1928年の時計
最近知り合ったのは時計を修理するのが趣味のラモン。
彼はわたしの友人からわたしのことを聞き、訪ねてきてくれました。
工房の裏の通りに住んでるめちゃご近所さん。
本業は観光バスの運転手さんですが趣味で時計を直します。
古ーい時計から新しいものまで、機械仕掛けであればなんでも。
仕事場には時計の心拍計みたいな機械だとか
小さすぎるピンセットとか、小さすぎる部品を保管するトレーだとか
面白そうなものがいっぱい並んでいます。
そこでせっかくなので、15年くらい前に買ったアンティークの時計を直してもらうことにしました。
結婚した頃に自分で自分に記念で買った、もともと懐中時計を腕時計に改良したものです。
女性もので小さいのですが、裏の二重ふたに何やら色々刻んであって、
蓋を全部開けると機械仕掛けが見られるようになっています。
買った当時、バルセロナで一度直しましたが、毎日3分ずつ遅れ、
その後動かなくなってしまいました。
ずっとしまってあったけれどこんな機会に巡り会ったのならなおすでしょーぅ。
ラモンはこの時計に一目惚れ。
色々調べてくれました。
裏蓋の記述によると
フランス式の仕掛けで時計職人の1928年のサインがあるそうです。
銀製の証明も蓋に入っているとのことで
「どこをどこから見ても美しい、完璧に美しい時計だ」
とお褒めに預かりました。
しばらくして「緊急治療室を出たよ」という知らせが届き、(ラモン、乙)
受け取りに行ってきました。
正しいネジの回し方もちゃんと教えてもらって、
日常づかいにはあまりにもデリケートと言うことなので
写真棚に並べて、毎朝ネジを回すのを楽しんでいます。
時計って、昔は高価で(今も物によっては高級品だけど)思い入れが強いものだと思います。
やたらめったら素敵!と思う時計に巡り会うこともないし
こちらの時計はわたし個人の思い入れもたっぷりなアイテムです。
時代を超えて、手から手に渡っていく。
アンティークのロマンはこう言うところにもあります。
物にも、おそらく、至るべき場所が決まっているんだろうな、とこの仕事をしていると日々感じます。
私たちはただそれを届けたり預かったりする通過の役目を果たしているに過ぎません。
そんなロマンを語れる仲間、またひとり。
ラモン・また時計見つけたら連絡するね。
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