キミもグローブトロッター
前回はいかにグローブトロッターがロマンチックかつ高価かをお伝えしました。
ときに、インターネットは情強／情弱なる格差を生み出す一方で、様々なチャンスを多様な社会階層に分配してきました。
インターネットで求めさえすれば、現代は住所・環境・社会階層を問わずいかなる状況でも遍く情報にアクセスするチャンスがあります。今やインドの山奥の子供でも日本の最新話のアニメが見れますし、東京でアルバイトをしながら南米で就職活動したりイスラエルのアパートを契約できます。
つまり、ネット上でがんばって探せばセレブじゃなくても安くグローブトロッターを手に入れることができるのです。
メルカリなどで格安のグローブトロッターを選ぶ時のコツをお伝えしましょう。
サイズについて
グローブトロッターのトランクの大きさは代表的なものはこんな感じ
・33インチ (88cm×54cm×29cm)
・30インチ (81cm×48cm×26cm)
・28インチ(75cm×48cm×26cm)
・26インチ（71cm×44cm×24cm）
・21インチ(59cm×43cm×21cm）
・18インチ(53cm×39cm×20cm)
※現行品はそれぞれほんの少しサイズが小さくなっていますのでご注意。理由は後述。
それぞれにコロコロ付きの「トロリー」の設定があります。デカいけどコロコロ無しの場合もあります（ポーターさんが運んでくれる人向け）。
30インチより大きいものは普通のひとは数年に一度しか使わないこと請け合いです。ネットの中古品でも「ろくに使わなかったので出品します」という表記をよく見ます。ほかアタッシュケースやらバニティケースもあります。趣味性も値段も高いのでセレブ向け。
左が18インチトロリー、右が21インチトロリー。
空港で日本人女子大生のみなさんが引っぱってるトランクくらいのサイズは21（現行20）か18です。中古品でもメインになるサイズです。
それ以上になると中国系の観光客が山手線によいしょと持って入ってきて「うわあデカいなあ」と思うトランクくらいのサイズ感。
色とか内装のシリーズついて
それぞれの大きさに、本体色やら内装の柄やら金具の色やらの違いでたくさんのラインナップ（公式表記は「コレクション」）があります。代表的で中古品でもよく見かけるのはこの３つのシリーズ↓
・オリジナル
・センテナリー
・サファリ
オリジナルは角のパッチが革でなく、大きいサイズでもベルトが付きません。
それ以外のラインは原則的に基本的にパッチが革、20インチ以上のサイズにはベルトありです。
他にもクルーズ、オリエントなど多数のコレクションがあります。クルーズは水色っぽいマリンスタイルでパッチが黒、オリエントは漆塗りで内装シルクです。
その他英国王室のジュビリーやご成婚記念品、他ブランドとのコラボで期間限定コレクションなんかもあります。
カタチはどれもほぼ同じなので、なんか色が違うのがいろいろあるくらいに思っておけばOK。
パッと見て気に入ったのがあなたのガラスの靴です。
ちなみに、さっきの写真だと左がオリジナルのネイビー、右がサファリのアイボリーホワイトです。
革のベルトがあるとグローブトロッターらしくてかわいいですが、実用性としてはあっても無くても変わりません。むしろ有ると留めるのが鬱陶しいです。ロマンと割り切りましょう。
現行品との細かな違い
最近、サイズのラインナップが変更されてそれぞれほんの少し小さくなりました。特に21インチは20インチ改定されました。これは機内手荷物の持ち込み基準に合わせるための変更です。21インチか20インチかは数センチの差なのですが国際線の機内手荷物にできるかどうかのぎりぎりの違いです。21インチは国際線で手荷物として持ち込もうとしても厳密に実測されたらアウトです。ビビりの人は気を付けてください。
また、現行品はトロリーのハンドルがおしゃれな木製になりました。以前の仕様は「これが20万もするカバンの取っ手かね」ってくらい粗末なプラスチック製でした。が、どっちにしろ持ちにくいので大した問題ではありません。
TSAロックは一部のスペシャルモデルを除き昔も今も非搭載です。が、グローブトロッターの開錠方法はそもそもわかりにくく、TSAロックの有無にかかわらずセキュリティチェックでしばしば破壊されるので大した問題ではありません。
問題箇所の確認
安いグローブトロッターにはだいたいどこか問題点があります。おおむねロマンと気合でカバーできます。
・キャスターの破損
→キャスターには柔らかなプラスチックをなぜか採用しているため、よく中古品のキャスターはバキバキに割れています。しかしグローブトロッターのコロコロはどうせ初めから大した性能ではありません。2輪だから取り回しは悪いですし、「まあ空港くらい平らな床だとちょっと便利かなあ」という程度です。壊れてたら気合いで持ちあげましょう。ちなみに直すと5万円くらいかかります。28インチ以上になるとパンパンに詰め込んだ時に持ち上げるのが困難な重さになりますので注意。
これが30インチ。たぶんセンテナリーで茶色。ドアノブくらいまでの高さ。
つまり家で置くところに困るくらいの大きさ。
・内装の染み
→グローブトロッターの素材は特殊加工された紙です。最先端素材（1887年当時）だぞ。現代のポリカーボネートの堅牢性に勝てるわけがありません。別に普通に使える必要十分な性能はありますが、豪雨が降ったらそりゃあ染みることもあります。諦めましょう。中古だと内装がしばしば染みていますが、限定品でなければもともと適当な布が適当な糊で貼ってあるだけの内装です。限定品だと良い布が適当な糊で貼ってあります。もとより新品の時からぼこぼこ布が浮いています。中古なんだからカビが生えてなかったらOKくらいの気持ちでいきましょう。
・廃盤品、形が古い
→どうせ100年前から大きく変わっていない化石みたいなカバンです。すこし型落ちになったくらい大した問題ではありません。
時期によって同じコレクションでも色のラインナップが異なるのでそこはお好みで。今は無い廃盤品の色が好きだというのもよくある話。ただし、それなりのヴィンテージ品になると店舗ディスプレイ等の需要があるのでむしろ値段が上がります。
・傷がある
→味です。やったね！外装はしなやかなので割れてることは稀ですが、すり傷はガンガンに付きやすいです。角のパッチが破れてる場合は修理すると一ヵ所数万円単位でかかります。ガムテープでも貼っておきましょう。
サファリシリーズの革はヌメ革なので、ガムテを貼っても目立ちにくいです。
僕のトランクもガムテ上等。
特にタイヤの付いてる側がパッチに穴が空きやすい。
いかがでしょうか。貧しくても大抵の困難は夢と希望でカバーできることがお分かりかと思います。
グローブトロッターを持つと結局なにが変わるのでしょう？
ネット上ではグローブトロッターは特別な人が持つカバンであり、
「グローブトロッターを持っていると空港の荷物預かりで特別扱いされた」
とか
「高級ホテルのチェックインで対応が違った」
なんてことがちらほら書いてあります。
幻想です。
20万もトランクに浪費してしまったゆえの幻覚です。カバンひとつでそんなに周囲の世界が変わるわけがありません。
僕がグローブトロッターを預け入れ荷物にして「良いトランクなのでカバーをかけますか？」と言われたのは数十回飛行機に乗ったうちのただの1度だけです。
そして高級ホテルでは客がどんなカバン持っていようとも対応は等しく丁寧なはずです。万が一そうでないとしたら、貴方に問題があるか、そこが高級ホテルではないかのどちらかでしょう。
「グローブトロッターを持っているかどうか」よりも貴方がチップをたくさんくれそうな人か？／クレーマー気質のめんどくさいお客さんではないか？の方がサービスの質に大きく影響を与えていると思います。
リモワとグローブトロッターでどちらにしようか選ぶ方がいますが、比較すること自体間違えています。
リモワは高機能かつ最先端かつ高級ブランドカバンである一方、グローブトロッターはバカ高いのにロマンとまあまあの使い勝手しかありません。比較を考える時点でリモワをお求めになった方が幸せになれると思います。グローブトロッターは「ロマンチックなのに使い物にもなるんですか！」って思える好事家のものです。
ただこれだけは実体験なのですが、グローブトロッターを持っていると国内外問わず、見ず知らずの人が「素敵なトランクね：）」ってしばしば声をかけてくれます。「きみのトランクに貼りなよ」とご当地のステッカーをもらったこともあります。そしてしばしの世間話の後「ボンボヤージュ」と一期一会のふれあいを胸に、トランクひとつ抱えてまた次の目的地へと旅路を勇むのです。ああ、これをロマンチックな旅と言わずになんというでしょう。
つまるところ、旅行をよりロマンチックだった時代よろしく良い感じにスパイスを効かせてくれるのがこのトランクなのです。
このカバンを持って変わるのは周りの人の対応でなく、あなた自身の旅へのモチベーションです。
あなた自身の気持ちに作用する力が他のメーカーより遥かに強い、それがグローブトロッターの最大の特徴です。しかもわりと使い物になります。
中古のグローブトロッターなら2万円くらいから狙えますので、興味がある方は気長にメルカリやヤフオクなど探してみてください。修理代が目が飛び出るほど高いので、旅行の際には携行品保証付きの海外旅行保険をぜひつけることをお勧めします。でないと、成田空港でキャスターがぶち取れてロックがひん曲がったグローブトロッターを前に頭を抱えることになります。
あとステッカーはベタベタ貼るか／一切貼らないかを前もって決めておくといいですよ。
では素敵な旅を！
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