谷川連峰と木造建築
群馬県みなかみ町にある天一美術館に訪れた。
(銀座にある天ぷら屋のオーナー矢吹勇雄氏のコレクションが展示されている。
展示内容はルノワールやマティスなどポピュラーな西洋画家の絵から、日本の美人図や岸田劉生の麗子像など多岐にわたっていた。)
圧倒されたのは、建物だった。
入館するとすぐひらけた踊り場が現れ、左手には一階の展示室へつながるスロープと小洒落た車椅子の人用のエレベーターがある。
正面に目を移すと、大きな窓からみえる谷川連峰が力強く来訪者を待ち構えていた。
スロープ突き当たりの窓からみえる景色は、群馬県の山奥のリアルな姿を切り取っていて、ぽつぽつと止められた自動車や、枯れかかった木々、雑草、それから、人は見えない。
そのままスロープを歩き一階へ下りると、左手に庭があり、自動ドアから外へ出られる作りになっていた。(施錠されている。)庭先はコンクリートで固められていて、一段下を谷川の水が流れている。反射した谷川の水は天井をちらちらと照らしていて、いじらしく綺麗だった。近代的な庭先、明るい木造の建物と、構える谷川連峰、そして美しい水の動きをみているだけで、ごく自然と時間が流れていくのだった。
吉村順三氏を知りたいと思った。