【NJSLYR】ブレードヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス【第二部感想#08】
ケジメニンジャは自我に目覚めたクローンヤクザである。彼は己のルーツを求めて連続わらしべケジメ(拷問)を開始する。しかし、果たして彼は本当の意味で自我に目覚めていたのだろうか。
ブレード・ヤクザ・ヴェイカント・ヴェンジェンス
強大なニンジャソウルが憑依したクローンヤクザ《ケジメニンジャ》は己の《オリジナル素体》である伝説のリアルヤクザ《ドゴジマ・ゼイモン》の消息を追い求めてクローンヤクザを購入したヤクザ組織へのインタビュー(拷問)を繰り返し、その被害はヤクザ上層部へ迫っていた。
たまったものではないのはヤクザ・クラン上層部である。クローンヤクザ を購入したせいで構成員がテレホンショッキング(拷問)されてしまうのだ。ヤクザは製造者責任および買い替え需要を煽るための自作自演を追求するためヨロシサン製薬を問い詰める。
さすがにこれにはヨロシサン製薬も困った。痛い腹を探られてはたまったものではない。クローンヤクザの製造管理職にまでケジメ(拷問)の手が及ぶに至り、ついには新型中間管理職ニンジャ《サブジュゲイター》がロールアウトされケジメニンジャを捕獲する作戦を開始する。
このように本エピソードでは第2部で何度も繰り返される入れ子構造がさらに短期間に何重にも繰り返されている。ビガーケイジズ・ロンガーチェインズ。より大きな檻と長い鎖によって、ついに捕らえられたケジメニンジャは殺処分を兼ねてニンジャスレイヤーへのテッポダマ(闘死前提の刺客)として放たれる。まるで自我を消されたクローンヤクザのように。いや、もしかするとそれ以前からと同じように。
むやみに核心に触れるのは得策ではない
本エピソードは時系列的には序盤ながら、第2部『キョート殺伐都市』の核心に触れるようなエピソードでもある。ヨロシサンをザイバツシャドーギルドに置き換えることでさらに大きな檻、ロード・オブ・ザイバツの支配するガイオン全域の姿が見えてくる。
サブジュゲイターはケジメニンジャを《ヨロシ・ジツ》で支配したが、ロード・オブ・ザイバツは……これ以上本編の核心に触れるのは得策ではない。後期エピソードを読み進め、備えよう。
肉体は情報遺伝子の乗り物なのか
一般的に「ケジメニンジャは自我に目覚めた」とされているが本当だろうか。彼の行動はクローン素体となった《ドゴジマが実行するであろう復讐》をトレースしただけの情報遺伝子(ミーミー)のコピー、つまりニューロマンサーでいうところの《ROM人格構造物》ではないかという疑惑がある。
《ROM人格構造物》故人の人格や記憶を残したROM装置であり、システム上で再生させることで故人と行動を共にすることができるが電源喪失で記憶はリセットされる。その特性から行動がほぼ予測可能であるという。つまり、彼ならば必ずヤるということはやるし、やらないことはやらない。
彼に遺されたモノは「ケジメ」と「ケジメ」と「ケジメ」、つまり"何か"に対するケジメを求めるオリジナルの遺志。それ以外には何も持たず、ニンジャネームは「ケジメ」と「ニンジャ」を組み合わせただけのものだ。
これはレオパルドが残したハイク「寂しい秋な/実際安い/インガオホー」を思い起こさせる。レオパルドは思い出をすりへらし、目に入ったカンバンをパッチワークして詠んだ。それしか知らないのでそうするしかない。そのニンジャネームやハイクに意味はないが、ワビサビがある。
マンジ・ニンジャのソウルの乗り物と化し、肉体の持つ情報遺伝子に突き動かされながら足掻いたケジメニンジャは最終的には、その肉体遺志すらヨロシ・ジツで上書きされ、遺志/意思を持たないただのイレギュラーヤクザとしてニンジャスレイヤーと血戦を繰り広げた、その血飛沫は半コトダマ空間ともいうべき環境を作り上げ、魂と拳の会話の果てにケジメニンジャは肉体と憑依ソウルを失い、すべてのくびきから解き放たれた。さらば、ケジメニンジャ。キツネオメーンに包まれてあれ。
救いはないんですか(ある)
現時点であまり多くのことは語れないが、すべてから解き放たれたときに、はじめてケジメニンジャ本人としての自我が目覚めたと考えている。 精神の庵でフートンやコタツにくるまり、しばしの間の休息をしてほしい。おばあちゃんとぽたぽた焼きを食べるような生活でもいい。コトダマ空間では何が起こってもおかしくない。真の自我を得た彼が何をなすのか。きっとそこに救いがある。
初心者にもオススメ
本エピソードは、第二部キョート殺伐都市の中核をなすエピソードであり、これだけ読んだら最終章までジャンプしても問題ないかもしれない。だいじょぶだいじょぶ。ケジメニンジャを主人公と見据えてレッツジャンプイン!