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手づくりの魔法
午後の診療時間を1時間見誤り、空き時間ができてしまった。
どこかで時間をつぶそうと、Googleマップを開く。徒歩10分ほどのところに、グルテンフリーで身体に優しいスイーツやドリンクを提供しているかわいらしいカフェを発見。
「ここにしよう。」
温かい日差しを浴びながら目的地へ向かう。
黒猫の看板が目印。ひっそりとその店は佇んでいた。
小さな店内は、ゆったりとした空気に包まれている。
様々なメニューに目移りしたが、普段あまり飲まない「ジンジャーティー」を注文。
ほどなくして、かわいらしいArabiaのカップに注がれたジンジャーティーと、小さなピッチャーに入ったシロップが運ばれた。
「お好みでジンジャーシロップを入れてお召し上がりください。」
笑顔の素敵な店主がサーブ時に仰った。
こういう別個でついてくるシロップやらチョコレートやらは全ていただくのがマイルール。
遠慮なく、シロップをカップへ注ぐ。
生姜のスパイシーさと、紅茶の柔らかい香りが合わさって、じんわり身体に染み渡る。おいしい。
なんでも手軽に手に入る時代。
コンビニや自販機、ファストフード店。歩くだけで欲しい食べ物や飲み物はすぐ手に入るけれど、こうして心からほっとして、気を緩められるのは、きっと手づくりでしか味わえない。
私はあまり「コスパ」や「タイパ」という言葉が好きではない。
余白や無駄を愛せる人でありたい、と思う。
店内を流れるBGMも心地よくて、気を抜いたら眠ってしまいそう。
だが、診療時間になったので、店を出る。
つぎはスイーツもいただこうかな。
春になったらお散歩がてら、いろんなお店を探索したい。
こうやって小さな楽しみをみつけて、とりあえず生きよう。