見出し画像

行った気になる世界遺産

こんにちは!ウジョーズです🦈
突然ですが、
僕は世界遺産が好きで、世界遺産検定1級を2023年に取得しました。
noteを始めたのも、どこかで世界遺産に関することを発信したいという
思いのもと始めたとこもあります。
これからちょくちょく世界遺産についてのことを書いていくと思いますが、

どの世界遺産をどのように書いていくかは、
これから投稿していく中で自分に合うものを探していこうと思います。

今回一発目の題材として
題名にもなっている「行った気になる世界遺産」形式で
書いていこうと思います。
『行った気になる世界遺産』とは
私が勝手に”師匠”として尊敬している鈴木亮平さんが
執筆したエッセイの題名です。
その題名通り、行ったことがない世界遺産を行ったつもりで書いた
旅行エッセイです。
読んでみたらわかりますが、本当に行ったことがないの?って思うくらい
風景や情景、現地の人と会話、空気感が頭の中に広がる素敵な本です。
そして本の冒頭が、
「この旅行記は、フィクションです。」
から始まるのもなかなか面白いです 笑

装丁

いつか、鈴木亮平さんと肩組んで写真を撮ってもらうことが夢でこのnoteもその一歩になればいいな 笑

さて、話は逸れましたが、私も真似をしてエッセイを書きましたので、
ぜひ読んでいただけると嬉しいです🙇

最後まで読んでいただいた暁には、多分この世界遺産に行った気になると思います。笑



この旅行記はフィクションです。


〜世界最古の岩塩坑〜ヴィエリチカ岩塩坑 ポーランド

僕がこの世界遺産を知ったのは世界遺産検定の勉強をしてたとき。
世界で初めて世界遺産に登録された12件のうちの一つとして
紹介されていた。
「岩塩坑内にあるシャンデリアや彫像が全て岩塩でできている」
という文字が強烈に僕の興味をそそり、
今、ポーランドはクラクフ中央駅に立っている。

午前7時12分、電光掲示板に表示された時刻表を見ながら
自分が乗る電車の時間を確認する。
7時38分発「ヴィエリチカ岩塩坑行き」
これに乗る。

海外での電車に乗りなれていないので早めにホームに着いて
電車の到着を待つ。
出発時刻の2分前、黄色と青のラインが入った電車が到着。
車内は広々としていて、身長164cmの僕には十分すぎた。
また日本の電車内では見慣れない券売機が置いてある。
電車の中でもチケットが買えるみたいだ。

「ふう…」
席に座り一息。向かい合うタイプのクロスシート座席だったが、
正面には誰も座っていなかったので車窓を独り占めする。
長閑な住宅街の景色を見ながら大体40分電車に揺られ、到着。

駅舎を出ると石畳の道路とヴィエリチカ岩塩坑までの案内板が目に入った。
それに従って進むこと5分。
ヴィエリチカ岩塩坑の受付場所らしき
白とベージュの壁に赤レンガ色をした屋根の建物が姿を現した。
入り口には数張りのテントが建っており、
観光客と思われる人だかりがいる。ここで受付をするらしい。
イタリア語、スペイン語、フランス語など言語ごとに
ツアーが分けられているらしく、スタンションポールが整列している。
僕は事前に予約をしていた英語のツアーの列を見つけ、それに並ぶ。
もうすぐヴィエリチカ岩塩坑を拝める興奮、並ぶ場所がここで合っていのるか、期待と不安で落ちつかない。

午前9時。ツアー開始時刻。
ガイドが来て、案内が始まる。
どうやら並ぶところはここで合ってたみたいで安心するのも束の間、
これから約17℃の空間に約2時間ほど滞在するので、
しっかりと上着を羽織り、準備をする。
さあ、いよいよ待ちに待ったヴィエリチカ岩塩坑のツアーが始まる。

いきなり階段で地下68mまで降っていく。息が切れそうだ。
10分近く下ったところでようやく階段と坑道が合流し、その瞬間、
湿気を含んだ冷たい空気に包まれ、上がりきった体温が冷やされていく。
そして目の前にはきっちりと積み重ねられた丸太に支えられている
無骨に削られた岩塩の坑道が伸びている。
必要最低限の照明で照らされた坑道は、まるでロールプレイングゲームの
ダンジョンみたいだ。
これから先、どんな景色が広がるのかワクワクして、
ついスキップしたくなる気持ちを抑えつつ、一歩ずつ坑道を進んでいく。

坑道内の世界観に興奮している僕とは反対に、
ガイドは淡々と岩塩坑の説明を続けている。
僕は英語が得意ではないのでガイドの言葉はそこまでわからないが、
知っている単語を拾い集めて言葉を頭の中で訳していく。

・坑内の洪水の危険性から1996年に稼働を停止したこと
・彫像などは坑道労働者が独学で塩を削って作ったこと
など色々とこの岩塩坑について教えてくれたが、解説の半分以上は聞き取れなかったので表情とボディランゲージで分かってる風に演じてやり過ごした。

それからも、塩でできた様々な部屋や彫刻を見ながら
ツアーも中盤にさしかかったとき、
急に視界がパッと開けて、その瞬間は突如として現れた。
ヴィエリチカ岩塩坑で僕が一番見たかった空間。


「ここが聖キンガの礼拝堂です」


ガイドの声が塩の壁、塩の天井を反響して、白亜の空間にこだまする。
天井には「私を見なさい」と言わんばかりに煌々と光放つ、
王室や宮殿に吊るされてても違和感のないシャンデリアが辺りを照らし、
壁には「最後の晩餐」のレリーフや磔刑にされるキリストの彫像など、
様々なレリーフや彫像が至る箇所に点在し、空間に彩りを添えている。
また床にもしっかりと幾何学模様の装飾がなされているという徹底ぶり。
妖艶で神秘的だ。
そしてそれら全てが岩塩を削って作られたという事実。
当時の鉱夫たちの技術力と芸術性の高さを伺うことができる。

また坑道の中とは思えないくらい空気が澄んでいる。
それもそのはずで、塩には殺菌作用があり、この岩塩坑内に療養所が
作られるほど空気が浄化されているという。
空気が鼻を通してスーッと通り抜けるこの清々しさは、
確かにデトックスの効果があるのかもしれない。
今のうちに吸っておかねばと、鼻の穴を広げる。


「岩塩坑内にあるシャンデリアや彫像が全て岩塩でできている」

六畳の部屋で読んだこの一文が、
僕をこの場所に連れてきてくれたと思うと感慨深い。
言葉や写真からでは決して感じとることはできない、
この岩塩坑を生み出した地球の凄さと、
この岩塩坑を掘り進め、礼拝堂を作り上げた人間の可能性を
『実物』を見て、触れて、感じる。


中世の時代、塩は「白い黄金」と言われるくらい価値の高いものだった。
坑道という場所はとても危険な場所である。いつ崩落するかわからない
死と隣合わせの中、この「白い黄金」を求めて掘り進めていった鉱夫たち。
ここは鉱夫にとって、無事に生きて帰れることを祈り、そして
この岩塩坑に感謝する神聖な場所だったのだろう。
当時の鉱夫たちがこの場所をどんな気持ちで作ったのか、
常に「死」を感じながら仕事をすることがない僕には計り知れない。

「それでは次のエリアに出発します」
2、30分滞在しただろうか、ガイドの指示が聞こえ、
ツアー客が岩塩でできたローマ教皇ヨハネパウロ2世の彫像の前に集合する。
名残り惜しいが、聖キンガの礼拝堂を後にする。

そして「聖キンガの礼拝堂」見学後もツアーは続き、
様々な空間や死海並みの塩分濃度をもつ地底湖などを見学し、
時には岩塩の壁を舐めてみたり、お土産ショップにも立ち寄ったりと、
ヴィエリチカ岩塩坑を五感で堪能し、歴史や鉱夫たちに思いを馳せるツアーが終了した。
2時間が本当にあっという間だった。

最後にお土産として、ヴィエリチカ岩塩坑で取れた”白い黄金”を買った。

このヴィエリチカ岩塩坑で取れた岩塩だと思うと
結晶の一粒一粒がとても”しおらしい”。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?