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「若者の夢を叶える伴走者」〜株式会社SOU 仲田匡志さん〜

京都の今を生きるU35世代の価値観を発信するメディアです。
次期京都市基本計画(2021-2025)を出発点に、これからの京都、これからの社会を考えます。

若者たちの夢の実現に向けて伴走支援を行う仲田匡志さん。
「問い」を投げかけ、人が本来持っている可能性を引き出すことで、これまでに多くの10代、20代の成長を支えてきました。


今回は、仲田さんが大事にされている価値観「自分のものさしを持つ」「問いかけ、考える機会を提供する」「自分で考えて決める余白を残す」に迫ります。

10代・20代の夢を叶えるための伴走支援

─── 普段どういうお仕事や活動をされているのか、教えてください。

仲田匡志さん(以下、仲田):私はフリーランスとしていくつかの活動をしていますが、今軸になっているのは株式会社MIYACOのEducation Design事業です。「ソーシャルテイメント(社会性とエンタメ性を掛け合わせた、より良い社会と人の幸せを生み出す)で世界を楽しく豊かにする」というMIYACOのミッションのもと、10代、20代の夢を叶えるための伴走支援をしています。

10代に対しては、自分の夢を発見し、実現することを全力でサポートする「ワンゼロFC Kyoto」(以下「ワンゼロ」)という事業をやっています。
ワンゼロは、10代の子どもたちに「視野を広げるプログラム」を提供し、私をはじめとする社会人が、共に走る伴走支援者としてサポートします。

プログラムの内容は、キャリアや社会課題、最新のテクノロジーや教科書に載っていない日本史・世界史など、視野を広げられるよう様々です。10代一人ひとりとの対話を通じて、自らの夢ややってみたいことを見つけ、それを叶えるための準備から実践までをサポートしています。

他にも、Next Connect 株式会社さんと一緒に主催・運営するする「Little You」というイベント型プログラムを企画運営での事業責任者を務めています。

予選を通過した若者に、夢へ一歩踏み出すための活動資金10万円を支給するというユニークな取組で、サッカーの本田圭佑選手がアンバサダーを務めていただいているんです。

そこでも、サポーターとして『With You』と呼ばれる伴走支援者が存在し、夢に向う若者が自分と向き合える環境づくりや問いを投げかけ、前に進むためのきっかけをつくり応援をしています。

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自分が本当にやりたいことと行動の解離

─── どういったきっかけで10代、20代の若い方の伴走支援に携わり始めたのですか?

仲田:学生時代に、ゼミの恩師が立ち上げたNPO法人グローカル人材開発センターの設立に携わったことがはじまりです 。「京都の未来を支えるグローカルな人材を育てる」というミッションに共感し参加したんです。
そこでは、大学生と京都の地域企業が協働し、会社の課題解決に取り組むプロジェクトがどんどん生まれていたんですね。お漬物の文化を若者に広めるには?などリアルな会社の課題を取り組むんです。

はじめは参加者として通っていたんですが、自分ができることの範囲で役に立てるということでやりがいを感じて、運営する側のコーディネーターとして活動をさせていただいていました。笑
大学生と京都企業が一緒に学び・成長し合う過程で、自分自身も成長していける、若者世代の就職の選択肢を広げる機会づくりに貢献したいと思い入社しました。

ところが、月日が流れるうちに、NPO設立時に掲げられていた願いを自分の願いにすり替えてしまっていたことに気づくんですね。

『NPOとしてのビジョンのお話しはよくわかったんですが、それって仲田さんが本当にやりたいことですか?』

とある打ち合わせのシーンでそう言われ、言葉に詰まったのを今でも思い出すんです。
「自分がやりたいことは本当は少し違うかなぁ」
「今の仕事は意味があるし楽しみもある」
「けど、周りからはそう見えていない」
自分で選んだけど、いきいきしていなかったんですね。

なぜそうなるかを考えてみると、今自分のやりたいこと、大切にしたいことと行動が乖離していたのだと気づき始めました。

─── 自分の気持ちと行動が乖離していることにはどうして気づいたのですか?

仲田:奥さんが私に「もうそろそろいいんじゃない?」と問いかけてくれたことがきっかけですね。奥さんなりに、私が気づいていない何かがあることを感じ取っていたんでしょうね。そう投げかけをもらってから考えはじめて、「心からやりたいことにチャレンジしていない」自分に気付いたんです。

本当に自分がやりたいことってなんだろう?と改めて自分に問い直すようになりました。


「自分のものさしも大切にできる」選択を広げたい

─── 仲田さんが本当にやりたいこととは?

仲田:そこで出てきたのは、世間や他人からの評価を軸にするのではなく、自分の評価軸・価値観で生きる、つまり「自分のものさしも大切にする」ということです。

就職活動をする人たちキャリア相談に乗っていると、「どこに行くと正解ですか?」「どこに行ったらいいと思いますか?」と、働くことの幸せは人それぞれなのに、誰かのものさしに合わせたがる、自分のことだけど他人に任せていると感じる発言がちょっと悲しくなるんです。

ついつい「そうじゃない!!」って言いたくなってしまう。
それは多分、過去の自分がやってしまっていたからで。。。
NPOのミッションに共感しているけど、自分と向き合わずにそれを借りて働くと必ず違和感や矛盾が生まれてくるんですね。そうなるような気がしてついついです。

周りの雰囲気や他人に合わせる他者のものさしを気にしすぎると、本当の自分を見失ってしまう。
そんな怖さに気づいたからこそ、わたしというものさしや選択肢を持ちたいと思う気持ちが強くなりました。お節介だけど、次の世代にもその選択肢を渡したい気持ちが若者への伴走支援へとつながっていますね。

もっと自分のままでいいんだよ!って伝えてあげたいという気持ちが大きくなりました。
いいこともわるいことも、できることもできないことも、全部含めてそのままでも大丈夫だよと。

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適切な「問い」と「考える機会」の提供

─── 仲田さんは、人が自分らしくいられるためにどのような関わりをされているんでしょうか?

仲田:適切な「問い」と「考える機会」を提供することですね。

私が関わっている学生さんの中に、肢体不自由で電動車椅子ユーザーの方がいます。彼とは「Little You」を通じて出会ったのですが、はじめは「自分一人では何もできない。」と申し訳なさそうに話すばかりでした。

そこから、彼にいろんな問いを投げかけ、彼の考えをひも解いていきました。

「お願いして手伝ってもらうことから、向こうからお手伝いをしたいと言いたくなる仕掛けには何が必要だろう?」
「できないことが価値になるものってないかなぁ。」
「今やりたいことをまずあげてみよう!」

彼がこれまで車椅子ユーザーであるが故に、蓋をしてきた自分らしさ。
一方で、あるがままの自分自身の価値に気づき、自分らしくいられるように、自分を磨いてほしいと願い問いかけました。

今では、「自分も他の人と同じように夢を持てるんだ。車椅子を扱う自分だから生み出せる価値を他の人と交換すればいいんだ。」と思うようになったそうです。
今、彼は「人生に悩む18歳が自分の価値を確かめるチャレンジ」として、クラウドファンディングに挑戦中です(現在は募集期間終了)。社会に対して自分ができることを試してみたい、と。

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若者の可能性を引き出すために大切にしていること

─── とても素敵なお話ですね。若者の可能性を引き出す仕事に関わる上で、大切にされていることはありますか?

仲田:大きく3つあります。

1つ目は、自分で考えて決める余白を残すことです。

経済的に自立する前の子どもたちは、親や大人の意向を無意識に汲み取っています。

なので、話すときには、「一般的には〜〜と言われているよ」「あなたはどうしたい?」というように、あくまで本人が考え、選択する余白を残す言い方に気を付けています。「〜すべき」「〜しなければならない」というような、私たち世代の価値観での決めつけや押しつけになる言い方にならないよう気をつけています。

あくまでも、一人ひとりが今何を感じていて、「どうしたいのか」「どんな思いなのか」を理解することを大事にしています

2つ目は、言葉や情報の正確さです。

10代、20代という多感な時期で、かつ可能性に満ちている子どもたちと接するので、私の話すことが否応なしに影響力を持つことを自覚するようにしています。

なので言葉や情報の正確さには特に注意していますね。

例えば、「英語ができると将来役に立つ武器になるね!」という話があるとすると、「英語ができるのは、将来にも役に立つツールになるね!」と「武器」でなく「ツール」という表現を使います。細かいですが、武器は争いのための道具なので、言葉の意味として違うなと感じるからです。


3つ目は、これは若い人に対してだけではなく、最近よく意識していることなのですが、その人自身に興味を持つことです。

これまで、ファシリテーションをする時、あまり深く意識せずに場を回そうとして、「それは仲田さんが本当に思っていることですか?」と問われてしまうことがありました。上手に話せているつもりでも熱がこもっていないことが伝わってしまっていたんだと思います。

そうすると、相手にも無意識のうちに「表面的にきれいな答え」を求めてしまっていたんですね。逆に、その人自身に興味を持って話を聞いていくと、その人ならではの意見やらしさに出会うことが格段に増えました。

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─── 仲田さんがこれからの時代に求められていると思うことを教えてください。

仲田:利他の心と共創ですね。

これは私個人の解釈なのですが、自分のやりたいことを第一に考えた結果として、誰かのためになることができているというのが「利他の心」だと捉えています。

「自分のために」を徹底することが、「誰かの役に立つ」につながる。そんな生き方・働き方が価値になる時代だと思います。

自分だけが生き残ればいいという勝ち負けの「競争」の考えから、自分らしさに気づいた人たち同士がつながり、新しい価値を生み出していく「共創」へとシフトしていると思います。

その中で私ができることは、問いかけ、考える機会を提供することです。

こちらが思った方向にナビゲートするのではなく、関わる人が自身で進みたい方向を見つけるお手伝いをすることですね。

これまでの私が気づかせてもらってきたように、若者たちが自分の可能性に気づき、広げていく様を応援し続けていきたいと思います。

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インタビューを終えて

仲田さんは、「問い」を通じて人の可能性を開いていくのがとても上手な方という印象を受けました。彼との対話が相手の心を動かすのは、技術や知識が豊富であることに加え、相手の想いに寄り添い、向き合い、本気で関わる熱さを随所に感じるからだと思いました。京都のまちから若者の可能性を開いていくU35世代のお一人としてこれからも目が離せません。

今回集まったU35世代の価値観は下記の3つです。

「#自分のものさしを持つ」
「#問いかけ、考える機会を提供する」
「#自分で考えて決める余白を残す」


<仲田 匡志さんのプロフィール>
株式会社SOU 代表取締役 / 株式会社MIYACO Education Design Team Director
沖縄県那覇市生まれ。
大学在学中に、NPO法人グローカル人材開発センターの設立に携わり、新卒として同NPOに入社。
学生と企業のPBL(課題解決型プロジェクト)やアクティブラーニングの企画・運営を60プロジェクト以上実施。また、就職や採用に関するセミナーの講師や企業の採用アドバイザーとしても活躍。年間100人以上の進路相談に携わり、「納得感のある選択」のサポートを実施。
2019年秋より同NPOを退社、フリーランスに。
(株)MIYACOにも所属し10代の起業・自己実現の支援事業「Onezero FC Kyoto」を展開。2020年からLittle You 2020 伴走統括責任者として参加(2022年より事業責任者へ)。京都で活躍するU35世代のコミュニティ「U35-KYOTO」のプロジェクトマネージャーも務める。
2022年10月より、京都市立開健高校 運営指導委員として、主体的な学びが生まれる学校づくりを民間としてサポート。


<仲田 匡志さん関連URL>
株式会社MIYACO HP
http://miyako.kyoto.jp


(取材:寺村日蕗香 / 編集:寺村日蕗香)


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