資料:欧州ウクライナ連帯ネットワークによる声明「軍事主義との闘いとウクライナへの軍備供与」(2024年10月30日)
■欧州ウクライナ連帯ネットワーク(ENSU)の紹介
欧州ウクライナ連帯ネットワーク(ENSU European Network for Solidarity with Ukraine)から、「軍事主義との闘いとウクライナへの軍備供与」と題する日本語の声明が届いたので紹介する。日本語の他に14か国語に翻訳されているものだ。
ウクライナの抵抗への軍事的支援を支持しつつ、大国間の対立や競争、軍事主義の強化に反対するという内容で、「このようなアプローチこそが、ウクライナの人々を勝利に導くための、民主的で、社会的に公正かつ国際主義的なアプローチです」としている。
ENSUは、フランスを中心に欧州各国の社会運動団体、労働組合、政党などのメンバーによって設立された、左翼によるウクライナ連帯運動のネットワークである。欧州中心に数十の団体や政党が参加している。フランスの「連帯労働組合」「左翼エコ社会主義者」「アンサンブル!」「ATTACフランス」、アメリカの「オークランド社会主義者」やイギリスの「反資本主義者レジスタンス」「エコ社会主義者・スコットランド」など。他にもドイツやベルギーその他、トルコ、さらにはバングラデシュの組織も。ウクライナからは「社会運動」が参加している。巻末に、ENSUの設立宣言も掲載した。
■軍事主義との闘いとウクライナへの軍備供与
欧州ウクライナ連帯ネットワーク(ENSU)は、一貫してロシアによるウクライナ侵攻を非難し、ウクライナの自衛権を全面的に支持しています。
ウクライナ民衆の軍事的抵抗は正当なものです。これは、NATO、米国、あるいはその他の西側諸国の軍事侵略の一部として行われているのではなく、1991 年のソ連崩壊によって失われたとされる架空の「ロシア世界」を再征服するという、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンが宣言した戦争目的に対する防衛として行われているのです。民主主義国であり、法に基づく国際関係の擁護者であると自負するすべての国は、ウクライナ民衆がロシアの侵略を打ち負かすのを支援する責任があります。
したがって ENSU は、ロシアの違法な侵略に反対するすべての政府(NATO 加盟国であるか否かにかかわらず)に対して、国際的に認められたウクライナの領土から侵略軍を排除するために必要な武器、弾薬、財政支援をウクライナに提供するよう求めます。
同時に ENSU の設立宣言では、私たちの全体的な方向性を「反植民地主義」と定義し、「環境と社会的・民主的権利を破壊する軍事主義や、権力と利益をめぐる帝国主義的競争に反対する」としています。 私たちは、すべての国の平和を愛する人々と同様に、大国間の対立や、それが引き起こす致命的な軍事主義や環境破壊を終わらせることを、絶対的な急務だと感じています。
ウクライナの領土を占領し、そのインフラを破壊し、その民衆を殺害し、その土地や河川を汚染した大国ロシアを打ち負かすために必要な支援をウクライナに提供することは、その見解と矛盾するものではありません。また、自由で独立したウクライナを支援することは、世界の軍事費の恒久的な増加、軍事同盟の強化、軍事主義の社会的・政治的推進も必要ではありません。たとえウクライナの擁護者を気取る反動的な勢力がそれを意図しているとしてもです。
ENSU は軍事主義、排外主義、戦争による利益追求拡大の波を引き起こすことなくウクライナを支援するため、そして帝国主義諸国の軍備強化に反対する反軍事主義に立って、ウクライナ民衆との連帯を考えています。ENSU は次のように訴えます。
● ウクライナへの軍事支援は、当面は備蓄と、国連が非難する侵略戦争を行う政府に対して現在供給されている兵器を転用することで調達できる。
● あらゆる種類の兵器の生産は国有化することが可能であり、またそうすべきである。これにより、不道徳な戦争による利益追求や武器密売を終結させることができる。また、戦争資材の生産と供給は、国際的に認められた国家主権の権利と、それを侵害する戦争への反対という原則を遵守しなければならない。
● ウクライナを支援し、またプーチン政権の脅威から自国を守るために軍事予算を拡大する必要がある場合には、その増加分は社会の富裕層に対する増税によって賄われるべきである。ウクライナ支援を口実に、社会の大多数の人々を苦しめる緊縮政策が実施されてはならない。ENSU はまた、侵略戦争を阻止した上で、軍需産業を社会的に有益な生産活動に転換させるために、その公有化の必要性を強調します。
このようなアプローチこそが、ウクライナの人々を勝利に導くための、民主的で、社会的に公正かつ国際主義的なアプローチです。また、ウクライナへの軍事支援の目的は、ロシア連邦への侵攻でも NATO の強化でもなく、ただプーチンの侵略を打ち負かすことであると示すことによって、ロシアの反戦派を最も後押しするアプローチでもあります。
それはまた、軍事主義と戦争を超えて、人類にとってただ一つの望ましい地平、すなわち諸国民と諸国家が地球上で平和的に共存する持続可能な地平への前進という目標と調和する、唯一のアプローチなのです。
2024 年 10 月 30 日
原文は https://drive.google.com/file/d/1KjcIR_Sqm3zr26kIRH8CZJc04gPzNldF/view
■欧州ウクライナ連帯ネットワーク(ENSU)設立宣言
私たち――東欧と西欧の社会運動、労働組合、組織、政党は、戦争と世界のあらゆる新植民地主義に反対し、いかなる政府からも独立した下からのネットワークを構築したいと考えています。
民主的で独立したウクライナを防衛しよう!
ロシア軍はウクライナ全土から即時撤退せよ。
ロシアの核兵器による脅しとウクライナの発電所への爆撃の終結を!
ウクライナ民衆の多様な抵抗(武装、あるいは非武装の)を支援し、自決権を擁護する。
ウクライナの対外債務を帳消しに!
ウクライナおよび他国からの全ての難民を差別なく受け入れよう!
ロシアの反戦・民主化運動の支援を。プーチン大統領に反対する人々と、脱走したロシア軍兵士に対する政治難民としての地位を保証しよう!
欧州や世界各地のロシア政府関係者、高官、オリガルヒの資産の差し押さえ、金融・経済制裁を実施。また制裁の影響が民衆に及ばないようにする。
私たちはまた、ウクライナとロシアの志を同じくする人びととともに次のことにも取り組んでいます。
世界的な核軍縮を。軍事的エスカレーションと精神の軍事化に反対する。
軍事ブロックの解体を。ウクライナへのいかなる援助もIMFやEUの緊縮財政条件に左右されないよう保証されるべきである。
私たちの環境と社会的・民主的権利を破壊する生産力至上主義と軍事主義、権力と権益をめぐる帝国主義的競争に反対する。
第一次世界大戦の終わりに、ILO(世界労働機関)が「普遍的で永続的な平和は社会正義に基づいてのみ成り立つ」という普遍的な声明に基づいて設立されました。今日、私たちはこれに環境的正義と法の支配を加えなければなりません。私たちは、人びとの協力と連帯を通じて、平和と平等、民主的自由、社会的・気候正義のために闘います。