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広報担当として「社内アイドル」を募集した、と仮定する
※最近、採用をやっているのでそこで感じたことをもとに架空の話をします。
募集:社内アイドル・広報担当(アイドル経験者を大募集!)
募集要項
自社の活動について社員やステークホルダーの理解度を上げ、よりミッション・ビジョンをもとにした企業活動を推進すべく、社内に広報担当としてアイドルのポジションを作りました。弊社のアイドルとして活躍して頂きます!!アイドル経験者歓迎。
アイドル活動以外に、通常の広報業務(プレスリリースの作成、各種メディアや外部関係者とのやりとり、取材対応、関連する資料作成等)も担当いただきますので、広報担当としてのキャリア形成も可能です。
条件
・アイドル活動の経験があること(活動期間やアイドルのジャンルは問いません)
・雇用形態 契約社員(契約社員から正社員化の実績多数 ※アイドルの正社員化実績はありません)
・勤務時間 9時~18時 希望により調整可能です
・勤務形態 リモートワーク主体ですがアイドル活動など必要に応じて出社や現地での取材対応が発生します
・報酬 経験に応じる
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という条件で募集をかけたとしよう。
今回の募集人数は1名。
アイドルはとりあえず1人いればよいのでは、と思っている。
ただ、アイドルのキャリアを持っている優秀な広報人材、という人が複数いれば複数名採用の可能性はある。
会社としてはアイドルが欲しいのではなく、社内外に向けた広報活動をできる人材が欲しいのであって、その広報の活動をアイドル活動として実施していきたいので、アイドルキャリアを持つ広報人材が欲しい、という順序になる。
アイドルを育成することがその会社ではできないので(残念ながらきっと多くの会社にアイドル育成のプログラムは無いだろう)、募集する際にはアイドル経験は必須で持っていてほしい。自社にそのスキルを持っている人がおらず、育成もできないから経験者を採用するのは普通の事だ。トップアイドルとかではなくて全然いいです。ジャンルも問わないのでアイドル声優でもニッチなジャンルのアイドルでもいい。
もちろん性別も年齢も指定はしていない(しちゃダメです)。バーチャルアイドルという可能性も特に否定はしていない。(むしろ好きだ。会社の予算で超かわいいVのボディを作りたい)
応募する側の視点
ここからは、募集する側の視点を考えてみたい。
想定志望者
スターライト学園など、アイドル育成のための学校もあるので(架空)おそらくアイドル志望者は多いはずだ。きっとクラスに3人はいると思う。
ただ、アイドルで食べていける人は極めて少ない。また、活動可能な時間にも制約がある(たぶん)職業なので、一時アイドルをやっていた「元アイドル人材」はたくさんいるはずだ。デビューはしたがあんまり売れずに引退した人もきっと多いはずだ。
と、考えると母集団は非常に大きくなる。広報業務の経験は必須条件ではないので、アイドルをやっていた人ならどんなアイドルでも活動期間でも応募は可能だ。
アイドルとして何とか活動していたものの、その後引退してそこから就職先を探していた人とかは、アイドルの経験が役に立つので、どうでしょうか。どうですか?
働きながら副業アイドルをしている人も多い(根拠レス断言)。そういう方で、今の働き方や職場に不満があったりしたら、副業のキャリアも生かせるポジションはどうだろうか。
ということで、転職(就職)志望の元アイドルを母集団と想定する。
志望者の母集団に含まれないタイプのアイドル経験者
アイドル経験があってこの集団に含まれないのは、現役のアイドルか、元アイドルだが今は別の職業で充実している人、だろう。
現役はともかく、アイドルからキャリアの転身を図ってうまくいっている人、というのは、アイドルとしても一定の成果を上げていて、そこから(現役時代から)次のキャリア構築を検討・準備していた人だと思う。
プロ野球やサッカーの選手で引退後にうまくやっている人を見ると、だいたい引退前に方向性を見出し一定の準備ができている。それと同じ感覚だ。
そもそもアイドル業界の中で生き残るのは難しい。
なりたい人は(きっと)多いが、なれる人は極端に少ない。ただ、頑張ればアイドルを名乗ること自体はできるので、有名プロダクションでデビューできなくてもアイドルを名乗り経験を積むこと自体はできる(滅茶苦茶大変だと思うが)。
セルフマネジメントとセルフプロモーションができる人ならなんとかなるかも、ということだ。そういう優秀な人は自律的なアイドル活動ができるので、アイドル兼広報担当に応募するモチベーションはあまり無いかもしれない。企業のアイドルになって安定雇用を目指したい、という層は一定数いるのかも。
選考
ここからは選考プロセスについて考えてみたい。
書類選考
応募が集まってきて、どういうタイプがいるかを考えつつ書類選考を開始する。おそらくこの時点で、箸にも棒にも掛からぬ書類、検討余地があるもの、すぐに面接に進めるタイプ、に分かれるだろう。これはアイドルかどうかはあまり関係なくどんな採用でも同様と思う。
募集の意図を理解していない、そもそもちゃんと日本語書けてない、などは書類で即落ちる。アイドルを募集する意図は理解するの難しいですよね、すいません。
検討余地があるのは、まともに言語ベースのコミュニケーションができていると判断できたもの。意思疎通大事だよね。とりあえず会ってみるか、という判断になった場合だ。
即会いたい、という判断になるのは、求めていた経験を保有し、経歴書がちゃんと書けていて(経歴よりもそれをどう表現しているか、求められていることを理解して書いているか)、活躍の幅や成長可能性が高そう、と判断できる人の場合だと思う。年齢や性別は正直ほとんど関係がない。あと、経験と希望するポジションや希望報酬のバランスが取れていると、なお良い。
ただ、こんな人はほとんどいないし、一次面接の日程調整中に他社に決まったりしてそもそも会えないまである。どの会社からも高評価で人気なのである。
多くの場合、とりあえず会ってみます!、という層からがんばって採用することになる。
面接
さて、一時面接に進むわけだが、どういう人が来るだろうか?
……当然「元アイドル」がたくさん来る(ホントか?)。
おそらく面接では、元アイドルが自分のアイドルとしてのキャリアを滔々と説明し、自分がアイドルとしてどう自己表現できる存在なのか?をアピールして頂けるだろう。アイドルなんだから当たり前だ。
だが、ここでズレる。
前述のとおり、採用する側はアイドルとしての経験があることを条件としているが、それはアイドル育成が社内でできないから経験者が欲しいのであって、超すばらしいアイドルが欲しいわけではない。
選考基準
業務としてはあくまで広報なので、広報業務の知識がちょっとでもあるほうが、アイドルとしての経験が素晴らしいよりも評価が上回ってしまう。
たくさんの応募があって、たくさん面接をすることになれば、そもそも社会人経験がない、という人が選考に残るのは多分難しくなるだろう。
アイドル経験者を募集している求人があって、これだ!と思って応募しても、けっきょく社会人経験のあるアイドルのほうが有利になってしまう。
「わたしはアイドルとしてここまで登り詰めたのに!」と、思うかもしれない。でも、そこはあんまり評価していないのだ。アイドル経験がある人を募集しているが、アイドルだけできるアイドルとして優秀な人が欲しいわけではないのだ。
そして、このギャップがおそらく双方に伝わらない。
社内アイドルを採用できる日は来るだろうか。
まとめ
別にアイドルである必要はなかったのだが、キャリアとしてのアイドル、というのがちょっと面白いな、と思ったので例としてアイドルとさせて頂きました。
応募の条件と選考基準は必ずしもイコールではない。
普通免許を持っていることが必須条件の職場であっても、車の運転の上手さが選考基準で大きなウェイトを占めるかというと、他にも優先すべき基準はあるだろうと思う。運転技術をアピールしてくる人が来たら、この人は募集の意図を理解してないのでは?と思うだろう。
募集する側が求めているポジションの実体は、募集する側の背景や意図を理解できる能力や、面接などの場でのコミュニケーションで確認する能力がないと、理解するのは難しい。のではないかと思う。
募集側、応募する側双方でしっかり考えて、よい出会いができるとよいな、と思います。