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暗黒時代のウェルビーイング論-”PRAISE OF SHADOWS”

国際的な政治経済の不安定、深まる帝国間の対立や国際紛争、AIのブレークスルー、超高齢化少子化先進国である日本国内の混迷の今、もはや高度経済成長時代の影も感じられず、いよいよ先が見えない「暗黒時代」に突入したと言っていいのではないかと思います。

僕は、悲観論者ではない、むしろその逆です。「暗黒時代」と認知したいのは、根底にそこにこそワクワクがあるからです。

「暗黒時代」の見方を180度反転させる5つの視点

ここでは、暗黒/暗闇を、「ポジティブ」に対する「ネガティブ」、「見えるもの」に対して「見えないもの」、「顕在意識」に対する「潜在意識(無意識)」、「常識」に対する「タブー」、「社会の光」に対する「社会の闇」、という対比の中で後者の価値や大切さに気づくための視点についてお話しさせていただきます。

①「ポジティブ志向」(「光」礼讃)は本当に幸せか?

ポジティブな感情をいただくことが、人の持続的な幸せ(ウェルビーイング)に大きな影響があるとする、ポジティブ心理学の主張は最もでしょう。しかし、問題はこの志向性が強まると「ネガティブな感情=悪いもの」として感情の抑圧が文化的、社会的に起きてしまうことです。お金に変わるポジティブ感情によってマウントされるヒエラルキー社会って怖くないですか?(笑)
実際は、ネガティブな感情ー心理学的はShadowー闇にこそ、人が成長するために欠かせない要素が眠っていて、至福には欠かせない大切な要素であることが一つ目。

また、これまでの国際的なウェルビーイング指標が、「ハシゴ」で評価(上であればあるほど幸せ)されてきました。”陰翳礼讃”という文化をもつ日本のウェルビーイング感にこそ、ポスト・ポジティブ時代のウェルビーイング論へのポテンシャルが眠っていると考えます。

②「見えないもの」には本当に価値がないか?

これまでの社会において、科学的に根拠のないものは存在しないものとされてきました。これからの時代は、見えないものにこそ、価値があり、人類のポテンシャルと言える時代になるのではないでしょうか。

・私たちが知覚している通常の物質は、残りの5%。残りの27%が「ダークマター(暗黒物質:dark matter)」、68%が「ダークエネルギー(暗黒エネルギー:dark energy)」と言われている
・遠く離れた粒子同士が複雑に関連し合っている「量子もつれ」
・観測可能とされる星の数は9×10の21乗個に対して、宇宙には星の数は10の26乗個あると言われているが(もはや違いもよくわからないけどw)

これだけでも、わからないものをただ「スピリチュアル」だとか、「UFO」だとラベリングをして切り捨ててしまうには勿体無いと思うのです。

一方、我々が科学的に、論理的に証明できるものは、chatGPTはじめいよいよOPENに共創されるAIによって代替できてしまうようになり、圧倒的なコモディティ化と同時に、あっという間に価値のないものへと変わるでしょう。

人間に残された探究テーマ、仕事、遊び、芸術的に価値があるものは「見えない」ものとなるでしょう。今の科学では解明できていない、これからもできないかも知れなそうなものにこそ、価値とポテンシャルが秘められていると思います。

③ 「無意識」の領域に広がる大いなる可能性

人間の行動は90%以上が無意識に行われていると言います。
無意識的におこなっている身体の情報処理量は、脳の情報処理量の200万倍と言われています。
②の続きとして、人のマネジメントは、これまで(顕在的な)意識、行動、KPI、結果を管理してきたけど、実際にはこの90%以上と言われる無意識領域に置かれている「認知バイアス」、「情動」、「メンタルモデル」(過去の人生経験、体験に基づく無意識に自動運転している思考パターン)、「身体知」の扱い方、マネジメント方法を身につけることに、大いなるポテンシャルを感じずにはいられません。

ちなみに、人体を構成する細胞の数が約37兆個に対して、100兆個を超える数の微生物(主に細菌)が体を取り巻いていると言われており、今まで意識したことのないもうひとつの「わたし」に目を向ける時代になるでしょう。

④「常識か?」「陰謀論か?」ータブーに秘められた可能性

長らく常識、世間体に縛られてきた日本人。国内外でフェイクニュースや陰謀論が多発している昨今をどうみるか。

「常識」も「陰謀論」もどちらも光と闇の要素を持っているのだと思います。「常識」ー長らく多くの人が信じて疑わなかった光にも影が・・常識こそ破壊されるべき時代へ。一方、「陰謀論」は常識人からすると、ありえない仮説や可能性を妄想にでっち上げたもの。これは、常識人に対するシャドー(モンスター)。一方、「陰謀論」の中にも、常識を破壊するべく、タブーに切り込み、本当の真実の光を示すものも多分に含まれている可能性がある。

これからは、「常識」も疑い、「陰謀論」も疑い、いずれにしても大勢や周りがどうかではなく、自分自身で問い続け、探求し続ける姿勢が求められていく時代と言えるでしょう。

⑤ 社会的な闇(シャドー)に向き合う

①では個人の光(ポジティブ)と闇(シャドー)のことを書きましたが、社会的な闇(シャドー)ー戦争、格差、人権問題が、極限にまで深まっているように思えます。闇は、その反対にある光ー本当に大切な願いやニーズーを浮かび上がらせ、思い出させてくれます。闇が深まれば深まるほど、それは光が増していると言えないでしょうか。我々の世代が、闇から光を生み出すという使命を担っているのかも知れません。

PRAISE OF SHADOWSー「闇を愛でる」

ヒューマンポテンシャルラボは、シン時代に不可欠なニューリテラシーとしてウェルビーイング教育を提供していますが、社名の「ポテンシャル」に込めた思いは、パフォーマンス=光に対する、ポテンシャル=闇にあります。

タイトルの「PRAISE OF SHADOWS」は、言わずもがな、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」の英語訳です。「陰翳礼讃」とは「電灯がなかった時代の日本の美の感覚、生活と自然とが一体化し、真に風雅の骨髄を知っていた日本人の芸術的な感性について論じたもの。」と説明されています。(wikiペディアより)

今こそ、この日本人の”闇”の意識を反転させ、日本人が本来持っている美意識、本質的なウェルビーイングに帰る機会にしていきましょう。

ウェルビーイングのその先へ。
暗黒時代にこそ、闇に向きい、至福への道を共に探究していきましょう。

2023年 3月21日(春分) 
株式会社 ヒューマンポテンシャルラボ代表取締役
山下 悠一


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