アトリビューション分析の生存確認。Amazonでならもしかして。。
こんにちは、ウブンの田中です。
第2回のウブン広告noteでは、AMC(Amazon Marketing Cloud)を活用したアトリビューション分析について取り上げたいと思います。
第1回目のnoteで、Amazonならではのウブンの広告運用方法についてお話ししましたので、こちらもぜひご覧ください。
アトリビューション分析とは
複数のオンライン広告を経由して成果(商品購入や資料請求)が発生した場合、ユーザーが最後にクリックした広告に成果が割り振られることが一般的です。これをラストクリックモデルと呼びます。
ラストクリックを評価するというのは古くからの「慣習」でした。これに対して、ラストクリック以外のモデルでクリックに対して成果を割り振り、各広告キャンペーンのパフォーマンスを再評価することをアトリビューション分析といいます。
代表的なアトリビューションモデルとしては、以下のものが挙げられます。
ラストクリックモデル:コンバージョンに至った最後のクリックに対して100%の貢献度を与える
ファーストクリックモデル:最初のクリックに対して100%の貢献度を与える
線形モデル:各クリックに対して均等に貢献度を与える
時間減衰モデル:より近いクリックに対してより高い貢献度を与える
アトリビューション分析が求められた背景としては、ラストクリックの広告評価による広告キャンペーンの最適化によって、刈り取り型の広告に過度な予算偏重が起きていたことが挙げられます。特に、短期リーセンシーのリターゲティング広告への予算偏重を疑問視するマーケッターにとって、アトリビューション分析とその結果に基づくアロケーション(予算再配分)はとても興味を惹かれるテーマでした。
一方で、デジタルマーケティング市場においてアトリビューション分析が一般化することは残念ながらありませんでした。その理由として、大きく2つ挙げられます。
①ユーザー識別子の分断
当時、オンライン広告においてユーザーを識別するIDは主にcookieでした。Cookieはブラウザごとに発行されるため、アトリビューション分析のユーザー識別子としては十分ではありませんでした。また、スマートフォンが普及するにつれて、スマートフォンアプリに掲載される広告も増え、ここでもアプリのユーザー識別子である広告IDとcookieとの分断が課題となりました。
②アトリビューションモデルを変えても広告評価が変わらなかった。
ユーザー識別子の分断にもかかわらず、限られた情報の中でもアトリビューション分析は行われました。しかし、私が関わった案件では、アトリビューション分析によって各広告キャンペーンの評価が大きく変わるような事象は見られませんでした。
アトリビューション分析が一般化しなかったのは、恐らくどの分析現場でも同じような結果になっていたのではと推測しています。
その後、SNSを中心にアプリ面の広告市場がさらに拡大し、ウェブにおいてはcookieすら使えなくなる中で、アトリビューション分析という名を聞くことすら少なくなってきました。
Amazonでなら。。
一方、Amazon広告では、Amazonの会員情報がユーザー識別子として活用されているため、ログインさえしていれば課題①のユーザー識別子の分断が発生しません。また、Amazon出品者が活用する広告は主にAmazon内に掲載するスポンサー広告&DSP広告なので、アトリビューション分析もAmazonソリューションで完結するメリットがあります。
最後の希望(?)のAmazonで、アトリビューション分析の生存確認をおこなってみたいと思います。
AMCとは
昨年、Amazonが本格リリースしたAMCでは、Amazonスポンサー広告とDSP広告の各種ログデータ(imp、click、conversion)を使った分析を行うことができます。
ユーザー識別子など秘匿性の高い情報をアウトプットすることはできませんが、分析時の集計のキーとして活用することはできます。今回は、このAMCを活用してアトリビューション分析を行います。
分析結果
下記条件でアトリビューション分析をおこないました。
ラストクリックモデルでは評価されていなかったが、モデルを変えることで、投資判断に影響するくらい評価が変わるキャンペーンを発見することが目的です。
期間:2023年1月
対象広告:Amazonスポンサー広告、DSP広告
採用モデル:ラストクリックと線形モデル
対象イベント:クリックのみ
では、早速分析結果をみていきます。
アカウント:A
本アカウントでアトリビューションモデルを変えたところ、運用方針に影響するほどのパフォーマンス差は観測されませんでした。
プロットしたグラフでは、横軸に広告費のシェア、縦軸にリニア÷ラストの変化率を設定し、キャンペーンのパフォーマンスを評価しました。広告費シェアが大きいキャンペーンで変化率が高い場合、運用方針策定に対して影響がある分析結果と考えられます。
広告費シェアが小さいキャンペーンでも、変化率が上振れするものは見られましたが、全体への影響は軽微でした。
本アカウントは、以下の理由から検討期間が短く、複数の広告がクリックされていないことが要因と推察されます。
比較的低単価な商材であること
ブランド力が高く、指名検索数が多いこと
リピート購入者が常に一定のボリュームでいること
具体的にキャンペーンの内容と変化率を見ていくと、自社ターゲティングやリターゲティングプロモーションは、ラストクリックからリニアクリックに評価モデルが変わることでコンバージョン数が減少し、逆に一般系ターゲティングでは増加しており、想像通りのカスタマージャーニー像ではありました。
アカウント:B
こちらのアカウントでは、ある程度広告費シェアが高いキャンペーンにおいて、リニアクリックに評価モデルが変わることで、パフォーマンスが有意に向上するものが見られました。
300%を超えるキャンペーンは、元々のROASが低いため例外的なものですが、一般ターゲティングのキャンペーンで150%近く評価が上がるものが2つありました。具体的にキャンペーンの内容を見ても、投資強化を検討できる宣伝商品やターゲティングが行われていたことが分かります。
本アカウントの商材は、比較的高単価で短期間にリピート購入されるものではないため、アトリビューションと相性の良いアカウントであったと言えます。
実際にこういったキャンペーンの配信を強化することで、当該商品の全体売上が向上するのか、試していきたいと思います。
今後にむけて
今回の2つのアカウントでは、キャンペーン単位の粗い分析にとどまりましたが、投資判断や運用方針を大きく転換できるほどの分析結果は残念ながら得られませんでした。
一方で、想像通りのカスタマージャーニーが垣間見えたことや、一部ではありますが投資強化を検討できるキャンペーンもありました。これを受けて、今後のアトリビューション分析においては以下のことに取り組んでいきます。
対象アカウント、種類の拡大
新規購入者のみをコンバージョン対象とした場合の分析
広告グループ、ターゲティング、宣伝商品に細分化した分析
採用するアトリビューションモデルの拡大
最後に
ECモールという限定された空間であることで逆に分析における技術的障壁から解放されその幅が拡がるのがAmazonマーケティングの楽しみの一つです。さらにAMCの登場によってログデータベースの分析ができるようになり、アドホックな分析ニーズにも応えれるようになりました。
ブランドリフトやビュースルーコンバージョンなど、クリック以外の指標も広告効果を評価するために使用されていますが、個人的にはクリックベースのアトリビューションが唯一受け入れ可能なロジックかなと思います。今後も定期的にアトリビューション分析の生存確認していきたいと思います。
さて、ウブンでは一緒に働く仲間を募集しています。
デジマ・運用型広告のネクストレベルを追及している方、直近ではキャリアチェンジを考えていなくてもまずはお気軽に情報交換させてください。
長文をお読みいただきありがとうございました。これからも情報発信続けていければと思います。よろしくお願いします!