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日曜日のクルーメイト#0031 Erehwon!!『ばいばい、アース』コミック3巻発売!

ハロー、クルーメイト! いかがお過ごしでしょうか?
冲方は、刊行や発表に伴う取材などで、『マルドゥック・アノニマス』の連載執筆がギリギリになってしまい、今週の当記事を遅ればせながら書いております。
口頭で話したものを書き起こしてもらってラジオ風味にするという手法は、こうしてあっさりどこかへ行ってしまいましたね。また担当者との対談っぽい宣伝トークもやりたいのですけれどね。

そういえばnoteのベータ版でルビが実装されたのですね。ちょっと試しにやってみましょうか。
ご奉仕いたしますわ――ッダダダダダダダダダダダダダダダダだダダダダダダダ!!
久々に書きましたこの台詞。時代ものに登場するような難語を避ける必要がなくなるので、なかなかいい感じですね。

さてさて。関東は台風一過の晴れ晴れしい週末、元気に参りましょう!

今週の宣伝1 『ばいばい、アース』コミック3巻発売中!

少年画報社ヤングキングアワーズにて連載中のコミック『ばいばい、アース』第3巻が発売!

『ばいばい、アース』は、冲方のデビュー後第一作なのです。
かれこれ二十年以上前、当時はエネルギーのセーブをまったく考えず、気づけば2500枚超のいまだマイ一番の極厚小説となって世に出されました。
だいぶのちに文庫4巻に分冊されまして、ただいまコミックでは文庫1巻の佳境である「カタコーム戦役」へ突入中!
主人公ベルの周囲で、多数のキャラが入れ替わり立ち替わり活躍するという、とんでもなく描写が大変なはずのシーンが、鮮やかにわかりやすく描かれており、素晴らしいの一言。

キャラたちのラフデザインなど、担当の手による記事にて公開中!


続きは最新のヤングキングアワーズにてお読み頂けます! ぜひお手に取って頂けましたら幸い!

せっかくですので、ここで作品の元ネタを一つ、ご紹介。

主人公ベルの剣に刻まれた『EREHWON』という言葉。元ネタは学生時代に知ったサミュエル・バトラーの『エレホン』。
本の内容はさておいて、NOWHEREをひっくり返した言葉が、それこそ心に刻まれたものです。
(ちなみに懐かしくなって調べたところ、なんと『エレホン』の最新の和訳が2020年に刊行されていました。正直、著者の名前すら忘れていたのですが、こうして振り返れるアーカイブの恩恵に大感謝)

『エレホン』や『ユートピア』は、「理想郷」ないし「無何有郷(むかゆうきょう)」(荘士『逍遙遊篇』)とも訳され、どこにも存在しない理想的な社会を描いたものと思われがちですが、実際に読むと、どちらも現代でいうディストピアです。
たとえば『エレホン』では病気になった人間は自己責任とみなされ罰を受けます。コロナ禍で感染者を叩く嫌な風潮そのものです。結果的に健康な美男美女しかいない素敵な社会になるというディストピアなわけです。

それはさておいて、NOWHERE/EREHWONというフレーズは長らくテーマとして心に残り、ほどなくしてNOWHERE/NOW  HEREというテーマへ変じて、『蒼穹のファフナー』『マルドゥック・スクランブル』『天地明察』などジャンルを問わず自作に投影されることとなったのだと思います。
振り返れば、『ばいばい、アース』がその始まりであり、こうして新たにビジュアル化されたことで、かつて見出したテーマを、新たにとらえ直す機会ともなりました。
実に幸福なことであり、どうやら今後もこのテーマと取り組めるということが執筆のモチベーションの一つとなっているのでありました。

今週の宣伝2 『骨灰』試し読み連載!

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さて、お次は、初のホラー長編連載の宣伝です。
このたび試し読みが公開されることとなりました。
『野性時代』にて連載しており、現在、第三話の発表を準備中。

気づけば日本人の祟りという信仰に、2015年日本という近年史をぶつけるという、個人的に大変わくわくしつつも、いったいどうなるのかわからない緊張感で書かせて頂いております。
こういうリアルタイム感を作者も味わえるのが連載の面白いところ。

ぜひ御覧になって頂けましたら幸い!

今週の宣伝3 『剣樹抄』第1巻文庫 10月6日発売!

さてさて。
先日ドラマの撮影現場をご紹介した『剣樹抄』、晴れて文庫第1巻が発売となります。

燃え盛るカバー! インパクト抜群のこの力作には、デザインの段階で目をみはったもの。
『月と日の后』も『ばいばい、アース』もそうですが、近年、デジタル技術の恩恵もあるからか、才能ある人々が活躍しているからか、カバー作りのための様々な工夫がレベルアップしている気がしてなりません。これまた執筆のモチベーションになるほど嬉しいのです。

江戸を駆け巡る水戸光國と、寄る辺なき少年の運命的な出会い。
今も連載が進行中であり、水戸光國がかつて背負うこととなった罪を、いつかしっかり書き切りたいという思いが、早くもこうして実りつつあり、読者の皆様のおかげでこうして機会を頂けたことに感謝なのです。

ぜひお手に取って頂けましたら幸い!

なお、
『剣樹抄 不動智の章』
(第2巻 単行本)は11月5日発売です!
こちらも書影が出たところで、改めてご紹介させて頂きます。

コメント・トーク

ここからはクルーメイトのコメントをご紹介!

ラピツティアさんからのコメントです!
冲方も、作品世界の地図や図面が載ってるとなると、無条件で買っていたほうなので、気持ちは大変わかります。
作品世界の全体を眺めることで、より鮮やかに登場人物多たちの行動が脳裏に浮かび上がって、とても楽しいのです。

マイクラですら、わざわざ苦労して地図を作ってしまったり。
江戸の絵地図を眺めているときも、まっとにかく大変ですが、宝探しのような楽しさを覚えます。

今後も、そこに『在る』世界と人々を描いてゆきたいものですね。

Kei.さんのコメントです!
セットはまさに資料館です。そのまま保存してほしい、という地方撮影のときの現地の方々の気持ちがよくわかります。(実際には、保存するには耐久力が必要で、当時とは違う建て方になってしまうとか)

地図はまさに難易度カオス。まず文字が謎なことが多く、読めたときには考古学者の歓喜も、きっとこうだろうと共感してしまいます。

カマキリの卵、確かに! そういう解釈もありかもしれません。
十二支の子(ネズミ)も、やたらと増えるので子孫繁栄の信仰の対象となったとか。
今後も様々な研究が進み、過去と未来をつなぐものが一つでも増えてくれるといいなあ、と思います。

森人さんからのコメントです!
まさに、舞台の大道具の超進化版という感じでした。

実は大河でもあまり事情は変わらないとか。
さもないとディズニーランドなみに広大で、さらに拡張され続けるセットになってしまうでしょう。
他方で、木造ということもあり、耐久性という点で、当然ながら長期間持ちこたえるものではないため、安全のためにも解体するようです。

ちなみに最近の撮影で、最も大変なのが、「火」を使うことだとか。
消防法や条例など厳しい制約があるため、「火に見えるライトと煙」を多用する必要があり、実際にセットに火をつけられる撮影所は、特定の県に限られてしまうそうです。
そんな制約があるとはつゆ知らず、にもかかわらず「火付け」が大勢登場する作品にトライする意気込みに、感銘・感謝しきりなのです。

こちらも森人さんからのコメント!

優しい! バカンスでのんびり、良いですね!
数年前に一念発起してサハラ砂漠を横断しましたが、のんびりというより足がボロボロになるほど過酷の一言でしたし。

ちょうど『エレホン』の話題が出ましたが、架空旅行記、面白いですね。
ファンタジーな画集など眺めながら、空想の旅行に埋没、なんて、子どもの頃はよくやっていた気がします。

グルメを入れてくるのが最近っぽい! 小説でも漫画でも、突如としてグルメコーナーを入れてくる作品、増えましたね。
人間にとって、最大の共通項の一つが「食」。
謎のファンタジック・孤独のグルメな何かを創造してしまいました。

ホイテロートさんのコメントです!

すごいでしょう! 炎のような不定形で周囲のものが見えにくくなる描写と、鋭い剣と樹木という対照的なものの配置が、とても巧みです。
また炎の底で呑まれる街のほうは、カバーをまくったあとの扉絵のほうで、よりくっきり見えると個人的には思いました。

湯屋一つ取っても、生活や身分の違い、今とは異なる技術など、見るべきところが無数にあって、興味が尽きません。

冲方も放映がとても楽しみ!

薔薇肉船舶さんからのコメントです!

映像で見たとき、最も映えるよう計算されて作られたセットとのことですから、やはり放映で目を楽しませられるときが楽しみです。

執筆前に、専門家の方に取材させて頂くこともありますが、書いていると「疑問が際限なく出てくる」ため、そのつど質問すると、付き合って下さる方も大変。
連載ともなると、〆切も近いため「今すぐ教えて!」と相手をせっつくことになり、だいぶ失礼になってしまいます。

ですので、まずは書き手が率先して調べ、いったん原稿にしたあと、校正者や専門家にチェックしてもらったほうが、やり取りがシンプルになるし、クォリティを上げやすい、というのが昨今の結論なのです。

れねねねさんからのコメントです!

ご購読ありがとうございます! こうしてみるとやはり素晴らしい書影。
仰るとおり、イベントでは三年近く、「連載中です」とか「こんな話です」といったトークをしてきました。
人の心も命も、ついでに立派な宮廷ですら、紙切れのようにたやすく千切り捨てられ、焼かれてしまう伏魔殿にて、70年にわたり戦い通した、史上最大級にひたむきな「がんばれ彰子ちゃん」の物語、ぜひとも応援して下さい!

あとがき

今週は、だいぶ遅れての記事公開となりました。

たいてい金曜日の夜には、週内の仕事を終わらせ、土曜の朝から次週の仕事の準備や、そのための取材をするのですが、完全に押してしまいました。

取材やプロモーション、サイン本作り、イベントなど、大変ありがたいものの、スケジュール調整が一段複雑になるため、錯綜しがち。
時間管理術というのは、どこまでも工夫の余地があるものだとつくづく思わされます。

時間に追われるのも緊張感があって悪くはありませんが、やはり、時間とは仲良く付き合ってゆきたいもの。

皆様におかれましては、ぜひ追いも追われもせぬ、素敵な日曜日をお楽しみ下さい。
冲方丁でした。






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