を頂くことができたことは非常にうれしく、次回への励みとなりました。
■次回はどうしよう??
という事で、次回はどうしよう?これが最近のテーマになっています。実際問題和蝋燭自体がどういった燃え方をするのかは灯してみない限り分からなかったりします。じゃあ江戸時代の人はどうやって灯していたんだ?今と同じようにランダムな灯りで見ていたのか?あるいは照明に適した蝋燭があったのか?
なんとなく後者のような気がしています。。。この辺の仮説検証に関しては史料的なものがまだまだそろっていないので時間をおいて少し話してみようとお思います。多分これでいいんじゃない??今私たちが見ている和蝋燭とおそらく、少なくとももう1種類以上の和蝋燭があったはず!
という事で今週は和蝋燭の「灯り方」と前回の反省で終わってしまいました。次回は9月15日次回の落語会にむけて!です!
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