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居住地にベビーシッター利用支援事業を導入してもらうまでの話

この記事は、私が保育園入所に落選してから、復帰支援策として「ベビーシッター利用支援事業」を居住区に導入頂くまでの経緯を書いた記事です。この先、居住する区ないし市に同様の制度を導入してもらいたい、という方に向けて、どのような経緯で導入に至ったのかを書き記しておきたいと思います。

突然ですが、皆さんは『東京都ベビーシッター利用支援事業』というものがあるのをご存知でしょうか?

これは2017年から東京都が実施している待機児童対策で、簡単にいうと「東京都の保育園の入園状況ヤバすぎるよね。東京都が3歳までベビーシッター費用肩代わりするから、それ使って仕事復帰していいよ!」という制度です。なんと1日11時間、月42万円までシッター費用を負担してくれます。

東京都の待機児童数は2019年4月1日時点で3,690人。内1人は我が家の息子です。『ベビーシッター利用支援事業』は、この切迫した状況を打開する文句なしの神制度なのですが、私は今日まで使うことができませんでした。

導入は自治体の任意、8自治体のみ利用可能

『東京都ベビーシッター利用支援事業』の名前の通り、これは東京都が予算化した制度ですが、実は東京すべてで使えるわけではありません。導入は各自治体の任意であり、2019年8月時点では8自治体のみが利用可能。私たちの居住区は、残念なことに対象地域に入っていませんでした。

待機児童対策の切り札になるこの制度を、なぜ導入していないのか?
導入を依頼すれば検討して貰えるのか?
年度途中でも導入は可能なのか?

何もかもわからない中、東京都福祉局の公式サイトを読み漁り、関連ニュースを探し、おおよその概要を理解したところで、まずは自治体へ連絡してみることにしました。

① 3月、役所の保育課へ電話をかけた

1歳クラスの入所に落選した3月、保育課へ1度目の電話をかけました。「ベビーシッター利用支援事業導入の予定はあるか、ないのであれば検討してほしい」という旨をお伝えし、電話口で「制度については認識しています。ご意見は内部に伝えますので、進捗があればご連絡いたします」という丁寧な返答を頂きました。

② 6月、もう一回電話をかけた

電話から3ヶ月ほど経過した6月。検討状況を確認すべく2度目の電話をかけると、「諸事情を鑑みて検討しております。何か進捗があればお電話いたします」との返答。
あれ? これなんか聞いたことあるな?

③ 役所の窓口へ直談判に行った

電話口では切迫感に欠けるのかもしれない。顔を見せて話す方がいいだろうということで、直接、窓口にお伺いすることにしました。

大暴れする息子をなんとか膝にとめおきながら、長く待機児童状態にあること、復帰までの猶予がないこと、フルタイムの共働きでありこれ以上の加点はないことを伝え、「この状況を打開できるのがベビーシッター利用支援事業であり、導入してもらえれば見通しが立ちます。事業は年度半ばからも導入できると聞いており、なんとかご検討いただけないでしょうか」と訴えました。

窓口の方のご返答は「新規園の設立等との兼ね合いもありますので、導入については慎重に検討しております」
これなんか前にも聞いたな????

④ とにかく窓口で粘った

なんだか前にも聞いたことがあるような返答を受けて、このまま帰ると無限ループになるような肌寒さを感じた私たちは、とにかく窓口で粘り続けました。

「具体的に導入する方向でご検討されるのか、それとも導入しない方向なのか、方向性だけでも教えて頂けますでしょうか」「今年度中には導入しないと決まっていれば、引っ越しや退職を考えなければなりません。導入するのであれば、目標時期を目処で構いませんのでご教示いただけないでしょうか?」「窓口の方ではお答えが難しいのであれば、どなたかお分かりになる方とお話できますでしょうか」

とクレーマーもかくやの粘りを見せること1時間。最終的に待機児童対策担当の職員さんに窓口までお越し頂いて、現在の検討状況を伺うことになりました。(ご多忙のところありがとうございました…)

⑤ 導入に躊躇している理由が判明した

職員さんとお話する中で、これまで事業が検討段階で止まっていた理由が判明しました。実はこの支援事業、2017年に開始してから2年間、なんと8人しか利用者がいなかったのです。1500人の利用を見込んでいたにも関わらず!

つまり、去年から議題には上がっていたけれど、このニュースを受けて「導入したところで誰も使わないのではないか?」という懸念が生まれ、稼働と予算を割く是非を検討していたとのこと。

「もし導入したら使いますか?」という問いに、夫と共に「絶対に使います」「なんだったら声を大にして宣伝します」と大きく頷きました。

予算化のための会議の日程や、導入方向で検討すること、具体的な進捗のご連絡を約束頂いて、その日は帰路につきました。訪問してから1時間半が経っていました。

⑥ 8月、念のため議員さんにも相談した

そんなこんなで8月。私たちは不安になってきていました。
「決まったらお電話するって言われてるけど、ほんまに進んでるんか?」
職員さんの爽やかな笑顔を信じたいという気持ちと、状況の確認をしたいという気持ちとが闘っていたある日、まさかのケンタッキーでこまざき美紀区議会議員(@komazakimiki)と遭遇。

こまざき議員は待機児童問題をはじめ、子育て関連の議題を多く取り上げて活動されている方で、私も夫もよくお顔を存じておりました。

これも何かのご縁だとご挨拶。現在待機児童状態にあること、保育課へベビーシッター利用支援事業について相談中であることをお伝えすると、「それは大変ですね、保育課に進捗を確認しておきます!」と快くお返事頂きました。その後、実際に保育課の課長へお問い合わせいただき、検討状況に関してつぶさにご連絡を頂いて、確実に進んでいる、との報にホッと胸を撫でおろしました。

⑦ 9月、議会で導入が決定した!

そんなこんなで2019年9月、私の居住区でもベビーシッター利用支援事業が使えることになりました!! やったー!!!!!

導入にご尽力頂いた区役所のみなさま、こまざき議員、本当にありがとうございます! どうすればいいのか途方に暮れていた中、未来に一筋の光が指したような気持ちです。

「私たち」でもできること

いち市民が市政に及ぼせる力は小さく、すみっこで泣いていても誰も助けてくれない……と思いがちなのですが、実際に声を上げてみると、力になろうと動いてくださる方が本当にたくさんいらっしゃいました。

偉そうなことを言えた立場ではありませんが、「私たちでもできること」について感じたことがあるので、ここに書き記しておこうと思います。

1.アンテナを張っておこう
活用できる制度が周知されていない可能性があるので、いろんなアンテナを張っておきましょう。私の情報源は主にTwitterで、利用支援事業について知ったのも、キッズラインのかほこママ(@KahokoTsunezawa)のツイートでした。

2.何よりも当事者の声が大事
これはこまざき議員の言葉なのですが、今回は特に実感することになりました。私が導入してほしいと嘆願する一方で、区は導入しても利用されない可能性を懸念している。このミスマッチの解消には、当事者が大きく声を上げることが必要なのかもしれません。

3.伝わるまで伝える
一度で伝わらなければ二度、Aさんに伝わらなければBさんへ、とにかく伝わるまで続ける必要があると感じました。今回、窓口で粘り続けたことは心苦しくもありましたが、それでも伝わったのであれば「粘ってよかった」と思います。

待機児童対策は道半ば

最後に、「なぜ8人しか利用者がいなかったのか」についても、言及しておこうと思います。

実はこの支援事業、昨年度までは「1日8時間上限、月28万円の補助」と、今年よりもやや低い水準で運用されていたのだそうです。結果、8時間勤務の職種では通勤時間が確保できないなど利用実態に即しておらず、利用が低迷。今年度に入って「1日11時間上限、月42万円まで補助」と内容を大きく見直すことになりました。

また、シッターが急遽手配できなくなった時の対応や、急な発熱によるキャンセル料金についても、まだまだ課題は山積みとのこと。それでも道がないより助かりますよね。この制度の見直しも、実際の利用者からの声を元に行われたのだそうです。

待機児童対策は道半ば、まだまだ大変なことはたくさんありますが、一人一人が微力ながら声を上げていくことで、理想の制度に一歩ずつ近づいていくのかもしれません。みんなで子育て頑張りましょうね!

おわり!

いただいたサポートは息子のおやつ代になります。最近はズッキーニを焼いたものがマイブームみたいです。