『ポケピに託した未必の恋』

20世紀末。当時の少年少女にとってプレイステーションと言えば「どこでもいっしょ」であり、私たちはポケピたちといつまでも遊んで暮らしていた。

約二週間程度で旅立ってしまうトロ、ジュン、カエルに田中。彼らの珍妙な言葉遣いに笑い、時には「好きな人」という秘密を共有したりして甘酸っぱい楽しみ方をしていたものだった。

ある日のこと、いつもの通りクラスメイトのポケピとポケステでしりとりバトルを繰り返していると、意中のクラスメイトがポケステを差し出してきた。

瞬間、緊張走る。私は三原ジュンからの質問「好きな人いる?」に対して彼をもじった名前を入力していたからだ。

ポケピはあまりにも容易に秘密を漏洩する。ゆえに私の意中の人が彼に伝わってしまうかもしれない。それでも、私は意を決して彼のポケステと赤外線通信を行い、以降まんじりともしない夜を過ごした。

結局、ポケピが秘密を漏洩したのか確かめるすべのないまま季節は巡り、私たちはいつの間にか「どこでもいっしょ」からも卒業していた。

◆◆◆

「ねえ、ジュンから本当に何も聞いてないの? 」

この質問に対して旦那はいつもはぐらかすので、久しぶりにポケステの中の彼らに会いに行こうかと思っている。


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お望月さん
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