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逆噴射小説大賞2024 ピックアップ感想文

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逆噴射小説大賞2024 投稿期間終了

お久しぶりです。
このような文塊を吐き出すのも久しぶりなお望月さんです。皆さん元気にしていましたか? 逆噴射小説大賞2024の投稿期間が終了し選考期間に突入しました。1年でいちばんヤキモキする季節ですね。 にぎやかしに久々にピックアップ感想メント行為をしていこうと思います。

筆者の投稿作品はこちら。

『凍ざされた街』
五輪真弓『少女』を世界観のベースとした近未来ジュブナイルSF。

『日曜日が待ち遠しい!/Vivement dimanche!』
メフィスト賞作品『六枚のとんかつ』を5年越しに読了した。脱力する内容なのにトリック自体は正攻法であり‥‥つまり一切れつまみ食いしたくなったのだ。(本作には『六枚のとんかつ』の主要トリックのネタバレを含む可能性があります。先にそちらをご覧ください。)


ピックアップ①  優勝してほしい部門

『夜話』


今年度で最も気に入っている作品。たっぷりと時間をかけながら「祖父」について語られる夜話を描く。肉体的な自由を得ても精神の枷を外すことはできないことを描き、どこか中南米的なマジックリアリズムの香りが立っている。ぜひとも続きを聞かせてほしい蠱惑的な一節である。

『泥とプラチナ』


プロフェッショナルの仕事を描き切り、それが一側面でしかないことを外側から指摘する構図。見ているはずが見られている「覗き返し」の場面は、鑑賞体験のなかでも最上の味わいだと思う。

『Boooom!!!!』


奇想天外ファンタスティックな表現を得意とする電楽サロン先生(私もサロン会員だいファンです)ですが、本作では「不発弾」に代表される抑圧表現といずれ訪れる「題名」が融和して、ビッとした青春ドラマが発生している。不発弾はどこで弾けるのか。少年たちがんばれ。行政も負けるな。

ピックアップ② 完成している部門

『ペーパーズデッドライン』

「全員が無理なく適切な行動をとれば助かる(できるはずがない!)」という条件でのデスゲーム。社会風刺的な完成度の高い一編であり、このままスルッと完成させれば気持ちの良いショートショートになると思う。

『歌舞伎町オーバーボディ』

もこもこした頭身の低いぬいぐるみが暴力トラブルに巻き込まれている姿は、なにをどうしても面白い。作者の得意ジャンルと筆力が相まって、ありがちなアイデアのクオリティをグッと高めており、この作者なら完結まで走れるだろうなという往年の信頼感が期待を後押しする。

『ザ・プレイ』

2024年に読んだ本の中で最も衝撃的だったのは、『野球SF傑作選ベストナイン2024(2024年、齋藤隼飛編)』であることは明白である。本書には、米国における野球史の扱いについて言及するコラムが含まれていた。曰く、野球の登場人物は歴史上の英雄であり、日本で言えば『三国志演義(14世紀、羅貫中)』や『水滸伝(16世紀、施耐庵)』の豪傑悪漢に相当するという。英雄はカリカチュアされた伝奇ヒーローとなる。『ザ・プレイ』からも同様の野球伝奇の血脈を感じ取ることができる。『フィールド・オブ・ドリームス(1989年、フィル・アルデン・ロビンソン監督、ウィリアム・パトリック・キンセラ原作)』を呼び出される側の視点から見るのも興味深い。また、本作のモチーフとして考えられるのは『アストロ球団(1972年、遠崎史朗原作、中島徳博作画)』である。異なる立場の少年戦士が英霊・沢村忠の導きによって球場に集い、ぶつかり合う英雄譚である。
さらに、攻守が明確に分かれたイニング制の競技である野球の特徴は、中断や再開が容易であることでも知られている。テレビ放映でもイニングごとにCMを挿入できるほどであり、イニング間隔が数百年単位になっても問題ないだろう。なお、『野球』という概念は社会制度を内包している。例えば、鯨井久志の『終末少女と八岐の球場(2018年)』では、終わらない試合が生態系を吸収し、人々はイニングの表裏に生を全うする。人々はポジションを家督相続しながら次のイニングに備える姿が描かれている。『ザ・プレイ』でも、人々の営みが野球に取り込まれている様子が描写されており、日米野球SFの収斂進化の一例として感慨深い。

ピックアップ③ このへんのここが好き部門

『【1DK】ワン・ドラマー・ケー』

恋とはコミュニケーションの可能性から生まれる。未知との遭遇 ミーツ ハウスミュージック。なんてファンタスティックなんだ。

『パラレルワールド・ストーカー』

私は、決断的な逃げ足のキャラクターが好きだ。肉体の反応を凌駕する精神速度の逃亡は「アクション」の範疇である。また、全裸中年男性が登場する作品ではあるものの、ミーム的ではなく品のある描き方がされている点についても好感を抱く。

【人肉配信捜査官】

 肉体から遠く離れるほど憧れる、自然体な肉への欲求がストレートに表現されており、全作品の中で一番エッチだと思った。

『僕の考えた超人』

他愛のないホラ話なんだけど、語り手の粒度が素晴らしい。登場超人たちの躍動が目に浮かぶようだ。

『言霊交差点』

信頼できない語り手‥‥というかなんというか「自分自身にお兄さんという暗示をかけて存在を確立している語り手」のような気がする。なんせ言霊の世界では言葉により認識が全てなのだから。

未来へ

逆噴射小説大賞2024の投稿期間は終わった。しかし、作品が育つのはこれからだ。様々な感想文や審査員のフックアップによって作品の輪廓がかたどられていく。読者の思い出に残るのはそのような作品だと思う。年内には結果発表があるだろう。その後には結果を眺めながらいっしょにコロナを酌み交わせると良いと思います。

またね。

#逆噴射小説大賞 #逆噴射ピックアップ #小説感想


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お望月さん
いつもたくさんのチヤホヤをありがとうございます。頂いたサポートは取材に使用したり他の記事のサポートに使用させてもらっています。