日曜日のクルーメイト #0050 Happy Valentine!!
ハロー、クルーメイト!
関東は雪続きの週末、と思いきや、即日の雪融けに快晴です。
週明けはバレンタインデーということでタイトルもちなんでおりますが、冲方にとっては、また一つ歳をとる日だな、という感慨の方が強かったり。
デビューしたての頃は、早く大人にならねば、熟練せねば、と2月14日が近づくたび、過去一年の反省を文章にしたため、次の一年で重視すべきテーマを定めたもの。
最近は焦慮もようやく遠ざかり、寅年にちなんで「虎視眈々」とインスピレーションによる跳躍の訪れをうかがいたいところ。
クルーメイトも、どうぞ良い週末と、そして良い週明けを迎えますよう!
というわけで、今週も元気に参りましょう!
WEB『マイ・リトル・ジェダイ』
現在、第五話を書いております――が、WEBでは分割されるため、ちょっと話数の報告がややこしいことに。
えー、「最新話を執筆中!」という風に、ざっくりした方が混乱がなさそう。
交通事故で意識不明の息子が、なぜかゲーム世界に。
父の暢光の、奮起としょんぼりの繰り返しは、当人の艱難辛苦はさておき、書いていてとても楽しい。
ぜひ読者にも同じ気分を味わって頂けることを願い、主人公に負けじと奮起し、この愛しい物語をしっかりと書き上げたいと思います。
とんと頼りない主人公・暢光が、その平和で鷹揚な暢気さゆえに、被害者である自分と家族だけでなく、加害者までをも冒険へと連れ出す物語。
どうぞよろしくお願いいたします。
WEB『骨灰』
さて、こちらは『骨灰』!
ちょうど最新話を書き上げたところで、『マイ・リトル・ジェダイ』とは真逆の、頑張れば頑張るほどに深みにはまる「祟り」の書きごたえを感じております。
呪いも悪霊憑きも、国や文化どころか、作品や書き手によって、だいぶ様相が変わってくるもの。
本作ならではの不気味さ、不可思議さ、逃れようのなさに、読者を引きずり込めるよう、目に見えない何かの存在をひしひしと感じながら、こちらもしっかりと書き上げたいと思います。
余談 某蒼穹の固有名詞
現状、『マイ・リトル・ジェダイ』も『骨灰』も、2022年の内に刊行されるよう、スケジュールを整えており、皆様にお届けできるはず。
さて、ここで余談を一つ。
新作や短編を用意する際、ふと気づくと、某蒼穹のアニメの固有名詞が入り込んでいることがあり、「どこから来た?」と自分で驚くことがしばしば。
以前、ホラー短編を異形シリーズに寄稿させて頂いたとき、登場人物の名前がやたらと某蒼穹化していたことに後で気づいて、ぎょっとしたもの。
どうやら、自分のどこかに「蒼穹回路」みたいなものが出来上がっていて、登場人物の名前を思い浮かべる際、無意識に影響を与えているようです。
デビュー間もない頃の自分が、ふいに顔を出すようでもあり、さて、この回路のありかを特定し、解体して消してしまうべきか、もうちょっと取っておくべきか、悩ましいところ。
いずれにせよ、刊行時には蒼穹風の名前は、他のものに修正することになるでしょう。
連載で、ああ、これだなとお気づきの方は、にやりと笑って見過ごして頂けましたら幸い。
コメント・トーク!
さて、ここからは恒例、クルーメイトのコメントご紹介。
まずは先週、ご紹介し損ねた方のコメントから。
新条拓那さんからのコメントです!
こちら、国や文化の境界における物語について冲方が言及したことへのコメント、ありがとうございます!
そう。境界とは、すなわち景観そのものであることがほとんど。
真っ平らで地続きな場所でも、川が流れているだけで、「彼岸」と「此岸」に分かれてしまうもの。
冲方も震災のとき、福島から新潟へ移動しましたが、「完全に別世界」でした。インフラは無傷で、ガソリン、水、食料、電力が、ちっとも不足していないことに、かえって、ちょっとしたショックを受けたものです。
ネットはモニターやインターフェースが境界そのもの。
しかしメタバースともなると、自分の姿までもがアバターとなって変化し、インターフェースも仮想空間の中にあるという感覚になるゆえ、むしろあらゆる境界が消え、いったん何もかも曖昧な状態になると思っております。
個人的には、マインクラフトのように、多数の人間が様々なものを構築することで、やっと世界と呼ぶに値するものが生まれるのではないかなと思いますね。
世界を認識したり構築したりする際には、神があらゆるものを名付けるかのように、明白に区別するための境界を、いたるところに引いていかねばならなりません。
メタバースから、どんなものが生まれるか。
どんな境界が生まれ、そして争いの種になるか、という一抹の不安も抱えつつ、早いところ「メタバース用の首が凝るヘルメット型ではないインターフェース」が開発されてほしいと願っております。
森人さんからのコメントです!
冲方も、Netflixのドキュメンタリーには、かなり助けられております。
おかげさまで、アメリカ大陸における最大の紛争と言っていい、複雑怪奇な麻薬戦争の全体像が、ざっくりとですが理解できたましたし、麻薬を売る側、買う側の様々な実態を学べました。
麻薬を巡る実話の中で最も衝撃を受けたのは、麻薬王パブロ・エスコバルが政府に「和解」を強要し、自前の刑務所を建てて、そこに入った、というくだり。
いつ誰が殺されるかわからないという、「偶然」に支配された世界に、どれほど人間が耐えられないかという証拠のような事件だと思いました。
パブロ・エスコバルの居場所が定まり、彼が何もしないから安心、という「必然」さえ得られるなら、他の全てが解決しなくてもいい。
それこそが麻薬なのだと、現代社会を振り返って思う次第。
あとがきと、クルーメイトへのお尋ね
なんと、この連載記事も、ついに50回の大台に!
今後、執筆のスケジュールによっては、毎週から隔週になったり、ちょっとお休みすることもありましょうが、地道な宣伝を、こつこつ休まず続けることが出来ました。
冲方にとっては、自分が書いたもの、関わったものを、端から忘れて次へ向かうのではなく、そのつど振り返って総括する、良い機会となり、クルーメイトに深く感謝を申し上げます。
さて。
当初は文体も構成も段落の作り方も、いちいち変えてみたりと、試行錯誤を続けて参りました。
ここでぜひご意見を伺いたいのは、「改行は多い方が良いか?」ということ。
ネットでは一行ごとに改行する記事も多く見られるようになりました。
前回の記事などは、あえてそうしてみたのですが、どうもかえって読みにくくなってしまっている箇所もありそう。
文章術というものは、時代によって変わっていくもの。
改行以外にも、こういう文章がいい、といったクルーメイトの忌憚なきご意見をうかがえましたら幸い!
ではでは。素敵な日曜日と、バレンタイン・ウィークをお送り下さい!
冲方丁 拝
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