【文字起こし】琴葉葵の創作怪談読み語り 1話目「赤錆びた鈴」
鈴。日本人であれば一度は見たことがあるのではないでしょうか?
大きな鈴から、小さな鈴まで。
お守りについていたり、100円ショップでキーホルダーになっていたり、見かける機会は多々あると思います。
中には家の鍵など重要なものに着けて、落とした時に気づけるようにしている人もいるのではないでしょうか?
今回はそんな鈴に関する怖い御話です。
これは私の知り合いのお話になるのですが、その知り合いは質屋を営んでいます。
生来、変わり者で俗にいう「曰くつきの品」ばかりを店で取り扱っています。
そんな不気味な質屋に並ぶ商品の中に、客から「赤錆びた鈴」と呼ばれている鈴がありました。
私も一度、その鈴を見せてもらいましたが、見た目は文字通りの赤錆びた鈴が7個商品棚に並んでいるだけでした。
知り合い曰く8個でセットらしいですが、最後の1つが見つからず、売り物にならないそうです。
じゃあなんで商品棚に置いてるんだよって話ですが、そこは今回の話に関係ないので置いておきます。
私が7つのうち1つを手に取り振ってみましたが、よく聞く「ちりんちりん」という音でも「しゃんしゃん」という音でもなく、コンコンとドアのノック音に似た音がしました。
私が錆びているせいで音がおかしくなっているんじゃないかと、質屋の店主である知り合いに指摘しましたが、知り合いはその鈴はそれで正常だと言い張ります。
「その鈴はある工場で作られ、その跡地から持ってきたものなのよ。
その工場は整備不良の機械によるトラブルから出火し、火災が発生。
従業員8人が火にまかれて亡くなったそうよ。
そしてその工場跡地から見つかったのが、7つの赤錆びた鈴。」
私には確認する勇気はありませんでしたが、知り合い曰く赤錆びた鈴の中には犠牲になった従業員の奥歯が入っているそうです。
だから「ちりんちりん」でも「しゃんしゃん」でもなく、コンコンと鳴るのが正常だと。
その鈴を工場跡地から拾ってきた質屋の店主にして、私の知り合いである彼女は笑顔で語りました。