社員の発想力が賃上げを実現する「1000万創出しようプロジェクト」
先日、ワールドビジネスサテライトの賃上げ特集でウチダレックの「1000万創出しようプロジェクト」が放送されました。
テレ東BIZ「春闘 相次ぐ”満額回答” 賃上げの波 広がりどこまで」
(テレビ東京系の番組、鳥取では流れないのですが……)
ウチダレックのある鳥取県は、人口は最小で、実質賃金はワースト2位です。賃上げをリードする大企業がないことが背景の一つで、所得向上のカギは、中小企業の賃上げだと言われています。
電気料金やモノの価格が軒並み上がっている状況で、経営者にとっては賃上げしたくても出来ない状況にあるのもホンネなのではないかと思いますが、今年4月には「賃上げ税制」もはじまり、賃上げの機運はますます高まっています。
そこでウチダレックでは、10%の賃上げを決めました。
昨年12月に5%の賃上げを実施し、残りの5%は社員発案の企画や改善により生まれた利益を原資にしようとスタートしたのが「1000万創出しようプロジェクト」です。
「1000万創出しようプロジェクト」とは
「1000万創出しようプロジェクト」はその名前の通り、みんなの力で1000万円の利益を生み出そうというものです。
賃上げに関しては、経営を大きく左右する経営者に責任があると思っています。ただ、目の前のお客様の声やニーズ、現場の業務を知っているのは社員です。
経営者の意思決定や大きな施策によって生み出す利益と、社員が積み重ねた利益。この両輪で、会社も社員も持続的に成長していくことが理想的だと思っています。
会社の業績や経営陣の給料を上げるためにトップダウンで行うのではなく、社員が上からの指示に頼らない「自走する組織」を目指してみようと思ったことが、プロジェクトをスタートした背景です。
1000万円創出するといっても、一つの取り組みや意思決定で利益を生み出すことは、なかなか出来ることではありません。それよりも、業務改善や新商品・サービスの提案、不要な経費の削減によって50万円の利益を生む企画を20件提案する方が、実現可能性があります。
どんな企画が出てくるのだろうか、私の考えや思いが伝わったのだろうか、初めての試みでドキドキしていたのですが……なんと開始約4ヶ月で39件の提案があり、819万円の利益が生まれています。今の進捗では、目標の1000万円にも到達する見込みです。
プロジェクトを始めた昨年12月当初は、500万円を創出するのがギリギリかなと想定していたので、想像をはるかに超える嬉しい誤算でした。
すると、いい変化が2つありました。
一つは、これまで無理して頑張っていた仕事や業務を辞める決断が出来たことです。
新たな利益を創出できたため、売上は上がるけど社員への負担が大きく、利益率が低い業務を辞めることができ、社員にかかっていた過度の負荷を取り除くことができました。
これは、予想していなかった出来事でした。
もう一つは社員の仕事や売上、利益に対する意識が変わってきたことです。
「どうしたら、仕事に自分事として向き合えることができるか」「どうしたら、業務の改善提案が出てくるようになるか」と考える中で気づいたのは、経営者である自分と、従業員である社員では、生み出した「結果」によりもたらされるものが違うということです。
経営者は、自分が発案した企画や意思決定したことの結果が業績に反映されます。一方で社員の立場だと、改善提案したとしても、評価には反映されるとはいえ、分かりやすく自分に還元されるイメージを持つことが出来ません。
そこで、自分たちが企画提案、実行した結果を還元する「1000万創出しようプロジェクト」によって、自分たちの日々の仕事や改善の結果が、自分たちにも還ってくることを感じられる仕組みにしました。
社員が活躍するための仕組みづくり
今回のプロジェクトで思ったことは、仕組みが変われば行動が変わるということです。
言葉でいくら「仕事には自分事として取り組んでください」「考えてみましょう!」と言っても、人は変わりません。
社員一人ひとりが可能性や強み、考える力を持っているはずだと考えると、「行動ができていない」のは、その力を引き出す仕組みや環境になっていないからだと思うのです。
そこで必要なのは、社員をエンパワーメントするための仕組みや環境へ変えていくこと。どこに向かうか、意思決定の判断基準は何かを示すこと。そして、どの範囲だったら自分で決めて動けるか?の裁量権を持つことです。
ウチダレックでは、2023年の夏に新しい経営計画書をつくりました。
計画書の原点にあるのは、お客様の満足度を最大化することです。「満足度の最大化」なので、お客様だけを見て、言うことを聞いているだけでは達成できません。
例えば、満足度を上げるために社員が無理な残業を続けると、一時的には喜んでもらえるかもしれませんが、長くは続きません。結果的に、お客様の満足度は小さくなります。
「持続可能な利益水準を維持しながら、満足度を最大化することを考えてほしい」という思いを経営計画書に織り込み、明文化しました。
これは社員を管理するための仕組みではなく、むしろ、仕事が面白くなるために必要なことだと思っています。
決められたことを決められたとおりにする、そんな仕事も大切ですが、自分なりの工夫や発想力を活かし、出来ないことが出来る瞬間に、人は楽しさを見出すと思います。
今回のプロジェクトで嬉しかったことは、その金額よりも提案数の多さでした。1件目の提案が成功し、続けて何件も提案した方もいれば、普段は表に出ず裏で会社を支えてくれているバックオフィスチームからもたくさんの提案が集まりました。
このプロジェクトで私が用意したのは、全員で1000万の利益を生み出そうという目的と、企画提案フォーマットの簡単なスライド1枚だけです。
企画提案に慣れていない人も、仕組みがあることで、まずやってみることが出来ます。それで結果が出れば、また次も挑戦してみようという気持ちが生まれるはずです。
強味と弱味は環境によって変わる
「どうしてやろうと思ったんですか?」とテレビの取材で聞かれたため、どうしてだろうと自分自身のことを振り返った時に、思い出したのは中学で始めたバレーボールでした。
中学校に入学するまでスポーツをしたことがなく、さすがに体を動かさないとまずいなと、バレー部に入部しました。
ただ、私を含めて部員はたったの2人。
練習も試合もできないので仕方なく勧誘からはじめましたが、集まったメンバーは全員バレー未経験でした。
一応、試合ができる人数は集まったものの、当然勝てるはずはありません。
そこで、まずはルールを覚えることからはじめ、レシーブの構え方を学び、トスを何度も練習しました。すると、みんな少しずつ上手くなっていきます。試合にもならなかった状態から、だんだんと点が取れるようになり、勝つことができるようになりました。
人は、「やってみる」という環境に身を置いてみると、できないと思っていたことも、案外できるようになります。そして、それ自体が面白いということに気づけるんだと思います。
適材適所を考えて、社員の可能性を活かせる仕組みをつくる、
社員が発案して業務を改善し利益が上がる、
賃上げによって、利益を社員に還元する......
その積み重ねがお客様へのよりよいサービス提供へとつながり、結果として、社員も会社もいい方向へ前進していけると信じています。