キウイが潰瘍性大腸炎に良い効果がある?について本を読んでみました
きっかけは一冊の本
フルーツと潰瘍性大腸炎の関係ではブルーベリーについて過去に紹介しましたが、キウイフルーツも潰瘍性大腸炎との関係が言われているようです。
知ったきっかけは以下の本で、かなり平易で文字数の少ない本なので、潰瘍性大腸炎とキウイの関係について述べた部分はごく僅かでしたが、参考になる情報があったので紹介したいと思います。
すぐに読める本なので本記事を読んで興味を持った方はぜひ以下のリンクからお買い上げください。
キウイは水溶性食物繊維が豊富
食物繊維には大きく2種類があります。水に溶ける水溶性食物繊維と水に溶けない不溶性食物繊維で、多くの食材では不溶性食物繊維の割合が大きいと言われています。キウイでは水溶性食物繊維の割合が比較的多いことが特徴として挙げられます。
水溶性食物繊維は酪酸を産生する
酪酸については将来別記事にて紹介しようと思いますが、潰瘍性大腸炎に対しては様々な良い効果が報告されています。
酪酸の効果について潰瘍性大腸炎に関連するものを本から一部を引用しますと、
腸内フローラを良くして、整腸する効果
潰瘍性大腸炎などの腸の病気の改善効果
制御性T細胞の増殖を促すことで、アレルギー性疾患や自己免疫疾患を抑制する作用
などが挙げられています。
酪酸などの短鎖脂肪酸は腸内の酸性度を高めるので悪玉菌が棲みにくくなり、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増加させます。これにより、腸内フローラが健康になるとのことです。
短鎖脂肪酸は食物繊維、特に水溶性食物繊維を餌にする腸内細菌によって産生されます。
潰瘍性大腸炎の患者には酪酸が足りていない
本の中ではさらに、この酪酸が潰瘍性大腸炎の患者には足りていないという研究結果を紹介します。
グラフ左から潰瘍性大腸炎の直腸型、左側大腸型、全大腸型、結腸全摘回腸直腸吻合、大腸全摘回腸人工肛門、健常者で、短鎖脂肪酸(十時のハッチがかかっているものが酪酸)の数が一様に健常者に比較して少ないことが示されている。
酪酸は制御性T細胞を増やす効果も
制御性T細胞については別記事などでも紹介していますが、シンプルに説明すると免疫細胞に対してブレーキをかけるような存在。対してヘルパーT細胞はアクセルを踏むような存在と言われます。潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患では免疫細胞が過剰に働くため、この制御性T細胞が鍵の一つだと言われています。
腸内細菌の一種であるクロストリジウム菌は食物繊維をエネルギー源として増殖し、その時に酪酸を放出します。腸内に放出された酪酸は免疫細胞に対して活動の抑制を促すシグナルを送り、免疫細胞は制御性T細胞として振舞います。
以上が本に書かれているキウイと潰瘍性大腸炎の関係の概要です。より詳しい内容については本をご購入頂ければと思います。
本を読み終えた所感
キウイフルーツと潰瘍性大腸炎の関係についてはこの本を読むまでは知らないことも多かったです。一方で、アカデミックな世界で「kiwifruits ulcerative colitis」などと検索してもキウイフルーツと潰瘍性大腸炎の直接の関係を調べた論文はかなり少ない印象です。今回の本でも潰瘍性大腸炎にキウイが良い理由の多くが酪酸を産生するからというところに起因しています。
この酪酸と炎症性腸疾患の関係を紹介するにはかなり巨大なトピックとなるので、本記事では触れませんが、様々な論文を読むと、筆者はその効果にかなり期待を持っています。ただ、多くの患者が飲んだことがあるであろうミヤBMも実は酪酸菌です。ミヤBMを飲んだからといって炎症性腸疾患が良くなったという話もあまり聞かないので、単純に酪酸を経口摂取するだけでは効果は限定的なのかもしれません。
実際にキウイフルーツをどれくらいの量摂るべきかやおすすめの食べ方などは本の中に記載されているので、ご興味を持った方は記事冒頭のリンクからご購入頂けますと幸いです。
参考文献
キウイを食べると腸が健康になる! 便秘・潰瘍性大腸炎・肥満・糖尿病(松生 恒夫、現代書林)
潰瘍性大腸炎症例の便中細菌と短鎖脂肪酸(日本消化器学会誌第79巻2号193-197)