カクヨムのなろう作品に学び、実践してみた
前回、こんな感じのカクヨム入門記事を投稿した。
カクヨム初心者として、一般的に「なろう」っぽい(異世界・転生・スキル・ざまあ)ジャンルへの入門をしたのだけれど、切り込み方が悪く、画一的な視点になっていたと思う。(本記事はその反省も兼ねています)
何を学んだのか
カクヨム・なろう作品は、王道(スタンダード)に対する亜流(オルタナティブ)であり、主な創作の動機は、王道を大喜利にした小ボケの連打である。ゆえに同一設定の小手先をいじったような作品が連発される。
それでいて、大ヒットによって王道より太い流れになることもある。そして、その逆張り・裏打ちが繰り返され……シーンは複雑怪奇な前提条件(フォーマット)を共有した進化を果たすのである。
而して、カクヨムのトップ作品・話題作は、表面上は、似たようなタイトルと手法(テンプレート)をなぞった作品だらけに見えるが、実際にはタイトルで設定されたパターンは早々に消化され(あるいは延々と先延ばされ)て、本題と関係のない話を繰り返していく展開が続くのである。
カクヨムのなろう作品を読む際のポイントは「コメント欄」だ。作者がものすごい勢いで書いている作品ほど、誤字脱字の指摘が多く、その応答で作者が出てくるため、ユーザーを引き付ける魅力になっている。また、作者自身が読者に「タイトルと関係ない話が続きますが~」等のコメントを寄せる姿も多く見られるため「タイトルを脇に置いたオリジナルストーリー」が展開しがちであることも見て取れる。
そのような差別化による味わいが分かって来ると、無からジャンル小説をディグる楽しみが増してくる、ように思えるのだ。
テンプレートを学べ
カクヨムのなろうのテンプレを学び、なぞってみた結果、いろんなことが分かってきた。このテンプレは非常に書きやすいのだ。
共通素材(アセット)を借りてきて、ちょっとオリジナル要素を加えて、対立構造をセットするだけで、ぐんぐん物語が組み上がる。たのしい。
ちょっとゲームっぽいシステムも、そういうものだと割り切れば、読者も作者も受け入れることが可能だ。独自設定や用語をコツコツと積み上げて、読者を説得する労力を減らすことができる。
若手の作家が、俺にだってできると軽い気持ちでトリガーを落とす。そして、順調にエタる(エターナル化する=続編が出ない)。
作家は作品を公開するたびに成長するので、ものすごい勢いで成長し、やがて一流のパルプ作家となり、宇宙へ……
このテンプレートは読者のものではなく、作家のためのものなんだと魂で理解をしたのであった。
実践の結果がこちら
そんなわけで数々の作品を履修して、カクヨムのなろう作品を学び、生み出された作品がこれだ。
『S級パーティから追放された俺は覚醒スキル【すたみな太郎】で送別会を無双する。飽きたからって帰ろうとしてももう遅い。まだ110分残ってる。』
実際、カクヨム本誌で★100を超える大人気作品として、バズった。
カクヨムのなろうの問題点①
追放・ざまぁ作品は、「ざまぁ」状態になるまでが長い。
メインディッシュに当たる部分なので、なるべく引き延ばそうとするのだけど、正直なところ読んでいて、まだるっこしいと感じることが多々あった。
ゆえに作者はタイトルでその先の展開を担保するんだけど、それだったらタイトルだけ読んで次へいってしまえばよくないか? と思った。
なので、きちんと物語のミッドポイントで「ざまぁ」が来るように調整をしたのがこの作品だ。
カクヨムのなろうの問題点②
どうせ追放されるなら仲良しの方が盛り上がるはず。
カクヨムのなろう作品の悪癖として、この後「ざまあ」を受けることになるであろう人物は、基本的には悪役として描写される。いわゆる「金髪のジョック」とか「チア部のハニービー」というやつだ。この記号的なシステムを採用してしまうと、非常に物語が薄っぺらくなってしまう。
なので、本作では追放する上級冒険者たちには非常に良い人々になってもらった。酷い目に遭うのは良い人の方が良い。古事記にも書いてある。(この要素を丁寧に伸ばすと絶叫杯に届くと思うんだけど、今回は無理だった、ごめんね)
カクヨムのなろうの問題点③
なかなか本題に到達しない。
いわゆる「タイトルでオチてる」というやつだ。題名とキャッチコピーを読み、千差万別のオープニングまで読めば、その先の展開が読めてしまう。
だけど物語は遅々として進まず、題名の「追放・ざまあ・無双・チート」展開をニンジンとしてぶら下げたまま終わらない物語がはじまるのである。
なので、本作は、開始前に文字数とプロットを割り付け、起承転結を守った、60分~90分の単独上映作品くらいをテーマにして、一気に全五話で投稿をすることになったのである。(一般的な手法なんだけど、カクヨムのなろうでこのような形になっているものは少ない)
なお、完結していないことが当たり前のカクヨム界隈では、完結しているだけで手に取られる確率が上がる。『すたみな太郎無双』は各話のPV数は安定しており、最終回の評価が最も高く、脱落者が少ないことが分かる。
以上の問題点を設定し、スタンダードなファンタジー世界でありながら、自然に違和感なくすたみな太郎が出現する設定を施し、起承転結で気持ち良く読み終われる、そんな作品に仕上がったと思う。
キャッチフレーズやタイトルに魅かれたら、ちょっと読んでみてほしい。
未来へ
カクヨムのなろう作品に触れたことにより、異世界転生や追放モノのスタンダードを理解することができた。そして、それを吸収したうえでオリジナルとして投射することもできた。とりあいずは満足な結果だ。
個別の作品を区別できるようになってしまったので、もう「カクヨムのなろう」なんて呼ぶことはできないな。あとは、純粋に楽しめる作品を探すコツを探していこう。
自力で、カクヨムの定石にたどり着いたことを先達に評価されました。ありがたい話だ。
素人は知人に勝てない。
じゃあさ、なっちまえばいいじゃんその知人に。
現在、カクヨムのなろう作品は卒業して、カクヨムのスキマ作品を収集中です。
スキマ掲載作品、つまりゴラクやサンデー、漫画TIMESのようなジャンル作品群、土木……建築……ゴルフ……ヤクザ……下着デザイン……湯けむりスナイパー……まるごし刑事……白竜……そういうジャンルを探すと、非常に面白いことが分かった。
たのしいね、スコップ片手に掘りまくるの。
(おわりです)
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