ふらっと金の匂いを嗅ぎに - 香港その2
2019年の11月。日本からニュースを通して見ていると、香港というところは街中あちらこちらでデモが巻き起こり、火炎瓶が燃え上がり、地元住民は強制的に逮捕され拷問され、観光客なんて居ようものならもれなく後ろから殴られ重傷を負う、そんな紛争地帯のように映っていました。
実際、「来週ちょっと旅行で香港に行くんだ」と友人たちいうと「なんてバカなことをするんだ絶対にやめろ」と何人からも言われたし、めんどくさいことになるかもなと思ったから、職場には旅行先を内緒にしておいたのです。
とはいえ、地元に住んでいる友人からは「いつもダルい香港がちょっと刺激的になっただけだ」程度の意見だったので、まあ旅行には問題ないだろうな、とはいえ、万が一飛行機が飛ばなかった時には海路で中国大陸に脱出してLCCで帰ってこようかな、なんてイメージはしていていました。
果たして、11月15日の朝に香港に着いたのです。
そこは、おっそろしいくらい、平常運転の香港でした。普通に大人も子供も歩いてます。
確かに落書きは多いですし、運休してる地下鉄があったり、通行止めの道がちらほらある。そして人通りは少ない。でも、別に後ろから殴られたりする感じは微塵もありません。
香港駐在パリピ白人の聖地ランカイフォンも平常運転。
街はちょっと荒れて殺伐としてるけども、肌に刺さるような緊張した視線や身の危険が一切ないのです。いつもと同じように、仕事と観光のムード、つまりお金の匂いがしました。
そうそう僕は今回、香港を嫌いになるためにやって来たのでした。
僕が香港で一番嫌いなところ、それが金の匂い。道行く人がこれ見よがしに金持ちっぽくて、ショッピングセンターは高いものから表に並べ、あらゆるものが金ぴかに塗られています。
カネが成功者を生み、成功者がカネを見せびらかす循環構造。
グッチの子供服専門店。頭から足までで50万円くらい?
香港はとにかくカネにうるさく、ガツガツしてるでしょう?最先端に見えるものでも伝統的なものでも、チャンスがあれば金もうけをしようと企んでいます。しかも現代香港の生業は金融業。魔法のように見えないところでカネが生まれ、そして、ひとたびリッチになったら富を見せびらかすのを悪としません。全身ブランドものと一目でわかる服で歩き、家一軒は余裕で買えるクルマを乗り回し、デカい犬を散歩させる。日本ではダイバーシティの名のもとに死語になりつつある「ステータスシンボル」というものが、香港では八百万の神のように遍在して健在です。
クリスマスの準備も平常運転で、ちょっと成金臭い。後ろに銀行のビルがドーンとあるもの実に香港スタイル。
「成金臭い」というのは言い換えれば世界のビジネスセンターらしいなということになるのでしょうが、ロンドンなりニューヨークなりがまがりなりにもそれなりの歴史を持って金融中心をやってるのに比べると、どうも香港はまだ日が浅い。香港の有名な高層ビルができたのは90年代。実はこの街は金融よりも漁業やってた歴史の方がずっと長いのです。それゆえに、欧米金持ちの「うちら何百年も貴族やってますんで」みたいな伝統のフィルター無しに金への執着がダイレクトに鼻に突く。
この街はとにかく金臭い。
臭いのは嫌いだ。しめしめ、何かの臭いに気づいたとたんそれが気になってしょうがないように、着々と香港を嫌いになっていく。
閑話休題、香港と言えばグルメじゃないですか。
香港と食事の話をしましょう。まるで現金を食っているような香港グルメの話を。
つづく。
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