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手繋ぎ

幼い頃の梅子さんも多分に漏れず、手繋ぎは大嫌いだった。
どんな時でも手を繋ぐと嫌がり、泣きながら振りほどこうとしていた。
あまりに嫌がるので、こちらも迷いが出てしまうほど。

しかし、通っていたトモニ療育センターの河島先生から「街は大きな教室です。子供を連れて歩いてください。」と言われた。
当時、発達障害の子供が「脱走」と言われて学校や施設から抜け出す事故が多発(今でも)していた。
そんな中、守りではなくあえて、連れ出すことを勧めて下さった。

とはいえ、街中を歩くとなるとやはり、危険。
車や自転車等が往来し、信号や横断歩道、左右の確認等、交通ルールが分からない梅子さん。
やはり躊躇してしまう。
しかし、街中を歩く事で道を覚えてくれるかも知れない……
仮に迷子になった時、もしかして1人で家に帰れる可能性も0ではない……と思って街中を歩く練習をした。

梅子さんは当然、大暴れの大泣き。
もはや見た目、虐待か?……とも思うような絵面だった。
とにかく手を振りほどきたくて仕方ない…というのが伝わってくる。
しかし、手を離すと間違いなく道路に飛び出すのが分かった。
ここは、自分自身の問題だ‼️と思い、絶対に譲らない‼️と誓って、手を離さず毎日、歩いた。

数年後、梅子さんも諦めたか次第に嫌がらなくなってきた。

大人になってからも量販店等の大きな駐車場では四方八方から車がくるので、手を繋ぐことがあるが、ほとんど今は手を繋ぐことがない。

そんなある日、梅子さんを美術館に連れて行く度、あまり絵を見なくなった。
目を閉じて動かない梅子さん。
環境が嫌なのか、たくさんの人が嫌なのか私には分からなかった。
美術館巡りは、梅子さんにはハードル高いのかなぁ……と思っていた所、山奥にあるひっそりと佇んだ美術館で絵本の展覧会があった。
これが最後かなぁ……と思いながら連れて行った。
あまりの山奥に客は、主人と私と梅子さんのみ(笑)
とはいえ、入って直ぐに目を閉じてる梅子さん。

人がいないとはいえ、放っておく訳にもいかない。
見なくても良いから一緒に手を繋いで回った。
すると次第に目を開けて展示されてる絵を見ていた。

あれ?????
見てる👀

手繋ぎで見始めた梅子さんを見ていると次第に何故、今まで絵を見なかったのかが分かってきた。
重度発達障害者だから、新しい環境が嫌だ‼️とかたくさんの絵が飾ってあるのが落ち着かない‼️とか人混みが嫌だ‼️とか敏感や鈍感な理由ではなく、ただ単にどのペース配分で絵を見たら良いのか分からなかったのだと知った。
私と手を繋ぐことでペース配分が分かりやすくなり、落ち着いて展示されてる絵を見ることが出来るようになった。
今までは、1枚の絵の前で、立ち去ってよいのかどうかも分からず、どの流れにそって良いのかも分からなかったみたいだ。
手を繋ぐことで分かりやすくなり、最終まで良く見てくれた。

そして、仮説が正しいのであれば次回は、混んでいる展覧会に連れて行ってみよう‼️と考え、京都にある美術館で行われた「ゴールデンカムイ展」に連れて行ってみた。
そして、最初から手を繋いで人混みの中、一緒に回ってみたら、目を閉じることなくゴールデンカムイ展をよく見ていた(笑)😂😂😂

仮説は正しかったな……と思って、ヨシっ‼️と心の中でガッツポーズした。🤣🤣🤣

結局、分かりづらさの所を考えてやることが解決への糸口を掴めると思った思い出。
(*^^*)

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