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京都だけがよくなっても、他の地域が不幸だったら意味がない。プロマネ座談会後編|タブロイド編集記
次期京都市基本計画を出発点として、U35世代の価値観や動きを縦横無尽に表現するタブロイド紙を3月末に発行します。数ヶ月間の取材・編集作業を経た今、紙面には印刷されない数々の言葉が、私たちの手元に残っています。その中にも皆さんにお届けしたいお話がたくさんあり、掲載文字数に整える前の下書き原稿を、webで公開できないかと考えました。荒削りなところもあるかと思いますが、登場いただく方々にも了承をいただき、ここに掲載いたします。
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U35-KYOTO タブロイド p3-4 「DIALOGUE by project leaders」下書き後編(前編はこちら)
中馬 一登 (株)MIYACO 代表取締役 / 長男
仲田 匡志 (株)MIYACO コーディネーター/ フリーランス
中村 菜穂 (一社)京都ジェンヌの会 代表理事 / 宅建士・防災士
原田 岳 (株)taliki CCO / (一社)Impact Hub Kyoto Maker
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人のつながりが、経済的な判断軸を飛び越えるまちへ。
原田:経済の軸を超える何かがあったら最高ですよね。僕は社会課題を解決する起業家の支援を仕事にしているからか、周りに優しい人がめっちゃ多いんですよ。普段から「なんか悩んでんの?」「手伝えることある?」って聞いてくれる。これって京都の特徴なんじゃないかと思います。優しい人がもっと増えて、誰かを助けたいという思いが循環して、まち全体の幸福度が上がっていくといいなぁ。
仲田:その人が「何に」関心があるのかよりも、「なんで」それに関心を持ったのか、が大事だなって最近思います。今までは「何に」の話が多かったけど、理由まで知ることができたら、その人を手伝いたいと思う人が増えるんじゃないかな。
中馬:僕は友達や社員が幸せになってくれることが一番嬉しいんやけど、「社員の幸せ」について語り合える経営者仲間は、同世代や下の世代が多いんよね。上の世代の方々とは、お金の使い方にもけっこう違いを感じます。僕は祇園で飲むよりも、その分を社員の給料や新規事業の予算に充てたいと思ってしまう。高度経済成長の時代は「お金」=「幸せ」という価値観が当たり前やったけど、豊かさの意味が変わってきたんやろうね。
中村:いわゆるZ世代と呼ばれる今の20歳前後の人たちからも、学ぶことが沢山あります。社会課題への意識やグローバル視点を標準的に持っているから。少し先を歩くミレ二アル世代の私たちの経験や視点も、彼・彼女たちの役に立てる場面もあるし、お互いに学び合う姿勢でいたいですね。立場や自分の“こう”という一方的な考えだけにとらわれているうちは良い関係は築けないので、しなやかに人と関われる人がどの世代にも増えていったらいいなと思います。
仲田:10代や20代も含めて、U35世代は、何を人生の軸に据えるかを模索している世代ですよね。今まではたくさん稼いで、マイホームを建てて……という定型化された幸せのかたちがあったけど、それだけじゃないことに気付き始めたというか。一人ひとり幸せのかたちが違うことを認めて、違いを尊重したいという空気を感じます。
中馬:これからU35-KYOTOが頑張らなあかんのは、今話しているような価値観の変容を、目に見えるかたちで体現すること。皆がなんとなく感じていることを、事業やイベント、制作物に落とし込んで、他の人にも伝わるように実行していきたい。そういうものがぽんぽん出てくることが、価値になるんじゃないかな。受け身で、U35-KYOTOに依存する人が出てくるとよくないよね。
京都だけがよくなっても、他の地域が不幸だったら意味がない。
仲田:自分のことだけじゃなくて、まちとか社会とか、全体を想像することは大事にしたいですね。何もかもが便利になって最短距離でものごとが進んでいくから、周りを見なくても生きていけるようになったけど。
中馬:京都をよくしたいけど、京都だけがよくなってもだめやと思う。京都でいい動きが起きて、他の地域もそれを真似して活性化してくれたら一番いいよね。京都に観光に来た他府県の人たちが、いいなと思ったことを自分のまちに持って帰ってくれたら嬉しい。たとえば、U35-KYOTOが企画する修学旅行があったらいいなと思っていて。「京都で働いてる大人たち、かっこいいな」って中高生が思うような。
原田:今も色んな話が出てますけど、取り組もうと思っても、結局実行せずに終わることってありますよね。一方で、目標数値や期限を決めることの弊害もあるし、バランスが大事なんですけど。変化を起こそうと思うと、決めてかたちにしていくことは必要じゃないですか。ただ僕らの子どもの世代が生きる社会を想像すると、ちょっと怖くなるんです。「こうなったらいいよね」ってゆるく話してたんじゃ間に合わないぞっていう危機感がある。
仲田:U35-KYOTOは徐々に関わる人を増やしながら手探りで進んできたから、中には何をしたらいいかわからないと感じる人もいたと思います。でも、イベントや企画会議で自主的に役割を見つけて動いてくれる人がいっぱいいて。たとえば、11月の交流会では、カメラマンのお二人(U35-KYOTOメンバーの小黒さんと其田さん)が抜群のチームワークで撮影をしてくれましたよね。競い合うわけじゃなく、でも刺激し合っている様子にはちょっと感動しました。
中村:美しさも影も慈しむ。例えば、お寺も神社もありつつ、新しいもの、多様な宗教も芸術も文化も越え、まるっと受け入れ、生かし合うみたいな。それができるのが、京都の街やひとの懐の深さだと思います。これからも違いを許容して、適材適所で、みんなで力強いコミュニティを育んでいってほしいです。
仲田:今、U35-KYOTOには入れないから、新たに「OVER40」つまり40歳以上のコミュニティを結成したいという女性の先輩方がいるんですよ。その方々から「私たちも若い世代を否定しないから、私たちのことも否定しないでね」って言われたことがあって。世代間でどうしても価値観の違いは出てくるけど、その意識があれば、対立せずお互いから学び合えるんだなと思います。
中馬:U35-KYOTOをきっかけに、勝手に仲良くなって、勝手にプロジェクトを立ち上げる人が増えていったらいいな。将来、京都で愛されている事業や会社のルーツをたどっていった時に、あれもこれもU35-KYOTOに辿りついたらめっちゃ嬉しいやん。企画会議の中で「U35-KYOTOは“裏市役所”みたい」っていう声があったんやけど、そういう動きもしてみたいよね。勝手に京都市をよくするプロジェクトを考えて、自分たちの予算で、京都の企業や個人と一緒に実行する。定期的に京都市長を訪問して「僕たち、今年はここに予算使います」って報告してね。
原田:U35-KYOTOが生まれたのは、上の世代の人たちが行政と協力する風土を作ってくれたからだと思うんです。それが今、うまくはまったんじゃないかな。京都というまちで、自分たちは何を大事にしたいか、どうすればそれを大事にし続けられるのか。一人ひとりが考えた多様な意見を持ち寄ってかたちにしていくことが、U35-KYOTOの1つの価値なのかなと改めて思いました。
(株)MIYACO http://miyako.kyoto.jp/
(一社)京都ジェンヌの会 https://www.facebook.com/kyotojenne/
(株)taliki https://www.taliki.co.jp/
(一社)Impact Hub https://kyoto.impacthub.net/
(完)
タブロイド制作チーム:柴田 明、原田 岳、前田 展広、山本 安佳里
文:柴田 明
写真:其田 有輝也
https://u35.kyoto/