見出し画像

無人航空機(ドローン)の活用実態と今後の課題

第1章 現代における無人航空機の概要 

第1節 無人航空機とは何か

第2節 無人航空機市場の規模 

第3節 無人航空機を取り巻く法制度 

第4節 結び

 

第2章 無人航空機の意義

第1節 無人航空機の特徴

第2節 無人航空機に対するニーズ

第3節 現代における無人航空機の活用

 

第3章 無人航空機のさらなる社会実装

第1節 漸進的な社会実装

第2節 物流における革新的な社会実装

 

第4章 さらなる活用に向けての課題

第1節 機体性能における課題

第2節 法規制による課題

第3節 社会受容性の課題

第4節 結び


要旨

少子高齢化や労働人口の減少により労働生産性の向上が望まれるなか、コロナ禍を経て各産業でのDX、省人化の動きが活発化している。
このような動きの一つとして、無人航空機の活用が注目されており、法制度の整備や機体の研究開発を中心として、社会実装が試みられている。
本稿は、これまでラジコンなどのホビー用途や撮影用途といった限定的な活用方法で普及していた無人航空機について、その概要と意義、社会実装の状況を整理したうえで、さらなる社会実装のあり方とその課題を考察するものである。

本論文の構成は以下の通りである。
まず第1章では、無人航空機の定義や種類、市場の規模に加え、2022年12月に改正された航空法をはじめとした法制度について説明する。
続く第2章では、実際の機体を紹介しながら無人航空機の特徴を確認し、土工分野での測量をはじめとしたニーズと、実際に社会実装されている分野について整理する。
さらに第3章では、近い将来に漸進的な社会実装が見込まれる分野と、革新的な社会実装として期待される物流分野における無人航空機の活用について述べる。
最終章は、機体性能や法規制、社会受容性といった、無人航空機のさらなる活用に向けた課題を挙げている。


第1章 現代における無人航空機の概要

本章では、本論文のテーマである無人航空機の概要について解説する。まず無人航空機とは何か、という定義を整理し、その後無人航空機市場の規模、無人航空機を取り巻く法制度の順で説明する。

第1節 無人航空機とは何か

そもそも「無人航空機」とは何なのか。我が国の航空法(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号))の定義によれば、「『無人航空機』とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。」とされている1)。

国土交通省が発行している「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第二版)」では、上記、航空法の定義文中における「構造上人が乗ることができないもの」と「遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」、「重量」について具体的な説明がなされている。

「構造上人が乗ることができないもの」については、「単に人が乗ることができる座席の有無を意味するものではなく、当該機器の概括的な大きさや潜在的な能力を含めた構造、性能等により判断される。」と説明し、航空機との違いについては、「『航空機』とは、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船を対象としているため、人が乗り組まないで操縦できる機器であっても、航空機を改造したものなど、航空機に近い構造、性能等を有している場合には、無人航空機ではなく、航空機に分類される。」としている。さらに航空機と無人航空機のいずれにも該当しないものとして、「飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船のいずれにも該当しない気球やロケットなどは航空機や無人航空機には該当しない。」と説明している。

「遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」については、「例えば紙飛行機など遠隔操作又は自動操縦により制御できないものは、無人航空機には該当しない。」としている。また「重量」については、「無人航空機本体の重量及びバッテリーの重量の合計を指しており、バッテリー以外の取り外し可能な付属品の重量は含まない。なお、100グラム未満のものは、無人航空機ではなく、「模型航空機」に分類される。」と説明している。以上の無人航空機の定義に関して図解したものが、図表1である。

図表1 無人航空機などの定義

出所:国土交通省『「空飛ぶクルマ」の試験飛行等に係る航空法の適用関係のガイドライン』をもとに筆者作成。

また、無人航空機と同義の用語として、「UAV(Unmanned Aerial Vehicle)」や「ドローン」といった言葉が用いられることがある。「UAV(Unmanned Aerial Vehicle)」の和訳が、無人航空機である一方で、「ドローン」については、その定義が明確には定まっておらず、無人航空機全体を意味する場合や、無人航空機の一種であるマルチローターのみを指し示す場合がある。さらには、無人機という概念で「UGV(Unmanned Ground Vehicle)」や「USV(Unmanned Surface Vehicle)」、「ROV(Remotely Operated Vehicle)」などといったものを包含して指し示す場合には、無人航空機は飛行型ドローンとして扱われる。

現代活用されている無人航空機の種類は、回転翼航空機(マルチローター)、回転翼航空機(シングルコプター)、固定翼機の3つに大別することができる。シングルコプターは、一般的にヘリコプターとして連想されることが多く、その名通り1組のローターが高速回転することにより飛行する。一方、マルチローターは一般的にドローンとして連想されることが多く、こちらも名称通り複数のローターが回転することにより飛行する。ローターの数によりクワッドコプター、ヘキサコプター、オクトコプターといったような呼称の異なる機体が存在し、特にクワッドコプターの機体が一般的に流通している。また、離着陸時には回転翼航空機と同じく垂直に移動し、巡航中には固定翼機のように滑空飛行が可能な、双方の特徴を兼ね備えたパワードリフト(VTOL)機も存在するなど、図表2から分かるように、さまざまなものが存在している。

図表2 無人航空機の機体種類

出所:各社メーカーHP「PRODRONE PDH-GS120」(https://www.prodrone.com/jp/products/pdh-gs120/)、「DJI Phantom 4 Pro V2.0」(https://www.dji.com/jp/phantom-4-pro-v2)、「SONY Airpeak S1」(https://www.sony.jp/airpeak/products/ARS-S1/)、「DJI Avata(FPV)」(https://boutique.dji-paris.com/dji-avata-drone-seul-24779.html)、「ヤマハ発動機 YMR-08」(https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/multi/)、「エアロセンス エアロボウイング」(https://aerosense.co.jp/products/drone/as-vt01/)をもとに筆者作成。

ここから先は

21,176字 / 10画像

¥ 1,000

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?